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34話 アズリア傭兵団、夜に焚き火を囲み先達は語る

夜のパートはこれが最後になります。

最後はエルとトール視点です。

「ねぇ、疑問があるのだけど……聞いてもいい?」


 二組に分かれて、エクレールに駐留する帝国軍にちょっかいをかけている最中。

 残った修道女(シスター)のエルや団長のトール、その他の傭兵らは野営場所が見張りに見つからないように注意しながら待機しておくことになった。

 焚き火を囲みながら、おもむろに腰掛けていたエルが口を開く。


「あたし達の村を救ってくれた時もなんだけど……アズリアもあなた達も、帝国軍を全滅させるように動いてるように見えるんだけど」

「ほう、よく見てるな修道女(シスター)の嬢ちゃん。ように、じゃなくまさに全滅させるのが俺たちの目的だからな」

「これは戦争なのは理解している、だから別に修道女(シスター)っていう立場で言うつもりはないけど……全滅させる手間を考えたら、捕虜とか、逃すって選択はないのかな、って疑問に思ったのよ」


 エルの疑問に対して、同じく焚き火を囲み腰を下ろしていたトールがその問いに答える。

 確かに普通の野戦や砦の攻防戦なら、エルの言うように全ての敵を一々全滅させるような事はしない。そんなことをしても何も利点はないからだ。

 

「意外に冷静なんだな嬢ちゃん。修道女(シスター)だから『全滅だなんて酷い』なんて言い出すんじゃないかと思ってたぜ」

「あたしの教会(ところ)には戦争で親を失った子供もいるから、今更そんなこと言うつもりはないわよ……もし同じ台詞を言うなら神様に言うわね」

「わっははは、(ちげ)えねぇ」


 トールはきっとまだエルの幼い外見から、子供をあやすような態度を無意識の内に取っていたのだろう。

 だが、アズリアがやろうとしている事を断片的ながら見えている観察力といい、感情的にならずに冷静に現状を見る様子、さらには修道女(シスター)でありながら自分が仕える神を話のタネにする態度などを目の当たりにして。

 トールは笑いと一緒にそんなエルへの偏見を振り払うのだった。


「……でだ、エル(・・)。何で俺たちがそんな手間のかかる事をしてるのか。理由は二つある」

「……あれ? ……トール? 今、あたしのこと名前で呼んだ?」

「なんだ? 今まで通り『嬢ちゃん』って呼んで欲しいのか?」


 トールの態度の豹変に、自分が質問をしている側だというのも忘れ。

 子供扱いする呼び名に戻すというトールの意地悪な提案に、首をブンブンと力強く横に振って否定していく。


「あー……コホン。で、その二つの理由だが、まず一つは逃した兵士連中はその後どうすると思う?」

「え? 普通に……どこか帝国軍がいる場所まで移動するんじゃないの?」

「そう。それで仲間と合流されると村や街が奪い返されたという情報が伝わってしまい、そこから増援が来たり、最悪その仲間が占領している場所や奪い返した場所が略奪や殺戮などの報復を受ける可能性があるんだ」

「じゃあ……もしアズリアが村の帝国軍を一人でも逃してたら……」

「今頃、近隣の村やあの村が帝国軍に報復されてたかもしれないってコトだ」

「それをアズリアは意図した上で?」

「……あまり語りたがらない話だろうが、以前俺たち傭兵団は逃した兵のせいで村一つを燃やされた経験をしている……もう同じ事を繰り返したくないんだろうな、姉さんは」


 意図していなかったアズリアと傭兵団の過去を聞かされ、押し黙ってしまうエル。

 初めて村で彼女(アズリア)と遭った時に感じた表面の脳天気な明るさの中に、何か形容し難い心の闇を感じたのだが。

 その一端を知れたような気がしたからだった。


「……それでもう一つの理由は、捕虜にしたところで兵士には身代金は出ない。ラクレールや王都(アウルム)みたいな大規模な都市ならまだしも、村や小さな街じゃ30人や50人なんて大勢の捕虜を確保する場所はないし。下手に兵士を一集めにしたら暴動を起こされかねない。それに……」

「ま、まだ問題点があるの?」

「ああ、もちろん。もし帝国兵に殺害された家族がいたとして、村や街は味方だらけだ。そんな状況で家族を殺された人間がどういう行動に出るか……想像出来るだろう?」

「……全滅させる、って聞いて最初は何も考えずに倒してただけだと思ってたけど……トール達傭兵団がここまで考えての作戦だったのね」

「……しっ! ……誰か近づいてくる……っ」


 今まで弛緩した空気で会話をしていた雰囲気を一変させて口を閉ざし、周囲を警戒し始めるトール。

 突然の雰囲気の変貌ぶりに口を閉じると、確かにザッ、ザッと雑草を踏みしめこちらへと接近してくる足音が聞こえてくる。


「……大丈夫、俺だ」

「なんだ……オービットかよ、何で足音立てて近寄ってくるんだよお前が。靴の魔力使えよ……」

「残念ながら潜入と脱出で魔力切れだ」


 どうやらエルは、話している会話の内容は理解出来なかったが、近寄ってきた人物が仲間であるオービットだったとわかって安堵の溜め息を一息吐いて、肩を撫で下ろしていた。


「……ほらぁ?アズリア、あんたは何人倒したのよ? ……ちなみにこのフレア様は魔法二発で20人倒したんだけど?」

「だーかーらっ! 何度も言ってるだろ! アタシは5人だって! ……大体、今回アタシは攻撃役じゃないんだからアンタに倒した数負けて当然だろ? ……ったく、張り合わなくていいトコで張り合ってくるんだよなぁ……いつも」

「……(なーん)ですってぇ?」


 接近する二つの人影と話し声が聞こえてくるものの、オービットの時のように緊張感は生まれない。

 会話の内容から誰が近づいてきたのかが誰もが一瞬で理解したからだ。


「……おかえりなさいっ。フレア、アズリアっ」


 エルが二人を迎える第一声が倒した兵士の数を競い合う二人に掛けられると、ようやく言い争いを止めて野営場所(こちら)に小走りで駆け寄ってくるのであった。

……実はまだキャラ設定として決めきれていない点が一つあって。

修道女(シスター)エルの実年齢をどうしようか?


・外見年齢と同じく幼い実年齢にする

・実は発育不良なだけで実際は16〜20歳程度

・何らかの呪いや魔術文字(ルーン)の効果で実際はアズリアより遥かに歳上

・幼く見える種族だった


とまあ、色々と案はあるのですが。

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