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4話 シェーラ、初めての野営

「それじゃ、まずは倒した豚鬼(オーク)の処理だけしちゃわないとな」

「……処理、とはどういう事です?」

「ああシェーラさん、それはね。冒険者組合(ギルド)じゃ討伐した魔物一体につき報酬が出るんだけど、そのためには魔物によって部位を持ち込む必要があるのよ」


 すると、クレストさんが手慣れた様子で豚鬼(オーク)の耳を削いでいたのを見て、思わず目を逸らしてしまいました。

 そんな私の様子を見たリアナさんとネリさんがこくこくと首を頷きながら。


「うん、わかる。あたしたち、魔物の解体はクレストに全部お任せだから。解体(アレ)をやれ、と言われてもムリムリっ」

「ですね……本当にクレストには感謝してます」


 その後、私たち集団(パーティー)はまだ周囲に豚鬼(オーク)がいないかを捜索しましたが、それらしき存在を発見することはなく。

 日も陰ってきたので、一旦森の外に出て今夜はここで野営をし、明日あらためて本格的な豚鬼(オーク)の捜索をすることになりました。


「じゃあシェーラさんはネリと一緒に火を起こして食事の準備をお願いします。カイトとリアナは天幕(テント)を張っておいて下さいね」

「あ、あのクレストさん?」

「シェーラさんは多分、こういった作業は初めてだと思いますけど、ネリの教え方は上手いので安心して下さい」

「いえ、お聞きしたいのは……この場所って最初に森に入った場所からかなり外れていますよね?」


 そう。先程だか、野営する場所をクレストさんが決めていたのを思い出し、質問してみたのだ。

 森の入口に比べると、この場所は石もゴツゴツとしていて水場も遠くなり少し不便だと感じたからだ。


「ああ、それはあそこが生き物の通り道だったので、もしまだ森に豚鬼(オーク)が残っていたら夜に遭遇してしまう可能性が高くなってしまいますから」


 あの入り口には豚鬼(オーク)の足跡や、幹に目印が刻んであったらしい、というクレストさんの説明を私は聞き入ってしまいました。

 野営一つとっても、ここまで頭を回さないと冒険者の等級を上げるどころか、途中の依頼で生命を落とすことになる。

 冒険者稼業とは、本当に奥が深いです。


 でも、このままカイトさんら四人組に感心しっぱなし、というのは負けず嫌いの私が納得しないので。


「私の実家のお店で開発中の保存食なので、味の感想を聞かせてくれると嬉しいです」


 親の力に頼る、というのが(しゃく)ではありますが、食事を用意するネリさんに今グレイ商会で開発中の保存食を使ってもらうことにしたのです。

 持ち出したのは、お父様には内緒でですが。


「うおっ!これ……甘くて美味くね?」

「ホント、甘くて美味しいわ……野営の時は固い干し肉と乾パンかじるか湯で戻すかくらいなのに」

「えっと、その……すごく、美味しいです」


 リアナさんの言う通り、一般的な保存食と言えばカラカラに乾かしたパンと干し肉くらいなのですが。

 お父様は、収穫してから数日しか保たない果物や野菜などを乾燥させる方法を思いついたようなのです。

 どうやらお父様が開発した保存食は、カイトさん達に大変好評だったようでした。


「ふいぃ……食べた食べた。それじゃ、あとは日が登るまで寝るだけだけど」


 食事を取り終わると、夜の見張りの順番を決める話し合いが始まりました。魔物との遭遇をなるだけ避けるためにクレストさんが選んだ場所ですが、それでも絶対ではありません。

 夜に寝ている時に不意を突かれれば、子供程度の戦力でしかない小鬼(ゴブリン)でも危険な相手に様変わりしますから。


「……見張りにはシェーラさんやディーンも参加してもらうけど、二人とも大丈夫か?」


 順番決めの前に、カイトさんが私と救出した金髪の少年のディーンを交互に見ながら、見張りが出来るのかを確認してきます。

 怪我しているかもしれないディーンはともかく、私に尋ねてきたのは、それはきっと「不慣れな私に見張りを任せてもよいのか?」という意図が含まれていたのかもしれません。


「もちろんです。こうした依頼は初めてではありますが、冒険者になったのですから、しっかりと皆さんをお守りさせて頂きますっ」

「僕も引き受けます。王都に帰還するまでは雑用でも何でも遠慮なく申し付けて下さいっ」

 

 ですから、私は少しだけ強い語気でカイトさんに言葉を返してしまいました。

 その反応に少し驚いた様子のカイトさんでしたが、すぐにいつも通りに笑って言葉を返してくれました。


「そ、そうか?……うん、それじゃシェーラさんとディーンにも見張りをお願いするよ」


 もし私が悪い意味で考えすぎただけで、カイトさんがただ集団(パーティー)に初めて参加したから確認をしただけなのかもしれません。

 そう思うと、カイトさんに申し訳なくなって思わず頭をぺこりと下げてしまいました。


 それに、ディーンが見張りを受けるなら丁度良い機会でもあります。私は、どうしても彼に対する疑念を捨て切れてはいなかったのです。

 それを確かめるには、この夜しかない、と。


 どうやら好都合なことに、順番決めの結果は比較的危険の少ない最初に私とディーンが。そしてクレストさんとリアナさん。最後にネリさんとカイトさんという順序になりました。

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