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いよいよその日がやって来た。 帝都の中心部にある皇城 そこから少し離れた場所に建てられた宮殿に 儀式魔法の魔法陣が描かれ、 まもなく召喚魔法が発動する…といったところだ
魔方陣の描かれた場所には 多くの魔法使いが準備を進め、 今か今かと待ち構えている。 反抗された時に使う予定の隷属の魔導具も用意されている
別の部屋では皇帝陛下も待機している。 召喚された者の人となりを自分の目で見て確認するためだった
「準備は整ったのか？」
簡素な部屋に不釣合いな豪華な椅子に座る皇帝が ドアの前で待機している騎士に声をかけた
「はっ もう間もなく…と魔法師団長が言っておられました」
「そうか…ドルス公爵家の方はどうなっておる、領内の獣人奴隷をかき集めているという情報の後 何も入ってきていないのか」
「ドルス公爵領は帝国内において北の果てであります、移動だけで時間がかかってしまうので もう少しお待ちいただければ…と」
「うむ、仕方ないの。 では準備を急ぎつつ万全な体制で臨むよう師団長に伝えろ」
「ははっ」
兵が言葉を伝えるために出て行った
「ふっふっふ 強大な加護を持つ異世界人を手駒にして、辺境に押し込められていた領地を拡大させ 元々は帝国の領土だったこの大陸の全てを支配する日は 儂の代で達成できそうだな。 後は召喚されてくる者がどのような加護を与えられているか…楽しみだのぅ どのような者が来ても隷属して道具にするのだから、使い勝手の良い加護であれば言う事は無いな。 若い女であれば手籠めにするのも一興かのぅ」
『トーヤ様、聞こえますでしょうか？』
『お、アイシスか？ どうした？』
『召喚陣の魔力が高まっています、後1時間もすれば発動するものと思われます』
『そうか、了解した。 召喚が完了した直後に神託を出すんだよな？』
『はい その通りです。この世界にいるすべての生物が耳にすることが出来る言葉です』
『わかった、俺は神託の直後に行動を開始するよ。 何かあったら連絡してくれ、俺もそうするから』
『承知しました』
後1時間か、こっちも行動開始だな。 手狭になるが 搬送用の籠に15人無理矢理乗ってもらって、隠蔽かけながら多くの奴隷がいる倉庫の近くで待機して、 神託が降りた直後に獣人達の隠蔽を解除 俺は召喚された異世界人を保護しに行く。 俺が偵察して調べた獣人奴隷の大まかな居場所を地図に書き ミューに渡してある
「後1時間だそうだ、狭いだろうがこれに乗り込んでくれ。 後の作業は作戦通りにやってくれ、 問題が起きたときは臨機応変に対処 なるべく帝国人を殺さないようにうまくやってくれ」
「わかりました」
隠蔽をかけたまま移動し 目当ての倉庫の上空に到着。 このまま時間まで待機だ
まずはこの倉庫を制圧し、帝国人を外に放り出して籠城。 5人残して防衛に回り 10人が帝都を駆け回って各自解放して回る
隷属の魔導具を 強制的に解除する魔導具をアイシスと共に作り、15人全員に持たせてあるので 獣人奴隷を見つけ次第即解除…という流れで進める予定だ
隷属の魔導具さえなければ、たとえ弱っていたとしても逃げるくらいなら捕まらずにできるだろう。 多少希望的観測が含まさっているが…
それに、突然の神託 その内容が帝国人を罰するものだから、驚きや今後の恐怖で対応は後手になるだろう その隙をついて一気にやってしまおうってわけだ
それで俺は…どうするかな。 皇帝とやらを1発殴ってやってもいいし、関わった魔法使い達も蹴り飛ばしたい。 召喚されてくる異世界人のフォローもしなくちゃいけないしな… 多分これが一番大変な作業だと思われる
突然召喚されたと思えば その場で大立ち回りが始まり、あげくに帰ることは出来ないって言われれば ショックがでかくてまともな思考が出来なくなるだろう。 落ち着くまで話も満足にできないだろうし…ああ憂鬱だ
異世界転移に多少の理解がある者だといいのにな。 召喚されてくる者がいた元の世界の文明レベルがどれほどかわからないし、 この世界に悪影響を及ぼす可能性もある。 こればっかりは実際に会うまでわからないだろう
後は、実際に事が起こった後 加護を剥奪された帝国人を 他国がどう扱ってくるのか、『創造神に見捨てられた国』というのを大義名分に掲げて侵攻してくるかもしれないし、逆に国土に入らせないように遠ざけるかもしれない… この辺については アイシスにとっては関知しないとの事で、攻めようが遠ざけようが アイシス自身は何もしないとの事だ。 そうなれば 俺が勝手にあれこれやるわけにもいかないだろう
まぁ優先すべきは異世界人の保護と獣人奴隷の解放だ。 神託の内容に 理由のない隷属はダメ絶対！ というのを含めてもらう話はついているので、帝都以外の町では解放もスムーズにいくだろう
さて…そろそろかな
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