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14話 ウンディーネ、事の真相を話す

「いやいやいや!……いきなり会ったばっかで魔術文字(ルーン)貰っても……いや、嬉しいよ。嬉しいんだけど……」

「アズちゃんは自分がした事の重大さを理解してもらいたいわ〜。魔族が召喚したあの炎の魔獣が倒されてなかったら……きっとここら辺一帯は湖どころか、砂漠以上の不毛の土地になってたはずだもの〜ありがとアズちゃん〜」

 

 水の精霊(ウンディーネ)抱擁(ハグ)から何とか脱出したものの、再度抱きついてこようとする彼女を身体を翻して躱すと、恨めしそうな表情でこちらを見ていた。


 ……ちょっと待った。

 今、ウンディーネは「魔族が()()()()」って確かに言った。

 アタシの記憶だと……(ギザ)の魔獣は元々ハティ達部族のみんなが祀っていたモノで、暴走した引き金となった儀式を行なったのは部族の呪術師(シャーマン)だったはずだ。

 ……あれ?何かおかしい。

 

「結局、(ギザ)の魔獣ってのは何だったんだい?」


 ウンディーネに聞きたい事は多々あるが。 

 まずはアタシが戦ったあの魔獣の正体を知らないことには、そこから先のアタシの認識と事実との「ズレ」は埋まらないだろうから。


「む〜……えっと、アレはね……色々と人間のアズちゃんに喋っちゃいけない事もあるんだけど……簡単に話すとね、魔族たちのいる世界から呼ばれた、お姉さん……つまり水の精霊を餌にする別の世界の魔物なのよ」


 それってつまりは。

 6年前のあの(ギザ)の魔獣の暴走の原因になった儀式の目的は、水の精霊(ウンディーネ)を消すためだったということとなる……いや。そもそも儀式が失敗し暴走した、という事が怪しい。

 そういえばさっきから「魔族」と言ってたが。


 ────魔族。

 文献などによると、元々は精霊と同じく人間の世界とは別の世界からやってきた種族らしいが。

 今は主に「世界の終焉(ワールドエンド)」と呼ばれる東西南北の世界の端にそれぞれ築かれているとされる城を拠点にしている、という話である。

 何故か理由は知らないが、基本的に魔族は人間に対して敵対行動を取ることが多く、時には魔物や魔獣を率いて人間を襲うこともある。人間に比べ身体能力や保持している魔力量が高く、魔族一人で街一つを壊滅出来ると言われているが。

 幸か不幸か、アタシはまだ魔族に遭ったことがない。

 

 しかし、まだ疑問というか色々と繋がらない部分がある。(ギザ)の部族は「火」を冠する名称だからとはいえ人間で構成されている集団だ。もちろん人間である以上は水がなければ生きていくことは出来ない。

 だからこそ、だ。

 何故水の精霊(ウンディーネ)を?


「そもそも、この地にお姉さんの恩恵が与えるはずだったのに……あの集落に()()()()がお姉さんの魔力を封じる儀式をしてたせいで、お姉さん……ずっと砂の中だったの〜」


 三度(みたび)抱きついてこようとする水の精霊(ウンディーネ)

 また身体を捻って向かってきた彼女を躱そうとしたが……え?幻?残像?

 躱したと思った直後にアタシの背後から抱擁(ハグ)されてしまった。


「うふふ〜お姉さんを救い出してくれた上に、この地にお姉さんの恩恵を取り戻したんだから!アズちゃんはもっとも〜っと胸を張っていいんだから〜」


 と言って、今度は胸当ての隙間に手を入れてアタシの乳房を鎧下着(ふく)の上から揉んできやがった⁉︎

 

「お、おいっ!胸を張るってそういう意味じゃ……」

「あら〜アズちゃんって結構胸大きいのね〜」

「ば、馬鹿や、やめろっ!おい、そろそろその手を止めないと本気で怒るぞっっ……」

「うふふ、少しお姉さんやりすぎたわね。でも……アズちゃんが額にシワが寄った難しい顔してるから〜」

「……帰る」

「あ〜ん、ごめんなさいアズちゃん〜」


 精霊界(ここ)に来た時に通った光の扉に入ろうとするアタシの腰にズルズルとしがみついてくる水の精霊(ウンディーネ)

 もしかして一人で精霊界(ここ)にいるのが寂しいとかじゃないだろうね……


「……そういや、ハティと族長の座を競ってるリュードラって奴の話なんだけど」

「ハティ?リュードラ?ん〜……お姉さん、ちょっとよくわからないわね〜」

「話は最後まで聞けって。で、そのリュードラがあの(ギザ)の魔獣を復活させようとコソコソしてる、って話を聞いたんだけど」

「……普通の人間なら無理だけど〜……魔族の魔力なら、何かしら火の魔力を宿した品物を触媒にすれば出来るかもしれないわね〜………………ってアズちゃん!それって一大事じゃないっ!」


 それってのは、つまり族長の息子のリュードラが族長なりたさに、魔族と手を結んで(ギザ)の魔獣を復活させようとしてるのか?

 もし魔族がリュードラでないならば、リュードラは魔族に騙されてるだけの可能性が高い。


「ふぅ、これはお姉さんにとっても非常事態なので。いいわ、アズちゃんにお姉さんついていっちゃおうかな〜?」


 水の精霊(ウンディーネ)はついてきたそうにコチラをチラチラと見ている。本音を言うと、精霊を連れて行くなんて厄介ごとの火種にしかならなそうなので、丁重にお断りしたいのだが。


「んもう〜お姉さんは考えてるコトわかるっていったでしょ〜!それに、お姉さんを連れてれば、魔族か人間かをアズちゃんに教えあげられるし〜?」

「それは凄く助かる!」

「でしょ〜だからアズちゃんはお姉さんを連れていきなさいっ!」


 ……結局は押し負けてしまった。

ちなみに「lagu(ラーグ)」の誓約を語る合間がなかったのでここで解説を。

誓約の内容は「水の精霊(ウンディーネ)に優しくする」でした。

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