表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/1761

7話 アズリア、ラクダに初めて乗る

 さすがに夜通しで砂漠を駆けずり回り魔物と一戦交えて薬草を採取して帰ってきたのだ。一安心したら睡魔が猛然と襲ってきたので、アウロラの宿で一眠りする。

 彼女なりの感謝の気持ちなのだろう、一番良い待遇の個室にしてもらえたので。部屋に入るなり防具を雑に外し、汗まみれになった鎧下着も床に脱ぎ捨てて、全裸でベットへと倒れ込む。


 ……すると瞬く間に寝息を立てて寝てしまった。

 掛け布を羽織ることもせずに、全裸のまま。


 そしてアズリアが深い眠りに落ちてから、しばらく時間が経過すると。

 個室の扉を叩く音が聞こえてアタシは目を醒ます。


「おーいアズリア起きてるかー?アウロラがお前と話がしたいからって言ってるけどどうする?」


 窓の外を見ると、すっかり日が落ちて夜になっていた。ふあ〜あ……とあくびをしながら、まだ頭の回転が鈍ったまま扉を開ける。


「よく寝たぁ〜……あれ?どしたの?」

「………………お…………おお……」


 扉を開けた途端にガチガチに硬直したオログ。

 だと思えば顔を手で隠してアッチの方向向いて、さっきから言葉にならないようなコト呟いて、一体どうしたってんだ?

 

「様子変だぞオログー、今更アタシ見て照れるとかないだろー?」

「……服を着ろアズリアっっ!」

「……へ?………………あ」


 ようやくアズリアは気づく。

 全裸のままで部屋の外に出てたことに。

 こっそりアズリアのほうをチラリと見たオログの視界に入ってきたのは、健康的な褐色肌に張りのある大きな乳房だった。

 恥ずかしさのあまり絶叫し、同時に扉を力任せに閉めるアズリア。

 

「わ、わ忘れろよッ!今見たこと全部忘れろッッ!……うわぁぁぁぁぁ……砂漠に行って砂に埋もれたいよ、アタシ……」

「(あんな身体……忘れられるワケねーだろ!)」

 

 アズリアを呼びに行ったオログが真っ赤な顔をしながら階段を降りてきたと思ったら何処かへ消えてしまい、いつの間にか酒場に戻ってきた時にはスッキリとした顔をしていたり。

 その後しばらくして階段を降りてきたアズリアも顔を真っ赤にし、やたらと胸を気にしていたのを酒場に集まった町の人間とアビーは終始不思議そうに思っていた。


 呼ばれて何事かと思ったら、薬を飲ませてから付きっ切りで看病していたアウロラが酒場にいた。


「ルカが目を覚ましたの。熱も下がって……」

『そりゃーよかった!おめでとうアウロラ!』


 酒場に集まった全員が声を揃えてアウロラを祝福する……何せ今までの落ち込み様を見ていただけに。

 愛されてるねぇ、アウロラ。

 確かに旦那はもういないけど、そういう事情を汲んだ上で彼女は町の皆に好かれているんだろうね。

 オログ達がこの町を彼女(アウロラ)の名前を付けて呼んでいたのかを今、理解した。


「で、でね。最大の功労者のアズリアに何かしてあげたいな、って思うんだけど」

「確かに彼女には安く大量に滴を融通してくれた礼もある」

「なあ姉さん、何か希望はあるかい?この町で出来る支援なら何でもさせて貰うつもりだ」


 ……なんか、断れる状況じゃないね。

 それなら。


「じゃあ一つだけ。アタシさ、これから砂漠を移動しなくちゃいけないけど……荷物持ち用にロバかラクダを一頭、貸してもらえたらなぁ……って」


 町の人間はそれを聞いて、皆んなで笑い出し、


「そんなコトならお安い御用だ」

「何なら貸すんじゃなくて貰ってくれよ」

「それなら俺はロバよりラクダのほうを勧めるぜ」


 と言うなり、酒場を走って何処かへ行った男が戻ってきた時に一頭のラクダを引っ張ってきていた。

 「乗ってみなよ」と急かされたので、勧められるままに酒場を出て連れてこられたラクダに跨ってみた。


「実はさ……アタシ、ラクダに乗るの初めてなんだけど、意外と乗り心地は良いモノなんだねぇ。でも……馬より高いのが、ちょっと怖いかも……」

砂漠の王(アントリオン)をどうにかした町の勇者様も、どうやらラクダの高さは怖いみたいだぞ」

『うわっはっはっは!』


 アタシを降したラクダを一度自分の小屋へ戻しに行くのは、ラクダを引っ張ってきた男。

 「出発する時には声を掛けてくれ」だってさ。

 アタシのラクダ初騎乗の感想を皆んなで酒の肴にしてくれていると、


「それじゃアズリアへのお礼が出来たところで、今度は私の特製料理を食べて貰いますよ。ルカの回復祝いですから全力で料理しますから。残さずお腹いっぱい食べていって下さいね」


 そう言ってアウロラは袖を巻くって酒場の奥、厨房へと消えていった。

 町の男連中と酒を酌み交わしながら料理を待っていると、厨房からはアウロラが調理している何かを炒める音や香ばしい香りが漂いアタシの腹の虫が鳴り止まない。

 そういや、朝露草の報酬はアウロラの手料理だったっけ。オログやアビーから彼女の料理は絶品って馬車に乗ってる時から聞いていたからね。

 どんな料理が出てくるのか楽しみで口の中で唾液がもう決壊しそうになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者のモチベーションに繋がるので。

続きが気になる人はこの作品への

☆評価や ブクマ登録を 是非よろしくお願いします。

皆様の応援の積み重ねが欲しいのです。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ