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「いや、帝都には帰らない。 元々我が家は 陛下や取り巻きの貴族に疎まれているからな、もし本当に神罰があるのなら 救うべくは我が領民だ。 1年の猶予があるのなら 急いで対応策を練った方が得策だろう、どうだ?グラス」
落ち着いたらしいクロードが話し出す、 まぁ確かに 皇帝以下のボンクラどもを構うより、地盤を守る方が建設的だ
「そうですね、食料の備蓄に 魔法が使えなくなるんでしたら魔の森に近い土地の防衛線も考えなければいけません」
「1年ではろくな準備はできないか…」
おーい、自領の心配もいいけど 現状を忘れてないか? まぁいいか、帝国に帰ってくれるなら面倒が減って言う事はない
「俺から言いたいのはそれだけだ、 まぁさっさと帰った方が良いと思うぞ。 どっちにしても帝国貴族はおそらく全員神罰の対象だろうから、自分の心配しないとな」
「その情報はどこからなのか聞いてもいいか?」
「ん? 創造神アイシス本人からだよ、 ま、信じられないだろうけどな」
「なぜアイシス様が其方に教える必要があるんだ? 教会の関係者なのか?」
「さーね、創造神アイシスに見捨てられる帝国貴族に教える事は もう無いから、自分で考えるんだな」
「見捨て…られる…だと」
「長居するつもりは最初からなかったし、戻るかガッシュ」
「はい! それじゃあ帝国の貴族様、今後一切関わらないようお願いしますね。 もちろん俺達だけじゃなく、世界中の獣人に…だからな」
「丁寧に喋ってたんだから 最後までやれよ」
「あはは つい本音が」
ガッシュと共に屋敷を出た
「さて、 本来の予定なら 1年もしないうちに行動開始って所だけど、 情報を与えたから少しばかり早まるかもしれないな。 そのつもりで準備しておいてくれ」
「わかりました、早まるのはむしろ歓迎ですよ。 早く同胞を救ってやりたいですからね」
「それじゃあ宿を引き上げるようにしてくれ、 今後は俺の家で修行だ」
「え? 俺の家…って あの中心部のですか?」
「ああそうだ。 何、大丈夫だ 家増やしたから20人来ても平気だぞ!」
「え、えええ…」
「ほら、早く仲間たちに伝達しろ。 俺は1回グリモアに行ってくるから、夕刻までに準備は済ませといてくれ」
「わかりました」
ガッシュと別れグリモアに向かう。 しばらく来れないとミラに伝えて、砂糖などの売り物を先に置いておこうと思ったからだ。 ルインズにも行かないとな…最近行ってなかったからジールとかうるさそうだし
「ちょっとしばらく来れなくなるから、 一応教えとこうと思ってな」
「え?そうなんですか? しばらくってどれくらいでしょう」
ちょうどミラがすぐに捕まったので話しかける、 どうやら自主的に訓練してたようで 執事服ではなく、自前の革鎧を着ていた
「1年かからないくらいだな、ちょっと帝国を荒らしてくるわ」
「荒らすって…何するつもりなんですか」
「まぁちょっとな、 だから伯爵家の面々にも伝えといてくれ、 帝国に近づくなと」
「はぁ、 会っていかないんですか? アリーナ様 きっと怒りますよ?」
「別にあのお嬢さんが怒ったって俺は困らんけどな」
「いや、あの水晶で毎日連絡が来ますよ 多分」
「あー それはあり得るな、 でもまぁ これからルインズにも行こうと思ってるから時間が無いんだよ。 夕刻までにクリモに行って、獣人20人連れて俺の家に行くからな」
「そうですか、 でも時間があれば来てくださいね」
「ああ、 それじゃあまたな」
それからルインズに行き、ジールにも1年程度来れなくなる旨を伝え、クッキーを置いてきた。 暗くなったら 以前作って 拉致したリーナとその護衛を運ぶのに使った籠で 中心部まで獣人を運ぶ予定だ。
とはいえ、さすがに1回で20人も乗せられないので 2回に分けなきゃいけないだろう。 1回自宅へ戻り 受け入れ態勢を整えてくるか
魔の森の中心部で、真っ暗闇の中待つのはきっと怖いだろう。 古い方の家と倉庫に使ってた建物に、寝泊りできるよう用意する
日が暮れる前にクリモに着き、牙狼の宿へ向かった
「準備は出来たか?」
「はい、出来ています。 宿にも今日で全員出る事は伝えてあります」
「そっか、じゃあ日が暮れたら動き出そうか。 門が閉まる前に町からは出ておこう」
ぞろぞろと20人の獣人を引き連れ、門の外に出る。 門から少し離れた所で火を焚き 明かりを確保する
「半分ずつ運ぶから、分かれておいてくれ」
「あの、トーヤさん 聞いても良いですか?」
ミューが声をかけてきた、そういえばミューに会うのも久々かもな
「なんかあったか?」
「トーヤさんの家に向かうってガッシュから聞いていますが、そこで何をするんですか?」
他の獣人達も気になっていたらしく、全員が俺の方を向いている
「俺の家は、というより 魔の森の中心部は漂う魔力がすごく濃いのは知ってるよな? そんな場所で訓練すると、体にも魔力が浸透していって 魔法が使えなくても身体強化レベルの事が身につくんだよ。 もちろん魔の森から離れたら どんどん失っていくけどな」
「ほほー! つまり、今以上の強化が見込めるって事ですね?」
「ああそうだ、 これから帝国に行くまでの間 じっくり浸透させて、自身の強化された体を使いこなすための訓練をさせようと思っている」
どうやら納得してもらえたようだ。 やはり獣人奴隷の解放には こいつらが帝国軍人に負けないようにしてやらないとな
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