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「大変お待たせしました、 どうしても貴方とお話がしたくて何度も使者を送った無礼をお許しください」
お?妹の方が1人で入って来たぞ? 女なら殴られないと思っているのか? 俺は男女平等賛成派だから、女だからと差別しないで顔面殴るけど?
「それで?責任者 公爵家の嫡男とやらはどこだ?」
「はい、食堂にてお待ちしています。 こちらへどうぞ」
妹の方、グラスといったか 後をついて食堂に向かう
「ガッシュ、前に来た時 食事はどうだったんだ?」
「あー 味わうような雰囲気じゃなかったので覚えてないですね」
「そうか、とりあえずせっかくだ 食べてみるとするか。 もし毒が入ってたとしても俺が解毒してやるから安心していいからな」
「わかりました! トーヤさんがいると思うと安心できるんでいいですね」
ガッシュは機嫌が良さそうだ。 まぁ帝国嫌いは獣人達の共通する案件だからな、 これで帝国貴族が関わって来なくなると思うとうれしいのだろう
わざわざ聞こえるように毒の話をしていると、 食堂にすぐ到着した。 屋敷とはいえ、貴族が住む城のような屋敷とは違うので 言うほど広くはなかった
グラスに案内され食堂に入る、 置かれたテーブルの一番奥に公爵家の嫡男クロードが座り その背後に2人の冒険者風の男が立っていた。 ふふん、護衛のつもりかねぇ。 この公爵家のしつこさにガッシュはほとほと疲れ切っていたので、 今日はガツンと脅しを入れておかないといけないからな。 相手が貴族だから 半端にやると逆恨みしてきそうだからがっつりとやっておかないとな
かなり乱暴な口調になるが、そこはしょうがないだろう。 俺は貴族でも何でもないからな
食堂にいた侍女に椅子を引かれ、 ガッシュと共に座ると 向かい側の席に座ったグラスが口を開いた
「今日はわざわざおいで下さりありがとうございます。 迎えに上がった者から 非常に機嫌が悪いと聞いています、 どうしてもお話を伺いたかったのでしつこくなってしまい その事については謝罪させてください」
「いやいや 何を言ってるんだ? あんたら帝国人が常日頃から獣人達に対しどんなことを行っているか、それを考えれば 獣人にどれだけ嫌われてるかわかるだろ? 心の底から嫌われてるんだぞ? どこまで空気読めないんだよ」
俺の喧嘩腰な物言いに、後ろに控えていた男達の顔色が変わる
「黙って聞いていれば無礼だぞ! この方々はカインズ帝国ドルス公爵家の嫡男と公女様だぞ!」
「だからなんだ? あんたらが偉そうに出来るのは帝国内で、帝国の民に対してくらいだぞ? 他所の国に来てまで何を寝言言ってるんだ? それともなんだ、 今のは俺に対する宣戦布告か? 受けてやるぞ?10万でも100万でも好きなだけ兵を用意しても構わないぞ」
「なんだと?」
護衛の男が腰に手をやり剣を抜いた
「よし、抜いたな? じゃあその宣戦布告、受けようじゃないか」
俺は席を立ち その男に向かって歩き出す
「ちょ、ちょっと待って」
グラスがなんか言い出したので 聞こえな振りしてダッシュ、 うっかり殺してしまわないように手加減して剣を抜いた男を蹴り飛ばす
やさしく蹴ったつもりだが、蹴った場所は鳩尾なので 悶絶した表情のまま気絶していた
「ほら、どうすんだ? 仲間がやられたぞ? あんたら貴族の常識だと、何もしてないのに突然攻撃してきたって事になるんだろ? なんでも自分の都合の良いように改変するのが帝国貴族の一般的な常識なんだろ?」
「お待ちください! 剣を向けた部下の非礼はお詫びします、 なので一度落ち着いてください」
「部下の非礼も何も、上に立っている者がそういう教育してるからこうなってるんだろ? 部下だけの責任で終わる話じゃないんだよ」
「くっ…」
「ほらどうすんだ? もう戦争は始まってるんだ、 俺がこのまま公爵家の嫡男とやらの首を落とせば 俺の勝ちって事になるが、抵抗しないのか?」
そう言いながらクロードの首を掴み持ち上げる
「ぐぅ!」
「待ってくれ!」
「待ってくれ?なんだそれは 俺に命令しようってのか?」
もう1人の護衛が剣を床に置き膝をつく
「待って…ください、 我ら護衛の者がクロード様に無許可で勝手に行った所業 我らの責任でありクロード様は関係ありません」
「いやいや、本人の目の前で起こった事で 本当に関係ないんだったら途中で止めるだろう。 止もしないで成り行き任せな態度を見せていたのに関係ないなんて通用する訳ないだろ。 本当に無許可でやった事だったとしても 監督不行き届きってやつだな」
「お待ちください、弁明の機会を与えて欲しいのです。 お兄様を離していただけませんか?」
「ん?別に離すのはいいぞ? 離した所で結果は変わらないからな」
ポイっとクロードを投げ捨ててやる、 そしてガッシュの横まで歩いて行き、こっそり話しかける
「ガッシュ、やり過ぎただろうか」
「いえいえ、いい気味ですよ。 あの蹴りも随分と手加減してたみたいだし、やり過ぎなんて事はないですね」
「そ、そうか…」
なんて こそこそと話し合っていると、咳込んでいたクロードが復活したようだ
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