45話 アズリアら、男に素性を問う
前の話でイリオンにしてましたがイリアスに変更しました。
さすがにあまりにも突拍子もない男の告白に、エルは勿論のこと、アタシも今聞いた話の内容に頭が追い付いていってない。
「……ちょ、ちょっと待ってよイリアス。超巨大って一体どのくらいの大きさなんだい?アタシが見たことのある鉄巨人っていったら精々が平屋程度の大きさだったけど……」
鉄巨人。
普通の魔術師ならば無理だろうが、世界には鉄を始めとして色々な物に生命を吹き込んで人間のように動かして、簡単な命令なら実行させることが出来る高度な魔術を行使出来る魔術師も確かに存在する。
そういった魔術師たちによって鉄から創造された偽りの生命体、それが鉄巨人だ。作成する過程に魔術師が強く関連することから古代遺跡の宝物庫の門番などで稀に発見される。
鉄で出来ているため動きは遅いが、その超重量を乗せて繰り出される拳は人間程度なら一撃で鎧の上からでも致命傷を受ける程の威力を誇る強敵だ。
……それが超巨大、だって?
「動いているところを見たことがないから、正確にどれ程大きいかは俺も正直わからない。だが……腕の部分だけで馬車の荷台を占めるくらいだ、と言ったらどうだろう」
────は?
男の告白にこの場が凍りつく。
その鉄巨人が人型であると仮定して、それが今アタシらが乗ってる荷台の大きさ程の腕なら。
平屋どころの話ではない。下手すると城壁どころか城くらいの大きさになるんじゃないのか?
「……帝国がそんな切り札を持っていたなんて……それじゃあたし達に勝ち目なんて全然ないじゃない……」
帝国が隠していた切り札の存在を知って目に見えるほどに青ざめ、意気消沈してしまうエル。
ようやく頭が回り始めてきて状況を飲み込んできたアタシは、落ち込んで顔を伏せるエルの頭を撫でながら。
「いや、そう決めつけるのは早いよエル。さっきイリアスが言っていただろう?その鉄巨人を動かすにはこの魔道具が必要なんだ」
「そうか!……ということはあたし達がこれを持っている限り……」
「そういうコトだよ。帝国はその切り札を使えない。もっとも……起動用の魔道具を預かる前にハッキリさせておかないといけないことがあるけどねぇ……」
アタシはそんな帝国の重大な内情をサラリと告白し、挙げ句にはそんな重要機密を戦争の最中に持ち逃げしておきながら処刑ではなく生け捕りの命令が出ていた、目の前の男の素性を明らかにしないといけない。
そんなアタシの視線を感じたのか、イリアスは首に掛けていた部隊章を外してアタシに手渡してくれた。
「俺は……イリアス・バイロン。今回ホルハイムに侵攻した帝国軍の総指揮官で大将軍、バイロン侯爵の三男だ。本来なら父親直属の部隊で本陣で護衛をするだけだったんだけどね……」
確かに……部隊章を確認すると、今話した通りの情報が記されていた。
「聞けば聞くだけ理解出来ないんだよねぇ……そんな立場にいる人間がだよ?何でわざわざ立場を全部投げ捨ててまで、しかも接戦ならまだわかるけど……こんな一方的な戦争で?」
「それはね、切り札を投入しないと帝国はきっと王都アウルムを、この国を陥せないからさ」
……ん?
トール達の話じゃホルハイム側は王国第二の規模の都市ラクレールまで帝国重装騎士を投入されて陥落し、後は王都アウルムを残すのみの帝国側が一方的に優勢な戦況だとアタシは認識していたが。
もしかしたらその認識が間違ってる?
「ねぇ……アタシは王都が包囲されてホルハイム側が絶対不利な状況だとしか知らないんだけど。イリアス、アンタが知ってる戦況を教えてはくれないかい?」
「頼まれなくても話すつもりだったよ。どうやら貴女たちは帝国に歯向かう勢力のようだし、帝国には今回のホルハイムで手酷く敗けてもらわないと俺が……帝国の民が困るんだ」
アタシは立ち上がって、掴みかかりそうな勢いでイリアスににじり寄って肩に手を置くと。
彼はアタシが肩に置いた手を握り締めながら、今まで溜め込んでいた想いを吐き出すような低い声で語り始める。
「帝国は大きくなりすぎた。俺はこれ以上軍備を拡大し続ける帝国が、もし今回の戦争でホルハイムを圧倒的に制してしまったらもう領土拡大の歯止めが効かなくなる」
「……だから身を挺して戦争に敗北させてでも国を守る、か。よほど帝国を愛してるんだねぇ」
「そりゃ、自分の生まれ育った場所だから……この事でもしかしたら俺は一生帝国の土を踏めなくなるかもしれないけどね……」
まあ……自分の生まれ育った国を捨てる人間もココにいるんだけどね。
頭を掻きながら、アタシ自身が多分これから一生持つことの出来ないであろう心情、それを秘めた男からアタシは無意識に目を逸らしてしまうのだった。




