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22話 アズリア、央都アルマナに到着する

「へぇ〜砂漠の真ん中にまさかこんな立派な都市(まち)が出来てるなんて知らなかったなぁ」


 央都アルマナ。

 砂漠国家アル・ラブーン連邦で最大だったオアシスと、砂漠に肥沃な恩恵をくれるテーベ川のほとりに建造された都市で、太陽王(インティ)と呼ばれる王がこの都市を統治している。


 その街並は隣国シルバニアの王都にはまだ及ばないものの、街の至る所にある噴水や水路などが流れていて、砂漠にいることをつい忘れてしまうくらいにこの都市は水の恩恵に溢れていた。

 それはアズ湖に隣接した(ギザ)の部族よりも、であり。央都(アマルナ)の街並みに築かれていた建物のほとんどにはシルバニア王国と変わらない程の木材が使用されていることからも分かる。


 ……ちなみに「最大だった」というのは、現在は(ギザ)の集落にあるアズ湖の大きさが超えてしまったからだ。

 余談だが、アズ湖を守護する水の精霊(ウンディーネ)は「あまり湖と離れすぎるとお姉さん魔力が枯渇しちゃうのよー」と言って湖へと帰っていった。


 元々このアル・ラブーン連邦は、ハティ達(ギザ)の部族をはじめとする有力な部族がメルーナ砂漠を分割し、それぞれの土地を統治していたが。

 周囲の国家が徐々に大きくなっていくにつれ他国からの脅威を感じ始めた頃に現れた初代の太陽王(インティ)が全ての族長を集め、部族による土地の自治権を認めながら、この央都を中心とした支配体制を作り上げたのだった。


 (ギザ)の集落が以前の生活をより濃く残しているのに対し、この央都(アルマナ)は余所からやって来た他国の文化を積極的に取り入れているように見える。


「……それにしても魔族の侵攻とかとんだ大事件に巻き込まれちゃったねえ……まあ、砂漠に来なかったらハティ達がどうなってたか、と思えば砂漠に来て正解だったのかもしれないけどさ」

 

 こんな事情がないなら、綺麗な街並みを眺めながらゆっくりと砂漠の王国の美味い料理に酒でも堪能したいところなんだけどね。

 要件を済ませるために、まずは街の中央に鎮座している黄金色に光り輝く宮殿のような場所に向かう。

 すると、宮殿の出入りを見張る門番であろう武装した男に呼び止められる。


「待て。この国の民ではないな……旅人か。して、この太陽の宮殿に何の要件か?」

「アタシは(ギザ)の部族の使いで、この書状を国王に届けてくれと依頼されたんだが」

「それはまずこちらで預かろう。だが、王は大変多忙でな。書状に目を通すのに時間を要するやもしれん」

「なら、国王には6年前に(ギザ)の集落で起きたことの続報だ、と伝えておいて欲しいな」


 アタシは国王との謁見を希望することを伝え、(ギザ)の部族からの書状を手渡した。


 旅の者がいきなり国王に謁見する、なんて事はこの国(アル・ラブーン)に限らず普通に無理な話なので、次期族長候補のハティとユメリアに筆を取ってもらい国王宛ての書状を予め用意してもらった。


 ハティ達の部族がこの(アル・ラブーン)でどの程度の位置にあって発言力を有しているかはわからないが、部族による自治権が認められている以上は国王が無視出来ない立場なのだから書状が無碍にされることはないと思う。

 だから6年前の(ギザ)の魔獣の召喚の騒ぎも耳に入っていると仮定して、門番に書状だけでなく伝言も付け加えておき、門番にはアタシが泊まっている宿を教えて一旦その場を後にする。


「まあ……門番も時間がかかると言ってたし、いくら状況が切羽詰まってるとはいえ、王様に会うまでアタシがやる事がないのも事実なんだよね……」


 となると、央都(アルマナ)で美味い料理を食べたい、という欲望がアタシの頭の中を急速に埋め尽くしていた。

 というのも、これには悲しい理由があるのだ。

 しかも三つも。


 理由の一つは(ギザ)の集落を出立して央都(アルマナ)への間、ロクな獲物が見つからずに干し肉に黒パンと水だけで旅を続けていたこと。


 二つめは、砂漠の入り口にある宿場町の宿屋の女将であるアウロラの料理があまりに美味しすぎて、口が肥えてしまったということ。


 そして三つめの理由が一番深刻だった。

 それは……ユメリアの料理の腕だったのだ。


 確かにユメリアは気立ても良いし、容姿も並外れて美しい。治癒術師の能力は6年前に死にかけたアタシを癒してくれたことから非常に高い。女性として申し分無い。

 ……ただ一つ、料理が壊滅的に下手なのだ。


 しかも治癒術師であることがさらに料理下手に拍車をかける、何しろ身体に良いからと薬草を何にでも投入してくる悪癖持ちでもある。

 食材の焦げた苦味と薬草のエグ味、強すぎる酸味や塩味が渾然一体となったその料理はまさに「酷い」の一言に尽きる。

 一度そんな彼女の料理の腕を改善させようと厨房に近づこうとしたところ、「隠し味は秘密ですよ♡」と言われ、頑なに厨房に入れてすら貰えなかった記憶がある。


 そんなハティの家に滞在している間、何故かアタシを慕ってくるユメリアは料理を率先して行うため、その完成品をアタシとハティはほぼ強制的に食べさせられていた。

 いや……ハティはよく族長会議とやらで朝早くいなくなっていた、あれはユメリアの料理から逃げていたのか……

 おのれ、許すまじハティ。


 なのでアタシの身体は今、薬草と黒パンと干し肉以外の美味い料理を無性に欲しがって止まないのだった。

 

書き溜めはしないので、文章が思いつかない時はなかなか更新出来ないのは勘弁して下さい。

拙い内容と文章ですが、ようやく10万字到達しました。

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