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第十三話 総統閣下と東方大陸

 満州大陸から大和帝国本国に帰還する一週間の船旅。


 どうやら、その間に東の方でも大陸が見つかったそうなんです。防護巡洋艦『千代田』の艦長さんがやってくれたそうです。

 総統官邸に帰ってきて早々、やたら気合の入った電報が届いたと海軍の角刈り君から報告を受けました。


 まあ、今日のボクは遥々満州大陸から海を越えて帰ってきたばかりです。お疲れなのです。


 長旅で疲れているからと角刈り君には断って、報告書だけ受け取ってそのまま寝室に逃げ込んでしまいましたとさ。




「えっと、じゃあ、現状を整理しましょうか? 大丈夫ですか、エリュさん?」


「ん、大丈夫です」


 ボクの寝室の大きくてふかふかのベッド。そこにごろーんとうつ伏せなりながら、ベッドサイドに座るアヤメさんに角刈り君からもらった報告書を呼んでもらいます。


「まず、我が国の周辺についてのお話ですね。最初に見つかったのが満州大陸。我が国南方の3000kmにある大陸ですね。無人、モンスターだらけ、将来的には我が国の領土とする予定」


「ん、そうですね」


「次に存在が明らかになったのは西方大陸。こちらは、まだ目視で確認していませんが、難破船の乗員、聖女様たちからその存在が報告されています」


「セレスティアル王国が存在していた大陸ですね。今はエルフとかいう異種族が支配しているとか」


「いえす、その通りです」


 エルフねぇ……一応、調査は命じていますがさてどうなる事やら。相手が空飛ぶ大きな鳥を航空兵力として有していると聞くと、対抗手段を持たないこちらとしては、あまり関わりたくはないですね。


 こちらも対抗策として航空機とか高射砲とかを開発するように命じてはいますが……さて、完成するにはいつになる事やら。

 一年はかかりますかね、開発に。


「そして、先日見つかった東方大陸。こちらについてはここ数日である程度の情報がまとめられています……って、エリュさん、足をパタパタしないでください。スカートがめくれちゃいますよ?」


 ふえっ?

  

 指摘されてスカートがあったところを見てみると、足をばたつかせたせいでスカートがめくれ真っ白なパンツが……。


 この体になってもう一か月以上が経ちます、もう見慣れましたね。女の子のパンツも。


 けど、まあ、見慣れたと言ってもパンツ丸出しは恥ずかしいので、慌ててスカートを元に戻します。


 てか、なにじっーとボクのパンツを見てるんですか、アヤメさん?


「……えっち」


「何をパンツくらいで。毎日一緒に寝て、一緒にお風呂に入る仲じゃないですか」


「それはそうですけど……」


 むう……。


 ボクが寝ていたら勝手にベッドに忍び込んでくる、お風呂に入っていたら勝手に入ってくる。確かに、アヤメさんとは毎日そう言う生活を送っていますけど……。


「こほんっ、じゃあ、話を続けますね。その東方大陸にはいくつか国家があるのだとか。そのうちの一つは、喜ばしいことに人間の国家です」


 ……人間の国家? それは興味深い。


 スクッと上半身を起こしてアヤメさんの横に移動します。そして、ベッドサイドにちょこんと座ります。


「ほほう、それでそれで?」


「その国は『バルカ王国』と言うのですが……これまた蛮族に襲われているらしく、今は食糧輸出どころではないのだとか」


「なるほど、つまり、ボクたちはその蛮族を倒す必要があるわけですね。どういう手段を取るかはひとまず置いておくとして」


「そうなりますね」


 ふむふむ……。あ、簡単な東方大陸の地図も付属しているんですか? 見せてください。


 東大陸の形状は……まだわが国に近い一部の地域しかわかっていませんが、縦長っぽいですね。大雑把な形状としては、グレートブリテン島を巨大化させた感じです。


 そして、注目すべき点は二つ半島が西に向かって突き出しているところですね。


 この二つの半島の位置を無理やりブリカス島で例えるなら「細長くなったウェールズ地域」と「コーンウォール半島」って感じでしょうか?


 二つの半島が横に伸びてクワガタムシの角みたいになっていますね。


「この北にある半島がバルカ半島?」


「ええ、バルカ王国のある半島ですね」


「人間国家がこの半島に存在するんだ。じゃあ、南の方は?」


「そちらはビーストバニア半島。『ビーストバニア獣人国』という獣人の国家が存在するそうです」


「……獣人?」 


 また怪しい種族が出てきましたよ。そんなよくわからない種族はエルフだけで十分なんですよ。


「調査中の巡洋艦『千代田』の艦長曰く“なんだこいつは? 二足歩行の毛むくじゃらの獣じゃねえか”とのことです。一応言葉は解するようですが……」


「会話にならないと?」


「ええ、我ら獣人は獣と人の特性を併せ持つ高等種族なのだから下劣な人間と話す舌を持たぬとか、言っているそうです」


「あらあら……」


 なんか、ヤバそうな種族がまた出てきましたよ。


 エルフの方は被害者による報告で本当に野蛮であるのかどうか確定ではないですが、獣人さんの方は公平な目を持つであろう我が軍の軍人さんの報告ですからもうだめです。


「交渉とかできそうですか?」


「無理じゃないですか? “人間は獣人の奴隷になるべき”と声高に主張しているらしいですから」


「ひえっ……」


 こわっ。異世界人野蛮すぎませんか? 


 とりあえず、獣人さん達とはあとで“お話”をするとして……他の地域は?


「えっと、大陸中央部には『大天モルロ帝国』という遊牧民の国家があるらしいですよ?」


「へえー遊牧民ですか。のどかそうでいいですねぇ……人間の国ですか?」


「一応そう言うことになっていますが……」


 凄く歯切れが悪いアヤメさん。


「普通の遊牧民って馬に乗ってますよね? それがですね、資料によりますと、モルロ帝国は、馬の代わりに人が乗れるほど……そうですね、10メートルくらいの大きさのオオトカゲを飼っているらしくて」


「らしくて?」


「……その、周囲の国の人間を捕まえてはトカゲの餌に」


「蛮族じゃないですか」


 って、バルカ王国が困っている蛮族ってこいつらかですか!? クソデカオオトカゲに乗って周辺国を襲いまくるやばい奴!


「ちなみに、モルロ帝国の周辺で人間国家はバルカ王国しか生き残っていないそうです。残りは……国民全員喰われたわけではないらしいのですが、国家を作れる状況ではないのだとか」


「酷い、よくバルカ王国は生き残ってますね」


 この世界って、今のところ中世魔法文明レベルですし、巨大なオオトカゲの群れに襲われたら一発で轢き潰されそうなものですが。

 なんとか魔法で戦えているのでしょうか?


「ああ、それでしたら、バルカ王国はマッチョしか生き残れないスパルタン国家らしいですよ」


 マッチョ? それってつまり、魔法とか使わないで……。


「筋肉で化け物に対抗していると?」


「ええ、そう言うことになります。曰く“魔法は裏切る、筋肉は裏切らない”とか。破城槌担いでオオトカゲに日々突撃しているらしいです。下手な攻撃魔法より効果的らしいですよ?」


 あっ、ふーん。


 そうですよね。頭おかしい隣国に対抗するためには、自分も頭おかしくならないといけませんからね。

 なぜ、筋肉に特化してしまったのかはわかりませんが。


「そして、最後が……」


「大陸南方、ビーストバニア半島の付け根にある国ですね。『黒エルフ皇国』とか」


「あー、名前からしてエルフの国ですか?」


「近いですね、ダークエルフの国だそうです。ちなみにこちらは獣人以上に選民意識が高いようです」


 ひゃー、いきなり奴隷になるべきって宣言してくるような生き物よりも選民意識が高いとですか?


 つまりですよ? 


「発見した国家、『バルカ王国』『ビーストバニア獣人国』『大天モルロ帝国』『黒エルフ皇国』のうち、まともに話し合えそうなのはバルカ王国だけ?」


「そうなりますね、まあ、そのバルカ王国も脳みそ筋肉なのでまともかどうかは疑問ですが」

 

 ひえぇ……どうすればいいんですか、この世界。終わってますよ。


 まあ、それでも無駄な争いは避けたいですよね? とりあえず、全ての国に国交樹立のために大使は送ってみますけど……。




 ……あ、大使と言えば。


 あの聖女さん達は大丈夫なのでしょうか? 亡命政府を用意してあげてと伝えて、後は外務省に丸投げしちゃいましたけど。

 大雑把な補足説明『異世界の種族』編


 エルフ

 その名前の通り耳の長い種族。ただし、寿命が長いわけでも、顔面偏差値が高いわけでも、桁違いに魔法が上手だったりするわけではない。

 人間よりか魔法を使える割合が高いため、魔法に関する研究は進んでいる。最近はモンスターを操ることにご執心。

 主に西方大陸に分布している。

 

 ダークエルフ

 東方大陸に住んでいるエルフ。肌の色が黒い。西方大陸のエルフに比べて、魔法技術では劣っており、モンスターを操ったりはできない。

 普通のエルフもそうだが、選民意識が極めて高い。


 獣人

 二足歩行の獣。魔力を持たず、魔法が使えない。獣人と言っても、身体能力が高かったりするわけでもない。

 エルフ同様選民意識あり。


 人間 

 ごく普通の人間。地球でもそうだが、人種や民族はちゃんと存在している。バルカ王国にはバルカ人、モルロ帝国にはモルロ人と言う風に。

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