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第4話

宇宙開発と人類と宗教。

三題噺みたいだね(笑)


22**年、人類は最終戦争となり得る第6次アフリカ大陸民族大戦を、なんとか終戦させて地球人類統一政府を樹立する寸前まで来ていた。

アジアでは、第4次ロシア新帝国が、長年の対立相手であったチャイニーズ連合国との戦争を終結させてから100年余。

未だにくすぶり続けるテロの煙は、盤石とは言えないロシア新帝国の屋台骨を揺さぶっているが、とりあえず金と力で押さえつけているのが実情。


太平洋沿岸同盟は、その財力と技術力で着々と小さな国々を吸収し、緩やかな結びつきの大国化を成し遂げている。

チャイニーズ連合の生き残りは、太平洋沿岸同盟の国々に避難民として逃げ込み、その命と財産を保証される。これが同盟が資金面でも頭1つ抜けている原因であるが、そのため、ロシア新帝国とは政治的に相容れないものがあり、小競り合いは、あっちこっちで起きている。


昔のヨーロッパ連合は、今はロシア新帝国に組み込まれている国が大半であり、新帝国のさじ加減で、いつ潰されてもおかしくない弱小グループとなり、もう新帝国に歯向かうような気骨のある国や政治家はいなくなっている。


中東とアフリカは、ようやく戦争とテロの長い歴史から開放され、短い平和と自由を満喫している(ここにも、新帝国と同盟の手が伸びている。小さな国々は、どちらと握手すべきか悩みつつ、今は様子見というところ)


宗教対立は、歴史が解消した。

宗教的に重要なポイントを発掘した新帝国の歴史探査部隊という名称の宗教破壊目的部隊が、それまで信じられて来た宗教の、どれもが嘘と事実無根の塊だと言うことを証明してしまったがため、一時は地球上のあちこちで、大規模宗教戦争が始まりそうになった……

が。


「今どき、神だ仏だ、などと崇め奉っている事自体が、地球人類が幼稚な証拠じゃないのか?宇宙創造を成した存在ならまだしも、人や生命を創造?馬鹿言っちゃいけないよ。詐欺師のような宗教家は、もういい加減に放り出せ!偉大な人類の宇宙進出に際し、もう神など矮小すぎて信じられるか!」


これが、連合と新帝国の代表者連名で発表される。

宗教指導者たちは怒り心頭となるが、それで力の行使に出ようものなら、国家を超えた宗教絶滅軍(正式名称は、迷信修正部隊)が動き出し、徹底的に踏み潰す。

そうして踏み潰された新旧宗教の書籍や書類は、その頃には宗教的な色を全て抹消していた「元・バチカン国」へ宗教書類一式として収められる。

人間が管理することまかりならんという、邪教扱いされた宗教書籍や書類は、全てバチカンの書庫で保管され、誰でも見ることができると保証される。

ただし、それを見るときには宗教的情熱ではなく、嘲笑と蔑視をもって臨むべしと、書庫の扉に掲げられたプレートに、大きく金色の文字で彫られた世界各国の言葉が宗教の落日を物語る。


「中央管制!中央管制!応答せよ、火星中央管制!緊急事態だ!」


「はい、こちら火星中央管制。緊急事態発生とのこと、機体名と、パイロット名を送れ」


そんな血まみれの歴史を辿った人類は、ようやくお隣の星、火星へと開拓団を送り出すまでに立ち直った。

そんな、火星開拓団の初期団員たちが、長い宇宙船生活から開放されると喜んだのも束の間、この事件が発生する。


「こちら、火星開拓団を乗船させた移民団の第一号宇宙船!着陸体制に入れない!制御ロケットが起動しない!」


中央管制に、衝撃が走る。

今、制御ロケットが起動しなければ、開拓団の第一団数千人を乗せた第一号宇宙船は、火星へ衝突コースとなり、今までに経験したことのない大災害となる。

それだけではない、第一号宇宙船が目指しているのは火星の宇宙港。

もし、宇宙港へ巨大宇宙船が墜落などしたら……


「こちら中央管制!このままでは、宇宙港すら巻き込んだ大事故になる。進路の変更は可能か?」


「こちら第一号宇宙船。いくらやっても、進路変更命令を受け付けない。どうすれば良いか?最悪、こちらだけ爆破する事となっても了承する。船長以下、覚悟は出来ている」


「こちら中央管制。少し待て、対策を協議して、知らせる」


緊急、深刻、そして多数の人命がかかった作戦を、火星中央管制だけで協議することなど不可能だ。

すぐに、臨時火星政府(まだまだ火星住民は少ない。よって、地球から臨時的な政府として認証・任命された特別チームが政府としての役目をこなしていた)の面々が集められる。


「おい、**はどうした?あいつがいないと、臨時火星政府の全員が集合にならないだろ!」


「**は、今、火星の北極部へ水探しに行ってます。あそこくらいしか可能性がありませんので」


「はぁ……よりによって、こんな時に。まあ、水探しも重要な仕事だ、仕方がない。しかし、緊急事態だ!奴にも、通信で会議に参加しろと伝えろ!」


了解!

と、部下の答え。

数分後、


「はい、こちら**。何だってんですか、隊長。もう少しで、水脈に当たりそうだって時に!」


「すまんな、**。こっちも緊急事態だ。おい、説明してやれ……」


数十分後、


「了解しました……あー、もう、何だって、こんな時に!案件についてですが、宇宙船の方でシステムの再起動は?はあ、やってない……まずは、再起動してみて、それでも駄目なら手動でしょうね」


「承知した。こちらから、宇宙船に伝える。しかし、手動で宇宙船を操縦するなどとは!俺じゃ考えもつかんな」


「手動操縦は可能なはずですよ。ただし、早急にやらないと、修正しきれない恐れはありますが」


「了解だ。至急、実行せよと伝える。しかしなぁ、**よ。いつも言ってるが、俺より、お前のほうが危機に際して柔軟に対応できると地球本部も言ってるんだぞ。隊長と副官の地位が、俺とお前で間違ってるんだ!」


「隊長、今更、何を言ってるんです?緊急事態なら俺ですが、緊急以外なら俺は失格と、コンピュータも判断してたじゃないですか。それゆえの人員配置でしょ?」


「ちっ!それを言われるとなぁ……しかし、俺は今でも、お前が臨時火星政府代表の方が適任だと思うんだがなぁ……」


ちなみに、この提案はすぐに実行される。

再起動案は、うまく行くかに見えたが、失敗。

もう時間がないということで、船長からパイロット、サブパイロットや航宙士、少しでも宇宙船のことを知っている人間なら誰でも!

ということで、数十人単位で手動操縦に挑むこととなる。


まずは、強制的に宇宙船の加速停止。

エンジンを手動で停止させると、次は制御ロケットの部分起動。

数人がグループを組んで、1つの制御ロケットに当たる。

パイロットと船長の指示で、タイミングを計りつつ、各所にある制御ロケットを吹かす。

数秒の遅れなどかまわない(それよりも事故回避)

進路を変更後は、宇宙船の停止にまわる。

完全停止など不可能なので、できるだけ速度を落とし、理想的には火星軌道を回る路線に。


色々やって、数時間後……


「やった!やりましたよ、火星中央管制!第一号宇宙船は、火星の周回軌道に乗りました!」


「こちら中央管制。おめでとう、乗務員やお客さんは、こちらから救助艇を上げるので、それに乗ってくれ。大丈夫だ、時間はかかっても全員、助ける!」


数日後、第一号宇宙船の乗務員と乗客は全員、救助される。

しかし……


「隊長、大変でしたね。ちなみに、水脈は発見しましたんで、これから深刻な水不足はないと思いますよ」


「ああ、ご苦労さん……って、お前なぁ。本来、お前が臨時政府事務所か中央管制局にいれば、こんな大事にはならんかったんだぞ!まあ、お前を派遣させる書類に許可出したのは俺なんだが……」


「しかし、これは後が大変ですよ。なにしろ、第一号宇宙船の事故原因が……」


「ああ、コンピュータウィルスだったそうだな、それも宇宙船ドクターの仕業とか。こりゃ、地球統一政府に対する明らかなテロ行為」


「ドクターの尋問時、自分が死ぬってことが理解できていなかったようですね。完全に潰したと思った古臭い宗教団体の送り込んだ洗脳患者だったということですか……」


「幸いだったのは、ドクター一人だけだったこと。こんな事が数隻単位で起きてみろ!どんな悲惨な事故となっただろうなぁ……」


この事故報告に、地球統一政府は焦る。

古臭い宗教団体、もう人類の記憶にも曖昧だと思っていた宗教の残滓が未だに生き残り、おまけに洗脳という手段をとるという狡猾さ。

徹底的に、今度ばかりは手抜きがテロに繋がるのだとばかりに、宗教というものを人類から弾き出して潰していく。


ちなみに、古い宗教遺跡や美術などは、このローラー作戦からは外れる。

昔の人達の宗教的情熱は否定しても無駄だから、その遺産は残す。

しかし、宗教を利用する悪辣な人の心を正すため、宗教そのものを(団体も、そして指導者も全て)潰す。

このための軍や警察、ボランティアの活躍は凄まじかったと、のちの人々は語る。


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