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46話 アズリア傭兵団、現在の戦況を知る

今話は結構説明が多く入ります。

 イリアスから()た現在の戦況を聞くのなら、アタシとエルだけではなく傭兵団の全員に聞いておいて欲しいので。

 雨を凌ぐにもさすがに荷台に全員は入りきらないので、昼食の用意に火を焚いた即席の石かまどを中心に何枚か屋根布(タープ)を張り、雨を遮る場所を作って皆んなに集まってもらった。

 

「悪いね、待たせちまったみたいで」

「いや……まさか君たちが帝国でも名の知れたエッケザックス傭兵団なのも驚いたけど……貴女が帝国で賞金の掛かった漆黒の鴉(デア・クレーエ)だったとは……さすがに驚きだよ」


 どうやら場所を準備している間に、イリアスは誰かからアタシ達の説明を受けていたようだ。


「あ、あまりその名前で呼ばないでくれないかねぇ……その呼び名はさ、勝手につけられたから好きじゃないんだ」


 そんな彼から目を逸らすと、アタシに見える位置でトールやフレアがニヤニヤと笑いが吹き出しそうになるのを堪えている。

 何を彼に話したのかは知らないが、戦が終わったらあの二人に仕返しをしてやるとしよう。


「わかったよ────それじゃ、あらためて帝国がホルハイムの北から国境を越えて砦と二つの街を陥落させて王都アウルムを包囲している。ここまでは説明はいらないよね?」


 イリアスの帝国軍が戦争開始からの動向が語られるが、そこまで説明されたことはここにいる全員が理解しているようで無言で首を縦に振る。

 実はと言うとアタシは全く戦況を理解してなかったが、説明に水を差す訳にはいかないと思い、連中と同じように頷いておく。


「そこまでが戦争が始まってから30日。そして帝国軍は王都を包囲したまま、別動隊を北以外の三方へ進軍させて西の港、東の国境、そして南の大都市ラクレールを制圧して後方の憂いを断ち王都制圧に集中する手筈だったんだ」

「そのラクレールで俺たち傭兵団は帝国軍に大敗して敗走してたところを、姉さんに拾われて再起出来たんだよな」

「多分それは……『帝国の赤薔薇』グレンガルド公直属の『紅の三将軍』の一人、ロゼリア・フランベルジェ将軍の指揮だろう。彼女は若干16歳で将軍位に昇り詰めた炎魔法と指揮の天才だったはずだ」

「道理で……退却する場所退却する場所に伏兵仕掛けやがって……天才だか何だか知らねぇが、その女将軍はきっと性格悪いに違いねぇ!」


 どうやらトールら傭兵団を蹴散らしてラクレールを占拠したのは、帝国でも高名な女将軍だったらしい。


「でだイリアス、現状は理解したよ。でもアタシが知りたいのは帝国が切り札を切らないと王都を陥落出来ない理由だよ?……今までの説明を聞いてるとさ、ホルハイムが圧倒的に不利な状況は覆せないと思うんだよねぇ……」

「それはホルハイムの王が君たち傭兵団の名前の由来にもなってる伝説の魔剣を所持してるからだよ」


 名前って……そうか、エッケザックス。

 確か、雷を操る魔剣じゃなかったっけ。

 それに伝説の魔剣と言えば、アタシはスカイア山脈を越える前に砂漠の国(アル・ラブーン)での魔族との戦いの最中に、太陽王(ソルダ)が構えていた剣もそうだった筈だ。

 確か……太陽の魔剣クラウソナス。


「あ、あれって物語の中だけのモノじゃなかったのかよ?」

「……実在したのか、エッケザックスが」

「で、でもぉ……ホントに伝説通りの力を持ってる剣を王様が持ってるなら、帝国軍なんか敵じゃないんじゃないの?」


 まさか自分らの傭兵団の名前にと伝説から取った、その魔剣が実在しているという事実に盛り上がるトールら傭兵団の面々。

 その騒めく様子を意に介することもなく、イリアスは説明を続ける。


「……それに王妃のティアーネは妖精族(エルフ)で高度な精霊魔法を数多く使い熟すと噂されている。何しろ王と王妃の二人は元々、その強さにより各地で勇名を轟かせた冒険者だったからな」


 そういや妖精族(エルフ)と言えば……山で出会った妖精族(エルフ)のリュゼは今も何処かの戦場で帝国軍と戦ってるのだろうか。

 もしくは、妖精族(エルフ)繋がりで王都でそのティアーネという王妃様と一緒に戦っているのかもしれない。彼女の怪力と鎖の付いた鉤爪(クロー)、そして土魔法はきっと心強い戦力になるだろう。


「……帝国は周囲に喧嘩を売り続けていたから敵が多いんだ。いくら港と東の国境を封鎖したからってコルチェスターと東部七国連合(イースト・セブン)の援軍をいつまでも足止め出来るわけじゃない……帝国は時間との勝負なんだよ」

「……ねぇアズリア、コルチェスターって?」

「あ、エルは知らないか。西側に広がるニンブルグ海の向こうにある国だよ……アタシもまだ行った事はないんだけどね」

「ホルハイムとコルチェスターは同盟国でね。いくら港を帝国軍で押さえても、向こうの海軍が到着すれば余程の兵数を割かない限りあっという間に蹴散らされるだろうね」


 そりゃそうか。港に集結するコルチェスター海軍は全勢力、対する帝国はその兵力を港の防衛に割くわけにはいかない。しかも帝国は海へ出港する手段を有していないハズだ。

 となれば海軍が圧倒的優勢で勝利するだろう。


「東も同じようなモノさ。結局のところ帝国軍は電撃的に戦力を整えていないホルハイムを蹂躙して、抵抗勢力がまとまって攻勢に出る前に王と王妃を討ち取り、王都を陥落させて勝ち逃げしようとしているんだ」

「じゃあ……俺たちの抵抗は一矢を報いる、なんてモノじゃなく、もしかしたら帝国に勝てる好機(チャンス)がまだ残ってるんだな?」


 トールの問いかけに、イリアスは力強く頷いてその問いに応える。

 そんな二人の肩を抱いてアタシは二人の顔を交互に見ながら言った。ちなみにトールの顔が引きつってるのはアタシが首に回した腕の力の込めようが少々強めだった(・・・・・・・)からだろう。


「まずはラクレールを帝国の奴らから奪還する……色々と積もる展開はそれから考えればいいのさ。そうだろ、トール?イリアス?」

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