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クリモから来た伝令は、 今日は王都で宿を取り、しっかり休み 明日出発すると言って出て行った
諜報部隊の5人は、拠点から立ち去るために 荷物、道具などの片付けをしていた
「足が付かないようなら不要な物は置いて行って構わないぞ。 帝国製品だけは必ず持ち出すようにすればいい」
片付けを済ませ、大きめの革袋を背負い門から出た
「では、くれぐれも気を付けるようにな。 無理な戦闘はせず 逃げに徹しろ、何が何でも帝国に辿り着くように」
「承知した。 あんたらも気を付けてな」
伝令役を勝ち取った男は、小走りで去っていった
「俺達もルインズに向かおう、周囲の警戒は怠らないように」
「「おう!」」
こうして帝国の諜報部隊は王都を去ったのであった。 ちなみに王都の諜報部隊は、帝国の部隊の尻尾も掴む事すら出来ていなく 今日も捜索を続けていた…
半年後、クリモで活動中だった帝国の素材収拾部隊が いつの間にか撤退していた。 全く構っていなかったので いつ出て行ったのかは不明だが、3~4日前までは組合に買い取りに出しに来ていたらしい。 ガッシュが言ってた
「って事は、必要な物は揃った…と見ていいんだろうな」
「そうかもしれないですね」
今日は引っ張りまくってた公爵家での食事会だ。 俺がスルー決め込んでたらガッシュの所にしつこく現れていたという。 全く…
アイシスが予想していた儀式魔法の召喚術、その執行日まで1年を切っているので そろそろ本気で用意を始めないと 誤差が生じた場合に対処が遅れちゃうから その打ち合わせも兼ねてクリモに来ていた
ドルス公爵家との食事会をさっさと終わらせて打ち合わせをしたいところだ
ガッシュと2人で迎えが来るまで『牙狼の宿』で待機中だ。 もう夕刻になっているので食堂は混んでいるため 部屋で待つ事にしていた
「ところでガッシュ、修行の方はどのくらい進んだんだ? そろそろ俺の家まで遊びに来れるくらいか?」
「ちょっと待ってくださいよ、 中心部の難易度は半端ないんですよ? 前回辿り着けたのは帝国で最上級の冒険者がたくさんいたからであって、 しかも全滅してたし…」
「あはは、まぁそう易々と人が来れないようにってあの場所を選んだからな、 ほいほいと来客があったら引っ越してるわ」
「畑とか荒らされないんですか? 前見たとき、普通に実ってましたよね」
「アイシスが常時いるからな、魔物達も恐れて近づかないんだよ」
「はぁ…そういえばそうでしたね」
なんかガッシュが遠い目をしている、 まぁこの大陸で最も危険な場所と言われているのに安全地帯化してるからな
「ガッシュさーん お客さんだよー」
「お、来たようだな それじゃ行くか。 あんま関わるなってビシっと言ってやるとするか」
「お願いしますよー、 本当しつこくて」
部屋を出て入り口に行くと、いつも来ているらしい冒険者風の男が待っていた
「ようやく願いが叶いました、 こちらの馬車にどうぞ」
「どこまでもしつこくて、他人の迷惑も顧みないゴミのような貴族には罰を与えてやらなきゃいけないからな。 今日限りで公爵家を潰してやるから覚悟しろよ」
「え? そ、それはどういう…」
「あ? お前達がやって来たことを思い出してみろ。 ガッシュは一体何回断わってたと思ってるんだ?ふざけんなよ」
「…」
威圧を込めて睨んでやると黙ってしまった
「よし、ガッシュ 行くぞ」
「はい! お供します!」
これは事前に話し合っていた作戦だ。 獣人側は 帝国貴族と関わる事は とにかく嫌だとの事、まぁ当然だよな。 今回の食事会にかこつけて 今後関わってこないよう脅しを入れようって魂胆だった
馬車に同乗していた冒険者風の男は、宿から公爵が住んでいる屋敷までの10分ほどの時間 青い顔をしたまま一度も喋らなかった
馬車が到着し、冒険者風の男が到着を知らせてくると言って先に屋敷へ入っていった。 俺達は御者の男に連れられて応接間のような部屋に案内された
「ク、クロード様 失礼いたします」
「うむ、連れてきたんだな? それでどうした、血相を変えて」
「はい、 何やらトーヤ殿が非常に機嫌が悪く 今日は公爵家を潰すために招待に応じてやった…と話してまして」
「なんだと? 一体何が気に入らなかったというのだ」
「関わるなと言っていたのにも関わらず、何度もガッシュ殿の元へ伺っていたことと、何度も断っているのにしつこく来ていた事… そこまでは聞きました」
「むぅ… もしあの男が暴れ出した場合、お前達で止められそうか?」
「ガッシュ殿が1人だった場合なら、こちらが全員で対処すれば…トーヤ殿に至っては実力は未知数ですのでなんとも」
「お兄様、怒らせてはいけません。 あのガッシュという男が完全に従っているのです、その力はガッシュ以上であると思われます」
「ならばどうする? あの男を引き込んで…と言っていたのはグラスだぞ?」
「まずは私が前面に出て話をします。 前回会った印象から 安易に女性に手を挙げるようには見えなかったので、 そこをついて落ち着いてもらいましょう。 あまり待たせてはまずいので行きましょうか」
帝国ドルス公爵家との食事会が始まる
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