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第三話 総統閣下とメイドさん


「……閣下、総統閣下! エリュさん、起きてください」


 んっ……誰かがボクを揺さぶっています。


 えっと、確か昨日は……そうです、ラスバタの最終日で、戦争をしてたんですよ。それで、全世界の海軍を倒して満足して寝落ちして……。


 ……って、待ってください。


「あっ、やっと起きましたか? 死んだように眠っていたので少し焦りましたよ」


 がばっと、身を起し目を開けると見知らぬメイドさん。黒髪ショートの可愛らしいメイドさんです。

 ボクのストライクゾーンですね、正直言って好みです。


 けど、可愛いかどうかなんてものは大した問題ではないんです。


 そもそも、誰なんですかこの人。


 昨日は確か、パソコンの前で寝落ちしたはずです。けど……。


 周りを見渡してみると、いかにも貴族趣味なロココ調のお部屋。ふかふかのベッドの上に寝かされています。

 こんな部屋知りませんよ、ボクのゲームオタク部屋は一体どこに?


「あのーエリュさん? 大丈夫ですか?」


 エリュさん? このメイドさんはボクの事を指してずっとそう呼んでいます。あと、総統閣下とかも呼ばれていたような気がします。


 えっと……。


「どなたですか?」


 いまいち状況がつかめません。


 まず、このメイドさんに名前を聞いてみましょう。


「……もしかして、記憶喪失? ほら、私ですよ。副官のアヤメです」


 ……アヤメ? その名前には聞き覚えがあります。というか、ラスバタにおけるボクの副官NPCの名前じゃないですか。


 確かに、「メイドさんってかわいいなぁ」とか思って、メイド服を着せてましたけど。


 じゃあ、もしかして、エリュさんって……。 


「エリュテイア、の略ですか?」


「そうですけど、どうかしたんですか? 自分の名前忘れちゃったんですか?」


「……いえ、そんなことないですよ」


 エリュテイア、それは――ボクのラスバタ内におけるプレイヤーネームです。と、言うことはですよ。


「それより、鏡を持ってませんか?」


「鏡ですか、手鏡ならここに、立ち鏡ならあっちに」


 ひょいっとどこからともなく手鏡を出してくれるアヤメさん。受け取って、その鏡を覗いてみると……可愛い銀髪ロングの女の子がいました。


 これって、間違いなくラスバタでのボクのアバター“エリュテイア”ですよね?


 大和帝国総統の肩書を持つ美少女。「可愛いアバターからの畜生ブリカスプレイ」と語り継がれるボクの半身。


 そのエリュテイアになってしまっていると言うことは……ここはゲームの世界?


 いや、待って、早まってはいけません。


 これは夢です。夢に決まっています。


 ゲームばっかりやっていて高校の成績が酷かったボクでも、第一志望校に落っこちて美大落ちとかいう酷いあだ名をつけられたボクでも、ゲームの世界に行ってしまうなんて非科学的な現象が発生しないってことくらいわかりますよ。


 ほっぺをにゅぎゅーっと引っ張れば目が覚め――痛い。ちゃんと痛い。あれ? 夢ってほっぺを引っ張れば覚めるんじゃ……。


 夢じゃない?




「何してるんですか、エリュさん? ほら、早くお着替えしますよ?」


「えっ、ちょっとま……」


 ほっぺを引っ張ってみても目が覚めないということは、ここは現実。


 そして、ボクを見つめているアヤメさんの目が野獣のように光ります。


 なんかヤバい。

 

 そう体が危険信号を感じ取ってとっさに撤退しようとするものの、アヤメさんはそれを許してくれません。


 ベッドの上から逃げようとするボクを、がばっと捕らえると貴族風の真っ白なナイトウェアをひん剥き一瞬にして裸に……。


 うう……ボクの体は見ないようにしておきましょう。


 昨日の夜まで、童貞男子高校生だったボクに美少女の全裸は刺激が強すぎます。


「まったく、三百年は一緒にいるのに全く成長しませんね、この胸は」


「う、うるさいっ」


 言わないでくださいよ、そんなこと。頑張ってボク自身が全裸の美少女になっているという事実から目を背けているのに、気になってくるじゃないですか。


 てか、300年って、それゲーム内時間ですよね? 


 ラスバタのゲーム内時間は現実の約100倍の速度で進みます。ボクはラスバタを三年間プレイしたのでゲーム内で300年経過したってことになりますよね。


 じゃあ、アヤメさんって300歳?


「心は永遠の17歳です。んー、お肌もいつも通りすべすべですね、大変結構」


「おわっ、ちょ、何処撫でてるんですか?」


「おや、撫でる部位を口にしながらのプレイの方がお好みですか?」


「違いますっ!」


 うひゃっ、太もも舐めないで……って、なんなんですかこの人!? 副官のこと、こんな変態に設定した記憶とか一切ないんですけど!?


「……はい、お着替えおしまいっと」


「はぁ、はぁ……無駄に疲れました」


 つやつやしているアヤメさん。そして、着替えるだけだったのに、疲弊しているボク。


 色々ありましたが、とにかくお着替えは終了。そう終わったんです。


 ……今後、着替えるたびにこうなるのかな? 気持ちいいけど、そのいけないことをしているような気分になって……。


「女の子同士がじゃれ合ってるだけなので問題ないですよ。はい立ってください」


 アヤメさんがボクから離れます。


 自分の体を見下ろしてみると、そこには旧ドイツ軍風の軍服を身に纏った女の子の姿がありました。


 ちなみに、軍服のくせになぜかフレアなミニスカートです。ニーハイソックスが良く似合います。

太ももとか出ていてちょっと恥ずかしいですけど……可愛い。


 えっと……。


 そろりとベッドから立ち上がり、部屋の隅っこに置かれた立ち鏡の前に立ってみます。そしてくるりと一回転。


 そうすると、鏡の中の銀髪軍服姿の女の子がボクと同じ動きをします。ひらりとスカートがめくれそうになって……。


 あの、その、これが……ボク? 凄く可愛いですよ?


 ミニスカートを履く恥ずかしさとか、無いわけじゃないですけど、それ以上に可愛くて……。


「ちゃんと似合ってますよ、エリュさん。それで、これから御前会議の時間なんですけど……大丈夫ですか?」


「ん、大丈夫だよ、アヤメさん。気にしないで」


「そうですか、少しやり過ぎてしまったのではないかと……」


 ちょっと自分自身の可愛らしさに見惚れていただけだから。

 

 あと自覚があるならやらないでください。




「それで、これから御前会議だっけ?」


「あ、はい、そのことですが、実は緊急事態が発生しまして。即座に我が国の総統であるエリュさん御判断が必要に」


 さっきまでのエロ顔ではなく、いたって真面目な顔でそう伝えてくるアヤメさん。


 てか、緊急事態ですが? それは、ボクに解決できる問題なのでしょうか? 体はエリュテイアのものですけど、中身はごく普通の一般高校生ですし……。


 あと、緊急事態だったなら。


「じゃあ、ボクの体を弄っている暇はなかったのでは?」


「いえ、これは非常に重要な儀式なので。エリュさんの太ももを撫でないと一日が始まりません。……では、会議室に向かいましょうか」


 非常に重要な儀式ねぇ……。てか、アヤメさん、なんか太ももに変なこだわり持っていませんか? さっきもずっと太ももばっかり撫でてきましたし。


 ……まあ、いいか。案内してください、アヤメさん。


 こんなことになってしまった以上、逃げることなんてできないんでしょう?




「あ、その前にお風呂とかどうですか? あ、拒否権はないのでお気になさらず」


 えっ? ちょっ……会議は?


 たぶん本編では語られることのない用語解説 『ラストバタリオン・オンライン』編


 オンラインリアルタイム戦略シミュレーションゲーム。プレイヤーは、科学文明、魔法文明などいくつかの文明を選びゲームをスタートする。


 初期位置は完全ランダムであり、自動的に決められた位置に最初の都市が作られる。


 文明は石器時代から始まり、古代、古典、中世と技術ツリーを進めながらゲームを進めていく。最終的には第一次世界大戦前後程度まで技術ツリーを進めることができる。


 それぞれの国家には国民特性と言うスキルのようなものが与えられ、国家の特色を差別化することができた。

 この国民特性は5つまで装備可能。


 国民特性とは別に指導者特性と言うものもあり、こちらはプレイヤー本人の特色を差別化するものである。


 課金要素として、国民特性、指導者特性ガチャ。一時的な研究速度の向上や資源の購入などができた。


 サービス開始時に存在した文明は科学文明と魔法文明の二つのみ。後々、アップデートで追加されていった。

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