表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/1761

25話 アズリア、帝国の動向を知る

この気の向くままに書いているアズリアの物語に13人もの方がブックマークを登録してくれているのにあらためて感謝です。

最初は評価を気にしないつもりで文章をアップしていましたが、評価やブックマークが増えるとやる気やテンションが上がります。

 あの場を離れはしたが、街中で剣を抜いてお嬢(ベルローゼ)とやり合ってしまったのだ。さすがに悪目立ちしすぎた。

 なので人通りの少ない店の裏側なんかを通ってちょうど騒ぎを起こした反対側の区画にこそこそと移動し、近くの酒場にでも入って住民に紛れてしまえば……


「よう姉ちゃん、相変わらずいい腕してたな。しかしまあ、姉ちゃんも央都(アルマナ)に来てるとは思わなかったよ」


 先程の騒ぎを知ってる人に声を掛けられた。

 いや、この声には聞き覚えがある。


「やっぱりこの声はオログだったかい。あんな事があった後にいきなり声かけられたら警戒して身構えちゃうだろ?」

「ありゃ結構な人が集まってたからな。かたや可憐な白い薔薇、かたや野性味溢れる黒の炎百合(グロリオサ)……」

「……何だいその吟遊詩人が使いそうな言葉使いは」


 ちなみに炎百合(グロリオサ)とは、炎の精霊力の強いメルーナ砂漠一帯で見ることの出来る、炎のような模様と形をした真っ赤な花を咲かせる植物のことだ。

 しかし、アタシを花に喩えるのは何か色々と間違ってる気がするとオログに言ってやりたいが。


「いや、この都市(まち)は色々な国の人間がやってくる関係上、ああいった喧嘩なんかは日常的に起きてるからな。みんな慣れたモンだったろ?」


 確かに言われてみれば。普通なら見物人の誰かが衛兵を呼びに行って、騒ぎがひと段落着く頃にようやく衛兵が遅めの到着、といった流れなのに。

 お嬢(ベルローゼ)があれだけ騒ぎを起こし剣まで抜いたってのに、見物人は誰も悲鳴の一つもあげてなかった気がする。


「で。こういう時に喧嘩でどちらが勝つか、賭けが始まるんだ。もちろん俺は姉ちゃんに賭けて、タンマリと儲けさせてもらったぜ?」

「……さすがは行商人だ、しっかりしてるねぇ」


 あの騒ぎの最中に見物人らは驚くどころか、アタシとお嬢(ベルローゼ)をダシにして賭博まで行なっていたそうだ。

 いや、逞しすぎて呆れちまうね、ホントに。


「……ま、まあせっかく姉ちゃんと再会出来たし、たっぷり稼がせてもらったお礼代わりだ。ここの支払いはオレが持つから酒でも料理でも好きなだけ頼んでくれよ!」


 アタシが何か言いたそうな視線をジーッと向けると、その視線から逃げるように顔を逸らすオログが奢るのを約束してくれたので。

 にこやかに笑い返してあげた。


 食後の運動を済ませたとはいえ、市場通りで腹が膨れるまで料理を堪能したのだ。アタシは料理はほどほどに注文し、久々に木製のジョッキに注がれた麦酒(エール)を一気に飲み干していく。


「……ぷはぁ!おーいっ、麦酒(エール)もう一杯だ!」

「相変わらずすげぇ飲みっぷりだな姉ちゃん……その様子だと、姉ちゃんの用事は無事に済んだみたいだな」

「ん?何でそう思ったんだい?」

「いや、そりゃまあ。他に寄る場所があるって言ってたのに央都にいるってコトは、もう用事は終えたってことじゃないのか?」

「ん、いや……ちょっと厄介事が起きてね」


 オログには(ギザ)の部族での水の精霊(ウンディーネ)の事や魔獣の話はせずに、魔族が大挙して攻めてくる、と事情をかいつまんで説明した。


「なるほど……本当に姉ちゃんの周りにいると厄介事だらけで退屈しないな。忙し過ぎて困るくらいだぜ」

「別にアタシが魔族呼んだわけじゃないからな、そこは誤解のないように言っておくけど」

「その様子じゃ、さっき姉ちゃんが負かした相手が誰なのかも理解してないんじゃないのか?」

「……帝国(ドライゼル)白薔薇(エーデワルト)公爵サマ、だろ?」

 

 知らないと思って高を括っていたのだろう。

 見事にお嬢(ベルローゼ)の素性を知っていたことに口笛を吹いて驚いていた。


「そこまで知ってて喧嘩売ったのか……姉ちゃんは大物なのか命知らずの馬鹿なのか、時々わからなくなってくるよなあ……」

「……オログのその言い方、まるであの公爵サマが何でわざわざ砂漠の国(アル・ラブーン)にまで足を運んでるのか知ってるみたいだね」

「みたい、じゃなくて知ってるんだよ。ついこの間、ドライゼル帝国はこの砂漠の北にあるホルハイム王国に宣戦布告した」

「……は⁉︎せ、宣戦布告……って戦争する気かい?」


 オログはアタシの問いを肯定する意味で黙って頷き、


「だから今この国(アル・ラブーン)にも、ホルハイムから逃げてきた行商人たちが多数いる。その筋から聞いた話だから確実だ」


 小競り合い程度の衝突であれば、行商人は寧ろ物資の不足や高騰により稼ぎ時でもある。それ故、行商人たちは互いに回った地域の情報をある程度交換するという暗黙の了解がある。

 その連中が逃げ出してきたのなら、ホルハイムが商売にならない危機的状況に陥るだろう、と行商人は判断したのだろう。


「あのエーデワルト公爵は表向きはこの国に、南側からのホルハイムへの挟撃を要請しにきたんだろう」

「で、本当のところは?」

「要請に乗らないなら次はお前達だ、という脅しだろうな」


 アタシとオログは頭を抱えて卓に突っ伏す。

 お嬢(ベルローゼ)の要請を受けて軍を北に動かしている間に魔族が侵攻してきたらこの国は壊滅だ。

 だが、魔族の侵攻に備えるために援軍要請を断ったなら間違いなく帝国はこの国(アル・ラブーン)にも侵攻してくるだろう。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者のモチベーションに繋がるので。

続きが気になる人はこの作品への

☆評価や ブクマ登録を 是非よろしくお願いします。

皆様の応援の積み重ねが欲しいのです。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ