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テラスのベンチに座って待っていると、侍女軍団が現れ 座っているベンチの前にテーブルを設置し、お茶の用意がなされた。 侍女たちの顔色は悪いが、所作に関してはさすが公爵家…という感じだった
せっかくなので出されたお茶をいただき、今のうちにアイシスと細かい打ち合わせをしておこう。念話するのも久々かもしれないな
『アイシス、聞こえるかい?』
『はい、聞こえております。 何かあったでしょうか?』
『あー、帝国の召喚魔法の進捗はどんな感じかなと思ってね』
『現時点では魔方陣の許容量のおよそ7割ほど魔力が蓄積されています。 その魔方陣に対し、10個の発動体の設置が完了してますので 発動体が魔方陣に浸透して 召喚魔法が発動するのに最短で10日ほど… といったところでしょうか。 発動体を設置してる以上 最短10日で必ず魔方陣が稼働します』
『ほほぅ、ありがとう。 それよりも早くなりそうだったら教えてね』
『承知いたしました』
早くて10日か、誤差があったとしても1日か2かくらいなんだろうな。 地脈の力を吸い上げるなんて 誰が言い出したのかは知らんけど、獣人奴隷といい異世界召喚といい どこまでも他人の力で戦争しようとするなんて下種にもほどがあるよな
第二王子に魅了魔法かけたのもそうだけど やり方が汚すぎて呆れてしまう。 俺がのんびり暮らすために 帝国は止めなきゃいけない。 帝国人が帝国軍人だけで、それに相応に理由があって戦争するってんなら
必要以上に関わろうとしなかったと思うけど、 獣人奴隷を最前線に出し、地脈の…アイシスの力を無断で使用し、挙句の果てには異世界の人間を武器にしようとするなんて最低だよな
流れとはいえアイシスの上司になってしまったからには これは止めないと俺の平穏はないよな
どちらにせよ、今回の事で儀式召喚の魔方陣は多分アイシスに破壊されると思うし、 大々的に神罰が下れば 今後それは口伝されて、アホな事する奴はいなくなるだろう…多分
最終的には 帝国は創造神アイシスに見捨てられた国として周辺国からは相手にされなくなり 破綻するだろう。 もし、ドルス公爵家が自領の獣人奴隷を解放し 帝国全土の奴隷解放に動くというなら、帝国の民たちを導く新たな王として任せるのもいいかもしれない
アイシスが行う神罰、詳しくは聞いていないけど 与えている加護を剥奪するというのは聞いてるから 公爵家が俺の都合の良い決断をしてくれるなら 加護は残してもらう事にしよう
加護を剥奪されれば 今後一切魔法を使う事はできなくなり、 魔力による身体強化に頼り切っている騎士や戦士は 重たい武器や鎧を装備して動く事も満足に出来なくなるし、魔法職の者は当然何もできなくなるので 王国が制裁を理由に攻め込んだら 数日で滅ぶだろう
おっと、テラスの入り口の方が慌しくなってきたな。 公爵が着いたのかな?
騎士が20人くらいゾロゾロと入ってきて俺の周囲を囲うように配置された
「待たせたようだな、 我が城に無断で侵入し 当主である儂を呼び出すとは無礼の極み。 お前の返答如何で相応の罰を与えねばなるまい」
あーこりゃダメなやつだな、 これならまだ息子や娘の方がマシだったか。 まぁそういう事なら俺も遠慮なくいかせてもらおうかな
一応アイシスのメンツがある事だし、イクシードの魔力を解放して 天使版の姿にしようか。 恥ずかしいけど
俺は立ち上がって魔力を解放し、隠していた翼を顕現させる。 真っ白な翼を背負った俺の姿に 囲んでいた騎士や、公爵までもが唖然とした顔で固まる
「俺に向かって無礼とはすごいな。 俺はこれでも創造神アイシスの上司になるんだが…お前は俺よりも立場があるというんだな? いやぁすごいすごい」
「あ…え?」
「さきほどグラスに言ってあったが、公爵家の今後の対応によって慈悲を与えると伝えていたんだが 公爵家には必要ないと見える。 よって、帝国と共に滅ぶといい」
「ま、待ってください!」
グラスが駆け寄ってきたが もう無理だろ。 無視して話を続けるか
「最短で10日後、 創造神アイシスにより全ての帝国人に神罰が下る。 まぁそれだけの事を帝国がやらかしたって事なんだけどな、 クロードやグラスを見た限り 慈悲を与え、滅びゆく運命にある帝国民をまとめさせる役割を…と思っていたが、まさか俺に向かって武器を構え、あげくに無礼とかね…もう話にならないよな」
そう言うと、囲んでいた騎士は慌てて武装解除していたけど もう手遅れだよね
「帝国内の貴族の中では ずいぶんまともだと思っていたけど、気のせいだったようだな。 残りの人生を 己の浅はかさを悔やみながら過ごすんだな。 どこに逃げようが神罰を逃れる方法は無いから まぁ好きにするといい」
「お待ちください!どうかご再考を。 兄と私がそのお役目を必ず勤め上げて見せますので!」
「ホントお前はしつこいよな、貴族として 公爵家の当主が口にしたことを反故にするな。というか、今更そんな事言ったってすでに手遅れだろう。 それじゃあ俺はもう行くな この地も恨みを持った獣人達に攻め込まれるだろう、せいぜい頑張ってくれ」
そう言い残して自宅に向けて飛び立った
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