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その後(神罰の日から5年後)

帝国に神罰が下されてから5年が過ぎていた。 この5年の間に色々な事が起きていて、なかなかに濃厚な日々だった

中でも筆頭とも言える出来事は、バートリー伯爵家令嬢アリーナが ケンジを婿として迎えた事だろう。 ケンジは料理人として日々研鑽を重ね、空間魔法も鍛え上げ 収納能力は低いものの、亜空間倉庫を使えるようになったのだ。 これにより亜空間倉庫内の食品の賞味期限は無くなり、南方の海辺から魚の買い付けをしたりと伯爵家に大いに貢献、異世界人だという事もあってバートリー家当主ラジウスが本気で囲い込んだのだった

当のアリーナもケンジの作る料理に胃袋を掴まれ、ケンジを取り込むための政略結婚と思われたが 本人はそう思っていなかった。 

ケンジとしても、破棄されたとはいえ第二王子の婚約者に選ばれる程のアリーナの美貌と聡明さに感銘を受けており、この話が出た時 二つ返事で結婚を了承していた


2人の結婚式はひっそりと行われ、身内親戚 付き合いの深い貴族家が招待され、3日間かけて執り行われた。 そんな結婚式の最中、アリーナの専属護衛であるミラは 凛々しい執事服でありながら、美しく成長したその姿に、招待された貴族家の令嬢が群がるという珍事まで発生していた


その結婚式の3日目、俺は祝いの品(魔牛の牛乳、コカトリスの卵、それらを使った加工品)を持って 顔を出しに来た


「よう、結婚おめでとう。 これで伯爵家は益々発展するな」

「トーヤさん ありがとうございます、来てくださってうれしいですわ。 まぁこの結婚で一番喜んだのはお母様なんですけどね」

「トーヤさんありがとうございます、 トーヤさんのおかげで路頭に迷わずに済み こんな綺麗な奥さんを持つことが出来ました」


アリーナとケンジが並んで挨拶をしている、アリーナは怒ると過激な所もあるが 仲が良さそうなので大丈夫だろう


「ミラはどうなんだ?旦那にふさわしい男と出会えたのか?」

「ないですね、私は平民ですし護衛として働いてる内は縁は無いと思ってます。 衰えて護衛が務まらなくなった時に考えますよ」


ミラもこの5年ですっかり所作が貴族然としてきた、聞けば他の貴族家から側室の誘いは何件か来ているとか… まぁ全て断ったそうだが 


バートリー家の跡継ぎはアリーナの弟になるのだけど、アリーナが婿を取った事でこの家に残る事になり 領都グリモアはアルカイト王国で随一の【味の都】と呼ばれるようになる。 ケンジのレシピは領内の料理人に限り公開されており、小さな食堂に至るまでおいしいと評判だ


たった5年でバートリー伯爵領は 王都を超える繁栄を見せている。 王家の方も早くからケンジの評判を気にしており、その身柄を獲得しようと影から動いていたが ケンジが出歩く時にはほとんど必ずアリーナが付き添い、おまけに護衛のミラまでついてきてたので 迂闊に手を出す事が出来ないまま結婚してしまった状態だ


結婚祝賀パーティもそろそろ終わりに近づいてくる、ケンジの作る料理を食べながら 顔馴染みのある侍女達とも話をし、そろそろ帰ろうかと動き出す


「それじゃあ今日はこれで帰るよ、祝いの品はこのマジックバッグに入れてあるから納めてくれ」

「マジックバッグですか?マジですか… おおう、俺の収納よりも容量多いし!」

「それも含めて祝いの品だ、有効に使ってくれよ」

「ありがとうございます!」


「ではトーヤさん、私はこのままこの家で暮らすので いつでも遊びに来てくださいませ」

「ああ、そうさせてもらうよ」


アリーナとケンジに挨拶を済ませる。 そしてミラに声をかける


「まぁなんだ、この仕事を紹介した俺が言うのもなんだけど、 自分の幸せを我儘に追いかけてもアリーナは文句言わないと思うぞ? 少しは旦那探しにも力を入れたらどうだ?」

「んー、やっぱりそんな気になる男性とは出会えませんし なるようになるんじゃないかと」

「そうか、 んじゃーあと5年して未婚だったなら 俺がもらってやるか。まぁ知っての通り、俺には他にも嫁はいるんだけどな ミラがそれでよければ家に来い、歓迎してやるよ」

「っ! それを聞いてしまったら意地でも未婚を通しますよ。 トーヤさんは私の初恋ですから、それが叶うのなら5年くらいなんともないですね!」


なにやら目を潤ませて俺を見つめている、 まぁ以前から俺に好意を持ってくれているのは気づいていたが、人間ではない俺と一緒になるのは大問題だと思って気づかないふりをしていた… けどまぁ、俺にもゆとりが出てきたというか ミラの老いと死を見届けてやるくらいの覚悟は持てたのかもしれない


嫁にもらってやるなんて偉そうだが、実際立場で言うなら偉いのは間違いないので 本人がそれで了承するならきっと問題は無いだろう

ミラの頭を軽く撫でてやると、ニコニコして身を委ねてくる。 背後から女性の声で『ミラ様に触れるとは、あの男性は一体?』 などと聞こえてくるけど気にしない。 ミラに男性が寄ってこない理由は大体これなんだろうな、女性のファンが多すぎだ…


パーティ会場を出る前にラジウスとセリーナ、筆頭執事のカルバニーに声をかけてから伯爵家を出る。 ケンジは思った通り悪い奴ではなく、『食は宝』の精神で邁進してるので今後も心配いらないだろう。 ホームシックには何度かなっていたようだが、アリーナがうまくフォローしていたようだし 今後もしていくのだろう



後日談だが、【神罰の日】の後の帝国民は、頑健な防壁を誇る帝都に集まり 今回の大問題、創造神アイシスの怒りを買った愚か者である皇帝陛下を始め、直近の貴族達を糾弾し 加護を失っていない冒険者を引き連れて城を制圧し、公開処刑にしていた。 帝都にいた獣人達は全員姿を消し、労働力を失った帝国民は自力で農作業などを進めるが一向に効率は上がらず、衰退の一途を辿っている


アルカイト王国との国境線には、王国軍が陣を張っており 創造神アイシスに見捨てられた民を受け入れられないと入国を頑なに拒否しており、ゆるやかに滅びへの道を歩んでいる


一方で 魔の森付近に町を作った獣人達に縋る者も現れるが、すでに協力体制を整えているドルス公爵家が壁となり、共存の道を選ぶのならば これまでの隷属関係に対し謝罪し、個人の力や技術をもって貢献するように説き まとめ上げる事に成功していた


獣人の町のリーダーは 相変わらずガッシュがやっており、帝国国土にいた獣人が集まったため敷地が足りなくなり、ドルス公爵家の提案によって人間種の手と知恵を使い町を拡大していく。 すでにその規模は帝都を上回るほどの発展を見せていた


ドルス侯爵家は現在も公爵を名乗っており、前当主のアギスは幽閉先から出した後処刑、当代の当主だった嫡男クロードも廃嫡し、ドルス家を追放処分。 現在は長女であるグラスが当主となり獣人達との協力関係を築いていった


ドルス領に住む領民や商人は、獣人達との共存で安定した生活が壊れる事を恐れ、帝都や南方に噂が流れないよう徹底し、人間の流入を防ぐ事に力を入れ 領内の治安向上に努める事を重視した



余談だが、アルカイト王国の東に位置するアマンダ連合国から、帝国を打ち滅ぼすべし との声が上がり出陣しようとしていたが、連合国軍が帝国に向かうための通り道にバートリー伯爵領があったため、ラジウスが連合国軍の入国を断固拒否、それを王が受け入れたため不要な戦争は回避されていた


ドルス家の女侯爵グラス、旧帝国の北部を支配しつつ 知らない間に戦争が回避された報告を受け、微笑みながら配下の者に言ったのだった 


「私の運も そんなに悪くは無いようね」


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