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24話 アズリア、国王より報酬を賜る

 それだけに周囲の(どよ)めきは止まらない。


 傭兵団はトールたち四人だけてはなく、また一緒についてきていた10名程度の傭兵だけでもない。本拠地に帰還して報酬を分配する以上、ホルハイム金貨1000枚、という報酬額は少なくない金額ではあるが。

 全員に分配されれば妥当な金額だろう。


 だからこそ。

 アタシ個人にアヴァロン金貨を10枚も渡す、というのはあまりに破格な金額の提示だ、と思う。


 ────だが。


「王様。その金額や気持ちは嬉しいんだけど、アタシは謹んで辞退させてもらうよ。アタシが欲しいのは金じゃないんだ」

「……なんと?爵位も褒賞金も欲しがらないとなれば、アズリア殿は儂に何を求めるつもりなのか?」


 アタシは王様のその問いにニヤリと笑って。


「……旧王都の地下遺跡に入る許可が欲しい」

「あ、アズリア殿、今、何と言ったか?」

「王様がこの国の王位に就く以前に、王妃様と行った偉業。確か……旧市街地の地下遺跡に封印されていた災厄の魔神の討伐、だっけ?その場所に行けば、アタシが探している魔術文字(ルーン)の手掛かりが何かしら見つかるかもしれないんだ……」


 その時アタシは普通の目である左眼を敢えて手で覆い隠して、魔術文字(ルーン)の宿る右眼を王様に見せて。

 魔力を流し込むと、眼の表面に「wunjo(ウニョー)」の魔術文字(ルーン)が浮かび上がる。


「アタシは、生まれながらに魔術文字(ルーン)……遥か以前に喪失した魔法を持っていたせいで、皆が普通に使っている一般魔法が使えない。だからアタシはせめて……世界を回って、歴史に埋もれた魔術文字(ルーン)を探してるんだ」

「その右眼に浮かぶのが……アズリア殿が言う、魔術文字(ルーン)というモノなのだな。ふむ……」


 アタシの右眼を見て、王様は腕を組み顎髭(あごひげ)を触りながら、何かを考え込むように唸り声を時折り漏らしていたが。


「まあ……あの遺跡にはもう魔神の魔力の残滓(カケラ)は残っていない筈だ……な?」

「ええ。あなたが持つ雷の魔剣(エッケザックス)で、魔神は跡形も無く消滅しましたから……まあ、あの時の雷撃で巻き込まれそうになったのは時効にしてあげますが」


 と片目を開けて、王妃へと確認を取る王様に。

 王妃様も、恨み節も含めて答えてくれた。


「よって、アズリア殿への危険もなかろう。我々も、もしアズまたままあリア殿が探し求めているモノの情報が遺跡にあるなら、それを調査してもらうのはやぶさかではない」

「……それじゃあ、遺跡に入る許可を?」

「ええ、アズリア様ならばいいでしょう」

「うむ。あとで儂が許可を出しておこう。アズリア殿の探し求めているモノが見つかるのを、儂も王妃も願っているまたぞ?」 

「ありがとうございますっ!」


 王様だけでなく、王妃様からの承諾も得れた。


 実はアタシ、世界中を旅して巡っていた時からホルハイム王の噂の数々は耳にする機会があり。その旧市街地に、魔術文字(ルーン)の情報があるかもしれないと密かに目星をつけていたのだった。


 だが、問題はどう侵入するか、だった。

 そりゃ、戦争が終結した後のゴタゴタした状況ならば、噂の旧市街地とやらが兵士らに厳重に警備されていたとしても、目を盗んで潜入するのは難しいことではないだろうが。

 もし噂にあった魔神とやらが、アタシが侵入した事で目覚めたりしたら、どれだけの甚大な被害がこの国(ホルハイム)に出るのか……想像に難くない。


 アタシは何も、世界やそこに暮らす人々を敵に回したり犠牲にしてまでも魔術文字(ルーン)を探し求めよう、と思う大層な御題目など持ち合わせてはいない。

 だからこそ、今まで訪れた場所にも魔術文字(ルーン)の手掛かりがありそうな場所は幾つか存在していた。

 シルバニア王国の王宮図書館。

 アル・ラブーンの王家の墓、など。

 だが、その全ては一介の旅人であるアタシには到底入れるものでも、簡単に許可が貰えるものでもなかった。


 だからこそ。

 目星をつけた場所への許可を王様から貰えたのはアタシにとって何よりの「報酬」だった。


 だが、三つの報酬を貰い終えたはずなのに。

 謁見が終わり立ち上がったアタシを見る王様の視線と表情は、まだ何かを言いたそうな感情を乗せていたのだ。

 

「さて、アズリア殿よ。お主が望んだ三つの報酬は今ここで約束した通り、全て我々は提供するわけだが……」


 王様が懐から何かを取り出すと、その「何か」をアタシに差し出してきたのだ。


「え?王様、コイツは一体……?」

「そうであるな、確かに我々はお主から要求を受けた三つの報酬については先程も申したように了承した。だが……これは儂が個人的にアズリア殿に授けるものだと思ってくれ」

 

 その何かとは……黄金で造られたこの国(ホルハイム)の紋章を模った勲章、のような装飾品だった。


「それは儂や王妃、息子ロシェットとアズリア殿、お主との個人的な友好の証だ。国を救ってくれた英雄としてもだが……儂の愛する妃と息子を救ってくれた恩人として。それ(・・)を受け取って貰いたいのだ」


 そこまで言われて断る道理などアタシにはない。

 差し出された勲章をアタシは受け取ると、王様と王妃様が見ている前で、纏っていた外套(マント)に装着して見せていく。


「これで儂とアズリア殿は友人、というわけだ。これからもよろしくお願いするぞ、新しい友人よ」

「ああ、こちらこそよろしくな、王様っ」


 王様から勲章の次に差し出されたのは、掌を開いた右腕であった。

 その右手をアタシは利き腕である右手でしっかりと握り返していったのだった。

事前連絡無しにタイトルを勝手に変更してしまい、もしかしたら混乱した読者の方もいたかと思いましたので、本当に申し訳ありませんでした。

ですが、やはりああいった今風のタイトルは、この作品には合わないんだな……いうのが理解出来ました。

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