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39話 アルマナ防衛戦、その準備

ここから数話、視点を央都アルマナに移すので主人公不在となります。

 ────その頃、央都アルマナでは。

 

 何組かの冒険者パーティーに斥候を依頼して、魔物の大軍の位置情報を把握した上で。

 今後の対応を早急に立てるために太陽王(インティ)ソルダ、その王妃エスティマ、宮廷魔術師長、そしてこの短期間で央都に来ることのできたハティを含む各部族の長らが、宮殿内の会議室に集まっていた。


「一般的な都市防衛の戦法となるが、まずは妾も含む魔法使いによる遠距離、広範囲の攻撃魔法を放ち。撃ち漏れてきた魔物を城壁から出撃するのは(ソルダ)率いる近衛騎士を中心とした迎撃部隊で対応します」

「王妃。我々外から来た部族の戦士らはどこに配置を?」

「希望ならば迎撃部隊に。ですが部族の皆様には城壁のすぐ外側と内側に半々に配置し、外側の部隊は迎撃部隊の援護を。内側の部隊は央都に侵入してくる魔物や怪我人の救護を担当してもらいます」


 作戦の立案をしているのは王妃エスティマ。

 この国(アル・ラブーン)の象徴として王座に就いている夫ソルダに代わり、参謀としての才能を遺憾無く彼女は発揮していた。

 勿論王という立場は飾りではない。王妃の立案した作戦では、太陽王ソルダ率いる一隊は戦線の最前列に位置していた。

 そう、王には「切り札」と言えるモノがある。


 太陽の魔剣クラウソナス。

 太陽(インティ)の部族に代々継承されてきた、四柱の神々により人間が譲り受けた、この世界に12振りしかない魔剣の一本をソルダは所持していた。

 魔剣クラウソナスの存在を知っているのは王と王妃(エスティマ)、そして宮廷魔術師長ぐらいのものだろう。

 魔剣の力を解放すれば、その切り札の情報は他の国にも知れ渡ってしまうだろうが。

 それでも国の存亡と天秤に掛けるものでもない。


「そういえば、王妃お気に入りの筆頭騎士の姿が見えませんが。このような国の非常事態に姿を見せぬとは一体──」

「ノルディアには一つ重要な役割を受けてもらっているの。それこそ、今回の勝敗を左右するほどの」


 若くして筆頭騎士たる立場にいる彼女(ノルディア)の事を嫉妬する声は意外にも大きい。

 だが王妃は、彼女が「憤怒憑き(ベルセルク)」の単独戦力として誰より優れている点と周囲を顧みず攻撃する軍の一員としての運営のし難さの両方を把握した上で、軍としての枠から外したほうが彼女の能力を活かし切れると判断し、筆頭騎士として常に隣に置いていたのだ。

 だからこそこの状況でノルディアには既に遊撃部隊という立場を与え、魔物を側面や背後から打撃を与える任務を与えていたのだ。


「……任せたわよ、筆頭騎士サマ(ノルディア)


 すると、息を切らした伝令が部屋に飛び込んできて魔物らの襲来を告げたのだった。


「も、申し上げます!ま、魔物の群れの先頭集団が城壁の見張り番より目視で確認出来るほどに接近っ!」


『……来たかっ!魔物どもめッッ!』


「前線に位置する予定の部隊は至急兵の編成を終えただちに城門より出撃、テーベ川の支流を越えた辺りで布陣せよ!余も準備が出来次第、至急前線に向かう!」


『────はっ‼︎』


 央都より目視出来る距離まで魔物らの第一陣が姿を見せたことで、王の号令とともに会議から駆け足で出て行く王と王妃、宮廷魔術師長以外の全員。


「では王妃様、我らは魔法の準備を」

「ええ、露払いは妾らに任せて貰いましょうか」

「ふふ、久々に見れるのですね。王妃になる前はあなたこそが宮廷魔術師長になる筈だと称されたほどの月魔法の実力を」


 まずは雑魚を散らすために広範囲の攻撃魔法を魔物どもに放つ絶好の位置として、城壁に向かう王妃と宮廷魔術師長。

 こちらが揃えられた兵数はあまりに急すぎる召集だったこともあり2千にも満たなかった。対して魔物は情報によればおよそ5千。前線の騎士や兵士、冒険者たちが戦線を維持するためにも、魔法での初弾でどれほど数を減らせるかが重要になる。


 だが……そんな意思が一瞬で揺らぎ、怯えの感情が心の奥底から持ち上がってくるほどに。

 城壁から見えたのは、地平の向こう側に央都目指し進んでくる小鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)犬鬼(コボルト)のような人型の魔物、そして食人鬼(オーガ)岩巨人(トロール)のような大型の魔物が群れを成す様子は、まさに魔物の軍勢と呼ぶにふさわしい数だった。

 

 それ程の魔物の大軍勢を目の当たりにしてしまった宮廷魔術師らは、今まさにその恐怖に飲まれ冷静さを欠いてしまっていたのだ。


「……あ、アレが敵、だと?」「む、無理だ、5千だなんて……」「あ、足が震えて動かない……」「に、逃げたほうが」「で、でもどこへ?」


「──落ち着きなさい皆の者っ!我らの一撃が勝敗を左右するのよ!我らが逃げたら前線に立つ兵士らはどう戦うというの?」


 浮き足立つ魔術師たちに声を掛けていくが、魔術師らの動揺と恐慌を妾では止めることが出来ない。

ちなみに余談ですが。


小鬼(ゴブリン)は人間の子供よりも少し大きいくらいの体型で、肌の色は棲み処によって土色や緑色、肌色と保護色に近い感じとなる。石と木で簡易的な武器を作れるくらいの知能を有する。


豚鬼(オーク)は人間と同程度の大きさだが、豚の頭を持ち大概は肥満体型である。不衛生な環境に好んで暮らすために悪臭を放つ。知能は小鬼(ゴブリン)と同程度。

小鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)に共通しているのが種族内に女性はいるものの、好んで人間の女性との生殖行為を行い子種を産み付ける孕み袋扱いするという事。


犬鬼(コボルト)も人間と同程度の体型で、群れを作り犬とついているがどちらかと言うと生態は狼に似ている。この三種の中では一番知能が高く、鉄の武器を作れないが整備するくらいは可能。

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