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33話 コピオス、魔物らを率いて侵攻する

 我が名はコピオス。

 四本の蠍の尾と、金剛鋼(アダマンタイト)に引けを取らぬ硬度の外殻を持つ将軍の地位にある蠍魔人(タムズ)である。


 我は今、四天魔王(フォーゼリオン)と呼ばれ、魔界からこの世界に顕現している強大な魔族が一人、西の魔王リュカオーン様の一の配下として、この砂漠地帯を蹂躙せよとの命のままに。

 数名の魔族と5千の魔獣と魔物らの混成軍を率いて、人間たちがアルマナと呼ぶ都市に侵攻中だ。



 ここはその進路の途中にある都市オリアスタ。


「……クソがあぁぁっ!」


 目の前に立つ脆弱な人間の騎士が、その手に持つ剣で苦し紛れに斬り掛かってくるが。

 我はそんな力無い剣撃を、指一つ動かすことなく蠍魔族(タムズ)特有の硬い外殻で受け止めていくと、絶望感に満ちた表情を浮かべる。


「無駄だ。人間ごときの力では我が外殻は傷一つつけられんよ。大人しく死ぬがよい」


 我が手に握る槍の間合いの長さと斧の破壊力を両立させた愛用の武器、両斧槍(バルバード)を横薙ぎに振るうと、最後まで我に抵抗していたこの国の騎士の上半身と下半身が両断され、大量の血を噴き絶命する。


 ……ふん、やはり人間は弱い。 


 今までの都市と違い、最初は冒険者や傭兵などを雇い我ら軍勢への対抗手段としていたようだったが。

 人間の必死な抵抗で、万が一にも魔物たちが大量に倒されるような事があってはならない。今回の侵攻計画には万全を期すために。

 あらかじめ侵攻する進路上にある都市や集落に配下の魔族らを潜入させ、人間どもが大規模な対抗策を取れないように内部から混乱させる策を用いた。


「ひひひ、ご苦労様ですーコピオス様」

「ラージェか。お前もこの都市(オリアスタ)への10年間もの潜入工作、よくやってくれた……ちなみにそれは何だ」

「コレですか?ひひ、私をずっと味方だと信じてた男とその娘の首ですねー」


 ラージェは淫魔族(サッキュバス)の魔人で、男女問わずに対象を魅了して支配する魔力に長けている、我の直属の配下の一人である。

 その能力を使い、長年に渡りこの都市(オリアスタ)の領主への不穏分子を集結させ。我らが侵攻するこの時に合わせて集めた不穏分子に領主への反旗を翻してもらったのだ。

 篭城を決め込んだ矢先に反乱軍に城門を開けられ戦線は瓦解し、最初は歓喜の声を挙げた反乱軍もろとも魔物らに蹂躙されていく様は見ていて滑稽だった。

 ラージェがぶら下げている首の持ち主は、反乱軍の首謀者の男と、その恋仲だった領主の娘だ。

 もちろんその二人の恋仲とやらも、ラージェの魅了の魔力で操作されていたものだとは死んだ後も気付いてはいまい。

 早速ラージェはその二人の生首に呪術を発動させて、死してなお魂を縛りつけ自分(ラージェ)を守る盾にしようというのだ。


「ひひひ……お前たち恋人同士、いつまでも私を守るために一緒にいさせてやるよー」


 人間の都市に魔物たちが侵入したことにより、最早この一帯は阿鼻叫喚の渦となっていた。


「うわあああ!ま、魔物だぁ!」「こ、こっちへ来るなっ!ぎゃあああッッ!」「お母さーんっ……どこぉ」「こ、ここの守備隊は何をやって……ぐわぁぁあ?」「あの子……誰か私の子を見ません出したかっ?」「誰でもいいっ!助けてぇぇ!」「逃げろっ!とにかく逃げろっ!」


 魔王リュカオーン様にはこの地に住まう人間どもを根絶やしにしろと仰せつかっているので、魔物や魔獣には、人間は見つけ次第殺してもよいと伝えてある。

 奴らは単純だ。故に残酷だ。

 門を開かれ、それでも都市(オリアスタ)の入口で必死に抵抗した兵士や傭兵、冒険者らはもちろんだったが。都市に侵入した魔物や魔獣は、女子供老人だろうと容赦無く殺して回った。魔物は今でも獲物の人間を探し出そうと街中を徘徊しているし。魔獣は殺した人間を餌として貪り喰らっていた。

 都市(オリアスタ)のあちこちから火の手と悲鳴が上がり、我らの手によってこれで5つ。都市が滅んだ。


 しかし、最大の戦力だと期待していた(ギザ)の魔獣の召喚が失敗した、と知らせがあった時は耳を疑った。

 まさか人間ごときに我らが計画がたとえ一つとはいえ、邪魔されるようなことがあろうとは。我の誤算である。

 しかも、(ギザ)の魔獣を召喚させるために向かわせたのはマフリートの筈。奴はラージェのように人心を操作する魔力こそないものの、我が配下随一の魔法の使い手でもあった悪魔族(デーモン)だ。人間ごときに遅れをとるわけがない。

 だが現実に、(ギザ)の魔獣は召喚されておらずマフリートも行方知れずだ。確か連絡用にもう一人魔族を遣わせたはずだが……


 後に報告があった。

 どうやら央都へ我らの侵攻を伝えようとする伝令を逃してしまったらしい。

 まあ、よい。

 今更我らを迎え撃つ準備をしても遅い。

 人間どもがいかに足掻こうが、我らはこの地を魔族のモノとするために、実に十数年前から画策してきたのだから。


 都市が燃えていく。悲鳴ももはや聞こえない。

 さあ人間よ。我らに蹂躙されるその時まで、せいぜい恐怖し……そしてその時に絶望するがいい。

 

 だが、個人的に願わくば。

 我を満足させるだけの闘いと、それを与えてくれる程の強者と是非出会ってみたいものだ。

評価ポイントがもうすぐ100Pに届きそう。

達成したら記念に閑話でもアップしてみたいですが、まずは引越しが落ち着いてから。

最近は荷造りしながら文章作成してますが、週末は本格的にアップ出来なくなりそうな予感です。


もし本当に最新話アップ出来なくても許して。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ラージェがぶら下げているのは「生首」ですよね。 「骸」でもないのに、次話から「骸骨」になってます。
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