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71話 アズリア、最速の一撃を放つ

「……しまった⁉︎……武器が……ッ」

「よく凌いだが、ここまでだな。そろそろ終わらせないと後が(つか)えてるのでな……死ね」

「ち、ちくしょうがっっ!……オービットぉ⁉︎」


 既にトールは身体中に負った刀傷から血を流し、膝を突いて動けなくなっていた。

 そんなトールとアタシを庇うように立ち回るオービットだったが、ロザーリオが振るう連続攻撃を幾度となく受け続けていた彼の連結刃(ガリアンソード)が……ついに砕け散った。


 完全に無防備になったオービットの胸板に、ロザーリオが水平に突き出した異国の曲刀の切っ先が吸い込まれるように突き刺さる。

 ……と、この場の誰もがそう思っていた。


「……邪魔をしないで貰えるかねぇ?アンタの番はまだ先なんだけどな」

「悪いけど、アタシの目の前で仲間(・・)()られるワケにゃいかないんでねぇ」


 覚悟を決めて目を瞑っていたオービットが、いつまでも想像していた感触がない事に(うっす)らと目を開けると、その視界を黒い塊が遮っていた。

 ロザーリオの曲刀は、オービットを庇うように振り下ろされたアタシの大剣で弾いていたからだ。

 

「ありがとな、アタシはもう大丈夫だ。オービット、それに……トール、アンタら二人が時間をくれたおかげさ」

「……遅えぞ、姉さん」

「よく頑張ってくれたね、あとは寝てていいよ」

「……流石に頑張りすぎたわ……後は……任せた……わ……」


 アタシが戦線に復帰を果たしたのを見届けると安堵したのか、トールは傷と血だらけになった身体を地に伏していく。

 すかさずオービットとエルが駆け寄り、首を縦に振ってまだ生きているとアタシに教えてくれた。

 

「……さて。仲間をやられたとか、罠に掛けたことを恨みがましく言うつもりはないよ。ここは戦場で……アタシらは戦争をしてるんだからね」


 不敵にコチラを嘲笑うロザーリオに、彼の曲刀を弾いた大剣を片手で肩に担いで向き直る。

 そして、もう片手で彼を指差しながらアタシは続けて言い放つ。


「まぁ、毒さえなけりゃアンタなんかただの雑魚と変わらないモンねぇ?」


 不遜な物言いに、今まで余裕を浮かべていたロザーリオは表情を崩しはしなかったが、明らかに苛立ちの色が見えてくる。


「……ほう、面白い事を言うねぇ。じゃあ今なら俺に勝てると、そう言っているように聞こえるんだが」

「ははっ、それ以外に聞こえたのなら謝るよ」


 今度こそ余裕だった笑みがロザーリオの顔から消えて、殺意を孕んだ真剣な表情でコチラを睨み返しながら。

 持っていた曲刀を離し地面に落とすと、腰に差して鞘に収まったままのもう一本の異国の曲刀を、腰を落として持ち手を握りながらアタシに鋭い視線を飛ばしてくる。


「……まさかコイツを抜くとは思わなかったよ。先程までのとは違い、この(カタナ)は本当の俺の愛用の得物だ……勿論、速さも威力も先程とは段違いだ。それでもまだ同じ冗談が言えたら褒めてやるよ」

「いや、それは無理だねぇ」

「それは最初から俺に敵わないと認めてくれている、と取ってもいいのかな?」

「……アンタはその剣を最後に死ぬ、って言ってるんだよ。死んだら冗談も聞けないだろ?」


 ロザーリオの殺意が膨れ上がる。


「……死ぬのは手前(テメェ)のほうだ、鴉」


 彼の身体が淡く輝き出す。

 トールもよく使用している強化魔法(エンチャント)を無詠唱で発動させているのだろう。

 

 だが、相手に憤慨しているのは彼だけではない。アタシも先程は「恨んではいない」と言ったが、仲間を傷つけられた事を怒っていないとは一言も口にしていない。

 アタシは肩に担いだ「lagu(ラーグ)」の魔術文字(ルーン)が刻まれたままの大剣を構え直す。


 一度深く息を吸い、吐いたロザーリオが鞘から曲刀(カタナ)を凄まじい速度で抜き放ち、その速度を保ったままの高速の剣閃がアタシに襲い掛かる。

 だが、(ラーグ)の魔力で軽量化された大剣を増強された膂力で振り下ろされた速度は、彼の剣閃を凌駕していた。

 高速の剣撃が交差した瞬間、大剣の刃がロザーリオの曲刀(カタナ)を握る手首を切断し、放たれた曲刀(カタナ)はあらぬ方向へと飛んでいく。


「……は?」


 刹那の瞬間、自分の手首と愛用の武器を失い、何が起きたかを理解することが出来ないロザーリオ。


「これで……終わりだね、ロザーリオ」


 アタシは手首を返して、振り下ろした大剣を今度は目の前で思考停止している相手の胴体目掛けて斬り上げていく。

 彼は最初の交戦で胴体鎧を両断し防具を失っていたために、防ぐモノのない大剣の刃は脇腹から肉に喰い込み、斜めに胸板を斬り裂いていった。

 そして口からも吐血し、糸が切れたようにその場に崩れ落ちていくロザーリオ。


「……う、嘘だろ。あ、赤の三将軍が……こんな女に、ふ、二人も敗けちまう……なん、て……す、すまねぇ……ジー……く、様……」


 それが彼の最後の言葉となった。

 無念そうな表情のまま目を見開いて、彼は一度ビクンと痙攣した後、そのまま動かなくなった。


今のうちに謝っておきます。

作者は話の流れに矛盾が生じない程度の設定の名称変更をちょくちょく行っております。

例えば、以前ロザーリオが持つカタナの説明で「ヤマト国」と出しましたが、この話で「ヤマタイ国」に名称を変更し、以前の名称も修正していたりします。

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