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宰相は死にたがる姫君を愛する  作者: 雪形駒次郎
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「風の宰よ。先ぶれもなくこのような刻限に何の用か。」

 長袖長ズボンにしなやかな革鎧をまとった男は、そろそろ初老に差しかかろうか、という年だった。肩までの髪を紐で一つにくくり、丈夫そうなすね当てと籠手をつけ、腰にはよく手入れされた山刀ファルシオンや銃がつるされている。

 若い頃よりは痩せたのだろうが、近づけば骨も精神もいまだ太いのがわかる。

 典型的な山の民だ。

「龍王陛下にお伺いをたてたい。奥宮までの往復3日間の通行・および狩りの許可がほしい。」

 ルシアスは右手を左胸に添えて敬意を表し、訪問の理由を告げた。

 太い眉をひそめ、オルフェイウス火山の周辺をたばねるロイドは灰色の鋭い視線でルシアスを射た。

「宰よ。我ら山の民は、尊き龍王陛下の安寧を妨げぬ限り、相手の門閥は問わず報酬に応じて護衛や商いに応じる。しかし王都での騒ぎ、我らとてすでに知っている。こたびの貴殿の行動がこの地を騒がすものでないと、証明できるのか。」

「リアンの森で『精霊石』を採ってくるのはどうだろう。」

『精霊石』とは、精霊の気が強い場に永い間存在することで魔石となった石のことである。

 その石があれば、属性の壁を越えて精霊の加護を得ることができる。

 もちろん、石があるということは強大な精霊がいるということ。

 自分たちの住処をあらす邪な輩を、彼らは全力で排除する。

 そして、リアンの森は龍王の住処へいく道の玄関口にあたる。

 そこにいる精霊の許しを得なければ、奥宮へは行けない。

「では早速とりに行くとよい。」

「ああ。...ロイド殿。すまないが、その間、竜と連れの娘を預かってくれないか。それと二人乗り用の鞍、水袋が二つほしいのだが…用立ててもらうことは可能だろうか?」

 ロイドが片眉をあげる。

「ひと晩護衛をつけるなら、100ルーンだ。…二人乗りの鞍は高い。150ルーン。水袋二つで5ベリル。樹海通行代および狩りの許可で30ベリル。合計250ルーンと35ベリル。」

ルーンは銀貨1枚の単位。ベリルは銅貨1枚の単位だ。1000ベリルで1ルーン。100ルーンで金貨1枚、1ガロンとなる。

銀250枚と銅35枚。

「あいにく今は手持ちを持っていない。何かついでに取ってくるものがあれば。」

「…折しも今宵は満月。エステラの泉で虹蛇の産卵がある。虹蛇の涙石を二十。

通行手形のかわりとして樹木精ドライアドの許しを得た『精霊石』を、10。

明朝までに用意できれば取引に応じよう。」

「感謝する。では、これを。」

ルシアスは自身の槍にうめこまれていた紅玉をロイドに手渡した。

「150ルーンの価値はある。…彼女をたのむ。」

「承りましょう。」

「では、行ってくる。」


ルシアスは槍を支えに、夜の森へと分け入っていった。


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