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35話 アズリア、この素晴らしき騎士らに祝福を

ちなみに今日で20日連続投稿でした。

目指せ30日連続。

「こ……こんな大量の、しかも違う魔物が群れを成しているなんて……見たことがないぞ……」


 小鬼(ゴブリン)犬鬼(コボルト)豚鬼(オーク)食人鬼(オーガ)岩巨人(トロール)、そして多数の魔獣。

 さながら目の前では様々な魔物の種族と魔獣が肩を並べており、さながら魔に染まりし者どもの坩堝(るつぼ)と化していた。

 通常このような魔物らはあまり群れを成さず、多くて4、5体で徘徊している事が多い。時には強力な変異種(イレギュラー)が混じり群れが肥大化する場合もあるが、それでも違う種族で群れを作ることは前例にない。

 だからアタシも例外ではないが、戦歴の長そうな騎士らが目の前のあらゆる魔物が混成された群れに驚くのは当然かもしれない。


「あれだけの数が都市に侵入してきたら……なるほど、オリアスタが陥落するわけだ……」

「あの魔物どもめ……オスタリアには我が同胞が……」


 どうやらオスタリアという西の都市にはこの国(アル・ラブーン)では名の知れた将軍がいたらしいが、やはり多勢に無勢だったのだろう。

 この央都(アルマナ)ですら兵を2千しか集められなかったのだ。他の都市、しかも万全の態勢ではなかったのなら敗北は致し方のないことではある。

 だが、その都市(まち)にも日常を謳歌していた住民がいたのだ……それをこの連中は踏みにじってきたのだ、つい先程。


 横にいるノルディアを見ると、まだ剣を構えていないのに表情が変わっているのがわかる。きっと他の騎士たちもそうだ、住民を無為に殺されたことに怒りを燃やしているのだろう。

 そんな勇み足なアタシ達を、一人の初老の騎士の声が踏み留まらせる。


「怒りに身を任せるのは結構だ。だが我らは奴らを倒すだけが目的ではない。一番の目的は央都を守護する仲間たちの援護なのだということを忘れてはならぬぞ、皆」


 確かに、怒りに任せて突撃すれば多少は時間が稼げても、結局は数に押し負けアタシらが敗走すればこの遊撃部隊の存在意義はないと同じだ。

 

「……ありがとな爺さん。少し戦場に酔ってたみたいだ、アンタの喝のおかげで自分を取り戻せたよ」

「はっはっは、爺さんか。確かにお主くらいの若い娘から見ればワシは爺さんだのう。しかし……(ギザ)の集落を救った上にかの筆頭騎士と互角以上にやり合った剣士も、案外まだ未熟じゃの」

 

 横からノルディアが耳元に顔を近づけ、小声でアタシらに喝を入れた初老の騎士の名前を教えてくれた。

 ハーケン。それが目の前の爺さんの名前だ。


「そうだね、じゃあ爺さん呼ばわりしたことを謝るからさ。それじゃハーケン、先頭の鼻っ柱を折る以外に効果的な攻め方って何かないかな?」

「一旦、連中を見逃してから横腹を突くのはどうだ?」

「……他には?」

「魔物は本来群れを成さぬ生き物。ならばあの集団を率いている司令官のような役割の者があの中に必ずいる筈だ。それを叩けば……」


 ハーケンの案は二つ。

 一つは魔物の軍勢の横側から奇襲を仕掛け、ある程度数を減らしたら一旦退き、また違う箇所へと奇襲を繰り返す戦法。

 もう一つはあの魔物の大勢の中から、連中を率いる司令塔……多分それは魔族だろう、それを素早く倒す作戦。


「ぜ、前者の案をと、取りながら、敵司令官を探す、というのが、い、一番だと私はお、思うのですが」


 ノルディアの提案に皆が頷く。

 まずは魔物の大軍の側面に陣取るために、岩場や窪みとなった場所に馬やラクダと一緒に身を屈めて姿を隠し、侵攻してくる魔物どもを一旦やり過ごす。

 もしアタシらが潜んでるのに気付かれた場合は、ノルディア達が央都まで逃げ果せるまで剣を振り続ける覚悟をしていたが。

 どうやら魔物どもはアタシらの気配には気付かず進撃を続けていた。ある程度、群れが通過する様子を確認していると。

 どうやらノルディアもその存在に気付いたようだ。


 冒険者やらよく見かける小鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)の中に、一際禍々しい気配をした二組の骸骨を(はべ)らせていた妖艶な雰囲気の女魔族をアタシと彼女(ノルディア)の視線は捉えていた。


「……あれ、魔族ですよね!」

「ああビンゴだ。だけど……あそこまで魔族だって正体出してるなら奴ら、完全に人間(アタシたち)を舐め切ってるね」

「……同感です」


 彼女(ノルディア)の口調はいつもの上擦りが治りながらも極度の興奮状態ですらない。

 いい感じだ。多分、今彼女(ノルディア)の怒りが「憤怒憑き(ベルゼルク)」で沸き上がる怒りの感情を超えているのだと思う。


 背後で待機していた他の騎士たちも、今が絶好の機会だということは理解している……しかしあの大勢だ。いくら腕に覚えのある騎士でも、生きて帰ってこれるのは半数くらいだろう。

 それがわかっているからこそ、騎士たちは足を震わせ、反撃のための一歩を踏み出せずにいた。


 だからアタシは、騎士の一人に近付いていき少々強引ながら頭を掴んで無理やり唇を重ねていく。


「…………ッッッ⁉︎」

「……いいかい、知ってる連中もいるだろうけど。アタシは6年前に(ギザ)の魔獣を倒した勝利の女神サマだよっ!だから今度はアンタ達が全員生きて戻れるように……そ、その、祝福だよ!そう、祝福ってのを唇で授けてやったんだよ……」


 ……恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。 


 それに、アタシみたいな肌の黒い大女の唇なんて大したやる気にはならないと思いはしたが。


「やっぱ……アタシじゃ、不満だったか、ねぇ」


 唇を重ねた騎士が固まったまま、その場から動こうとしない様子に。

 まさか茫然(ぼうぜん)とさせてしまう程に、アタシとの接吻(キス)は嫌だったのか……と少しばかり落ち込んでいると。

 肩を叩いてきたのは他の騎士たちだった。  

 

『──私達にも是非アズリア様の祝福をっっ!』


 その中に混じるハーケンとノルディア。

 ハーケンはともかくとして、ノルディアはむしろアタシと一緒に全員にやる気を出させる手伝いをするべきなんじゃないのかねぇ?……ねぇ?

ホブゴブリンをどう漢字で書こうか思案中。

思いつかなかったならいっそこの世界にはホブゴブリンはいないことにしてしまおうか。


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