44話 アズリアら、男が告げる真実に驚く
「……ん……あれ?……こ、ここは……」
寝息を立てて寝ているとはいえ、怪我や衰弱が見つかる懸念を考えてエルの乗っている荷台へと男を運び入れると、様子を見るためにラクレールへの移動を一時中断して少し早めの昼食の準備を始めていた。
その途中で、エルを介抱のために同席させて荷台に寝かせていた帝国兵の男が目を醒ます。
「あ、目を覚ましたわね。いいわよ、無理して身体起こさなくても。今ね、食事を用意してるから。
……アズリアーっ!この人目を覚ましたわよっ!」
「……アズ、リア?いや……君たちは一体?帝国軍の人間ではないようだけど……」
「わたし達はホルハイムの人間よ。あなたが帝国兵に囲まれてたのを助け出したのが、今呼んだアズリアよ」
男は最初すぐにでも起き上がり周囲をキョロキョロと警戒し落ち着かない様子だったが、エルの修道女の服装と、こちらが帝国軍ではないと知って逆に安心したようで。
「無事だったみたいで何よりだよ……いや、助け出したらいきなり目の前で倒れられた時にゃ焦ったけどねぇ」
男が素直に寝て待っていると、エルに呼ばれたアズリアが荷台に入ってきた。
外で作っていた干し肉のスープを持って。
「……貴女が私、いや俺を助けてくれたのは覚えているよ、凄まじい剣閃だったからね。まずは礼を言わせてくれ……助けてくれてありがとう」
「礼を言う前に、一体アンタが仲間の筈の帝国兵に攻撃されてたのか聞かせてもらうよ?……どうも連中、アンタを殺す気がなかったみたいだし何か事情があるんだろ」
「ああ……だけどその前にお願いがある」
男がそう言ってアタシが持っているスープと黒パンの入った器への視線と、男が腹の虫を盛大に鳴らすのはほぼ同時だった。
荷台の中に鳴り響く空腹を告げる音に、男は顔を紅潮させて黙り込んでしまう。
「あっははは!腹が減ってるなら先に食べるといいよ」
「……申し訳ない。実はもう3日以上帝国軍から逃げていてね、マトモな食事を口にしてないんだ……」
男は頭を下げると、目の前に置かれた簡素な食事に手を伸ばし黒パンを一気に頬張ると、それを干し肉のスープを口に含み用意した食事を勢いよく流し込んでいく。
その食いっぷりは本人が言ったように3日以上空腹でいた人間に相応しいものであった。
「ふぅ……久々に睡眠を取って、マトモな食事をして生き返った気分だよ。帝国兵から救ってくれた礼といい本当に助かったよ……俺の名はイリアスだ」
ようやくマトモに顔を見れるようになると、帝国の富裕層に多い銀髪に白い肌、顔も小さく鼻立ちも整った恵まれた容姿をした青年だった。
確かに……3日以上逃亡生活をしていた分の衰弱している様子を差し引いても、普通の兵士の顔つきではなく何処か裕福な家の生まれだった雰囲気が拭い切れてない。
「で、アタシらが聞きたいのはその次だ。イリアス、何でアンタは友軍の帝国兵から逃げる必要があったんだい?戦争中だ……一般兵が軍規違反をすれば殺されて当然なのに、アンタは何故か生け捕りしようとしてた」
「……随分と帝国軍の事情に詳しいんだね」
「まあね、これでもアタシは元帝国の人間、しかも士官学校の卒業生なんでね」
アタシが帝国出身と聞いて、エルは驚きの声を横であげていた。
そう言えばエルにゃアタシの過去を話したことなかったねぇ……いや、トールを始めとした傭兵団の連中はアタシの過去をある程度知ってるから、エルにも話した気になっていたよ……悪いね、エル。
「……アタシ達にゃ話せない事なのかい?」
少し黙り込んで目を瞑り何か悩んだ素振りを見せた後、アタシとエルを交互に見て口を開くイリオン。
「いや、寧ろ……この戦況でなお抵抗を続けている
君たちにこそ託すべきなのだろうな……これを見てくれ」
と。懐から布に包まった何かを取り出してアタシらの前にゴトリ、と置いてみせる。
男がその布を開けていくと、中身は腕ほどの大きさの黒く輝く多角錐の石のようなモノだった。
だが……肌にピリピリと刺すように感じる魔力の強さと密度が明らかに目の前のモノが普通の魔導具などではないことを示していた。
「……ね、ねえ、アズリア……何、コレ?わたし、魔力で吐きそうになるの初めてかもしれない……」
「……安心しなよエル。アタシも油断したら魔力酔いするだろうからさ……」
こんな魔力を直に浴び続けてイリアスは平気なのか?と思っていると、先程まで多角錐のモノを包んでいた布で再び覆うと。
先程まで感じていた濃厚な魔力が嘘のように消え去り、息苦しさが消えてアタシとエルはここぞとばかりに深く息を吐き出していた。
「……な、何なんだい?今のモノは……」
「コレは俺たち帝国軍が王都アウルムを陥落させるために帝国から運び込んだ魔導兵器、超巨大な鉄巨人ガルガンチュアの核となるモノだ」
総合PVが3万を超えました。
それだけの回数、アズリアと仲間たちの活躍を読んで貰えることに本当に感謝です。
ありがたや、ありがたや。




