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第3話

今回も、くらーい話です。


太陽系に統一政府がようやく誕生し、西暦から太陽系標準暦(SS)となってから、幾世紀……

太陽系を、初めて飛び出すロケットが実験段階ではあるが造られることとなる。

それは、夢のテクノロジーとまで言われた「光子ロケット」


実験機が縮小モデルで作られ、実験室ではなかなかの性能を見せる。

実証機ということで、まずは無人機が制作され、これも成功する。

多少の故障は発生したが、それもリカバー可能ということで、今度こそ有人の光子ロケットが誕生。


「こちら光子ロケット第零号機。管制塔、応答せよ」


「こちら管制塔。通信は非常にクリアである。計画を実行し、リアルテイムで報告せよ」


「了解、管制塔。これより光子ロケットエンジンを起動し、予定通り海王星付近まで飛ぶ。秒読み開始、5、4、3、2、1、0!主機、起動!」


宇宙空間に浮かぶ光子ロケットの尾部が光る。


「エンジン出力、50%から60%……70%……80%……90%……100%出力全開!エンジン振動多けれど、安定。今から、光子変換器へエネルギーを送る」


光子ロケットは、その巨体を少しづつ前進させていく。


「光子エネルギー変換率、現在5%。微速ながら、本体の速度は上がりつつあり……」


「管制塔より、光子ロケット第零号機。光子ロケットを増速せよ。最低航宙速度20%まで上昇だ。そこでオートパイロットへ切り替え、数時間後に海王星が見えるはず」


「了解、管制塔。これより増速する……10%……15%……20%。これよりオートパイロットへ切り替える。次は、海王星付近より通信を送る、以上!」


オートパイロットへ切り替えて、光子エネルギー出力が80%以上になったのだろう、光子ロケットは監視カメラ群の視界から、ふっと消える。


管制塔では、実験の成功に喜ぶ顔が大半。

しかし、開発主任だけは浮かない顔をしている。

宇宙開発局長官は、気難しげな顔をしている開発主任に声をかける。


「なにを気難しい顔をしとるんだね?光子ロケットは見事に成功したじゃないか。君の成功でもあるんだぞ、祝杯を上げようじゃないか」


言われた当人、やや気落ちした顔で、


「いや、光子ロケットの有人化は、まだ早かったかかと思い直してます。次の壱号機は大丈夫だと思いますが、多分、零号機のパイロットは無事じゃすみませんよ。パイロットスーツに包まれていたとしても、あの加速度には耐えきれるとは思えません……オートパイロットですので、海王星付近へ到着したら、すぐに帰ってきます。さて、遺体を迎える用意をしなくては……」


果たして、帰投した光子ロケットの操縦室は血まみれだった。

あまりの加速度に、パイロットスーツも肉体も耐えきれなかったのだ。

皮肉にも、オートパイロット部は何も損傷なし。


これ以降、光子ロケットには加速時に時間をかけるフェイルセーフが装備され、有人での死亡事故は激減する。


試験的に運用されたということで、第零号機は光子ロケットの歴史から消され、犠牲となったパイロットは宇宙での事故として処理。

家族にも遺体は見つからずと言うことで引き渡されず、開発チーム内でのひそやかな葬儀が行われただけだった……


ただ、第零号機のエンジン部は一号機に流用されていたが、いつの頃からか、ある噂が、この第一号光子ロケットに搭乗する者たちの間で広まる。

巨大なエンジン部の点検、調整など行っていると誰かが後ろに立っているという。

何をするわけでもない、その人影は恨めしそうな目でエンジン部点検員を見つめているかと思うと、ふっと消えてしまうのだそうで。


そんな噂が立ってすぐ、エンジン計器部の近くには小さい慰霊碑が備え付けられ、それからは人影は現れなくなったそうで。


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