表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/1757

5話 アズリア、未知の武器に心躍らせる

 やがて空から現れたのは飛竜(ワイバーン)よりかなり小型な飛蛇(サーペント)だった。

 それも一匹や二匹ではなく、計五匹ほど。


 早速こちらを見つけて急降下して襲い掛かってくる飛蛇(サーペント)の牙を、明け方まで降り続いた雨でぬかるんだ地面に足を取られながら何とか避けていくのだが……

 飛蛇(サーペント)の攻撃はむしろ毒などない牙攻撃より接近した後の太い尻尾のほうが怖いのだ。


「きゃああああああっっ⁉︎」

「……ルーナっ!」


 ギリギリ牙攻撃を躱したルーナの腹部に飛蛇(サーペント)の尻尾が直撃こそ免れたものの、その尻尾が身体に巻き付き、そのままスルスルと胴体部分にまで巻き付かれ拘束されていた。

 そのルーナに飛蛇(サーペント)の牙がゆっくりと迫る。毒がないとはいえ、飛蛇(サーペント)の噛む力は肉を噛みちぎる程度はある。

 ルーナも短剣(ダガー)を何度も飛蛇(サーペント)の胴体に突き刺して拘束から逃れようとしているが、決定打を与えるには至っていないようだった。

 さすがに放置は出来ない。

 アタシはルーナに絡み付いた尻尾を掴んで力任せに引き剥がしてから、大剣を頭に突き刺してトドメを刺す。


「尻尾に打たれた腹は平気かい、ルーナっ」

「はぁ、はぁ……危なかったあ……助かったわアズリアさんっ」


 サイラスはというと、飛んできた飛蛇(サーペント)の牙に合わせて長槍(ロングスピア)による打突を放つと、その槍先が喉を貫通し蛇を絶命させる。


「こちらはこの通り大丈夫だ!アズリア殿はルーナのサポートをお願いする!」


 だが、飛んできた勢いで絶命したものだから、槍に喉から貫通した胴体がまるで串焼きのように刺さってしまった。

 この戦闘中に飛蛇(サーペント)の身体を槍から抜くのは早々に諦め、槍を放棄し腰の剣を構え直すが、空を飛ぶ敵に間合いの狭い剣では苦戦しそうだ。


 さて、本番はリュゼの立ち振舞いだ。

 一体あの武器をどう使って戦うのか?


「喰らいつけッ鉤爪(クロー)ッッ‼︎」


 まだ急降下しこちらに下りずに空を飛び交う飛蛇(サーペント)に向けて、振り回していた鎖の先に接続された鉤爪(クロー)を遠心力を利用し勢い良く投擲していく。

 鉤爪(クロー)を直撃させるのではなく、飛蛇(サーペント)の胴体に鎖が絡み付くように投擲されたそれ(・・)は見事狙い通りに絡み付き、鉤爪(クロー)が引っかかって鎖が容易に解けないようになると。


「捕まえたらこちらのモノね……ほら、降りてくるのよ……抵抗しても無駄だからねッッ!」


 鎖を握った右腕一本で、鎖で絡め取られながらなおも空を飛ぶ飛蛇(サーペント)を空中から地上へと引き寄せ、地上へと叩き落としていくリュゼ。

 地面に叩きつけられ弱った飛蛇(サーペント)の胴体に左手の剣を突き刺し、やがて飛蛇(サーペント)は動かなくなる。


「……まずは一匹……あと二匹ね」


 事切れた飛蛇(サーペント)の胴体から鉤爪(クロー)を外して鎖を再び振り回しながら、何か詠唱のような言葉を呟いていると。


「────岩の鎚(ロックハンマー)っ!」


 詠唱を解き放つと同時に、空に人間大の岩の塊が作成されて飛蛇(サーペント)へ向けて飛んでいく。

 その岩塊がまともに直撃した飛蛇(サーペント)が地上に落下し、その様子を見ていたためにリュゼから注意が逸れた最後の一匹に再び鉤爪(クロー)が巻き付けられ。

 その飛蛇(サーペント)もリュゼの右腕との力比べに敗北し、地上へと引き摺り落とされていった。

 地上に落ちた二匹の飛蛇(サーペント)は、サイラスの剣とルーナの短剣(ダガー)で息の根を止められていた。


 現れた飛蛇(サーペント)を全て倒したのを上空を確認してから一旦休憩を入れるアタシたち四人。

 ……ちなみに残りの一匹の飛蛇(サーペント)はというと、アタシに噛み付いて急降下してきた時に斬り伏せておいた。


「……ヒュウ♩魔法まで使えるなんてやるねぇリュゼ。しかもあの武器、リュゼの力と合わせて使われたら意外ととんでもない性能なのかもしれないねぇ……」


 目の前であの未知の武器の使い方を見れて、期待通り……いやそれ以上の結果を目の当たりに出来たアタシは思わずリュゼの戦い振りに感嘆の口笛を洩らしてしまう。

 あの未知の武器。そしてリュゼの技術に。

 たとえ最初に投擲される鉤爪(クロー)を避けても、鎖に絡め取られてしまえばリュゼとの力比べに持ち込まれ、身動きを封じられたまま不利な体勢で接近戦を余儀無くされてしまう。

 確かに普通の二刀使いとは違い、右手と左手に違う武器の技術を必要とする熟練の難しい武器だが、遠近両方に対応出来る厄介な武器だとアタシは思えた。


 アタシがリュゼの武器を一通り考察していた間、リュゼは、飛蛇(サーペント)に一撃を受けたルーナの様子を気にして、攻撃を受けた腹を触り傷の具合を確認しながら治癒魔法を発動してルーナの傷を癒していた。

 ルーナはしきりに平気だと言ってはいるが、リュゼが魔法を使ってまで治癒している以上は、もしかしたら予想以上に深手なのかもしれない。

 横で肩で息をしているサイラスにルーナの二人、そして飛蛇(サーペント)三匹を相手にしておきながら息を切らせずにルーナの治療を続けるリュゼに声を掛ける。


「大丈夫ですか二人とも、特にルーナは飛蛇(サーペント)の尻尾をまともに食らっていたようですけど……」

「あは、だ、大丈夫ですよリュゼ様。探索に影響するほどの傷じゃないですから」

「……リュゼ、その治癒魔法はもう少し時間が掛かるのかい?」

「……そうですねアズリア。もう少しだけ治療に時間をいただけたら……何か急ぐ理由でも?」


 妙な気配を感じ取ったアタシは、その気配がする上空をもう一度見ながら、


「……どうやらこの騒ぎを聞きつけた連中がいたみたいだ。また空から何か来るよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者のモチベーションに繋がるので。

続きが気になる人はこの作品への

☆評価や ブクマ登録を 是非よろしくお願いします。

皆様の応援の積み重ねが欲しいのです。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ