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氷の厚さは30mくらいもあった、海水がこれだけ凍るって事は 気温マイナス5~60度は軽くあるだろう。地球の北極でも流氷の厚さが30mなんてないもんな、たしか厚い物で20mとかだったはず
水深30mそこそこでも、上を見上げれば分厚い氷なのですでに真っ暗だ。 方角は分かっているのでスイスイと泳ぎ出す すると、なだらかにせり上がっている岩盤が見えた。 このまま掘ったとしても、いつまでも無呼吸でいる訳にもいかないので とりあえず空気を吸いに真上の氷を魔法で削り、氷面から顔を出して一呼吸。呼吸を整えて、掘ってきた氷道を戻っていき 岩盤と向かい合う
確か水晶は二酸化ケイ素だったか、 鉱物の部類で 長い時間圧縮されて出来上がる物だった記憶があるから、ある程度は奥の方に掘り進まないと良質な物は手に入らないだろう。 空気穴を先に作り、良い感じの水晶が出るまで頑張ろう
そんな感じで2日ほど籠っていた。 手元にはピンク系の物とクリアな物、大きい物でバレーボールサイズの物が10個ほど手に入れた
「ピンク色のはローズなんとかって言ったっけ。 昔なんか買わされた記憶があるな… とりあえずこんなもんで一度帰ろう」
さすがに冷たい海水に浸かりすぎたのか、 体の動きが鈍いと言うか 体が硬くなった感じがする。 こんなところで身動きが取れなくなったら大変なので、早々に見切りをつけ帰宅を考えた
自分で掘って来た道を戻り海面から飛び出し、冷え切った体を温めたいので 急いで自宅に向かうのだった
「なんだ、また来たのか。 全くご苦労なこって」
「そう思うのなら招待を受けて下さいよ。 あなたが受けてくれるまで『行って来い』と指示されるんです」
「あーもう、俺1人でいいなら受けてやるよ。 それでいいか確認してくれ 疲れて帰ってきて、毎回こんな話するのはもう疲れたよ」
「承知しました。もし来られるならいつ頃がよろしいです?」
「俺の休暇は3日に1回、明日が休みだからそれ以降は3日おきに休んでいるよ」
「それでは そのように伝えてきます。 明日 また来ますので」
そう言って使者が帰っていった
「ふぅ 全くしつこいな」
牙狼の宿の食堂のテーブルに突っ伏したガッシュ。 ここ数日、毎日のように夕刻に現れては招待の話をする。 まさに今、根負けしたところだった
「何をやりたいのか知らないが、本当に貴族ってのは面倒臭いな。 断られてんだからさっさと諦めろっての」
突っ伏してぐったりしたまま愚痴をこぼす。 ただでさえ貴族の相手は面倒だというのに、それでいて更に帝国の貴族というのだからやってられない
「はぁ…早くトーヤさん来ないかな。 トーヤさんなら相手が貴族だろうとビシッと言ってくれるんだろうし…はぁ」
疲れ切った体を起こし、食堂を後にした
「ただいま戻りました」
「うむ、それで成果は?」
「はい、ガッシュ殿が1人で…というなら可能との事でした」
「そうか、まぁこの際仕方がないか。 それで日程の調整はどうだ?」
「明日が休みで、それ以降は3日おきに休みを取っているそうです。 休みの日ならば…との事でした」
「うむ、さすがに今日の明日ってのは問題だろうから 4日後にしよう。 その旨伝えてきてくれ」
「承知しました。 ガッシュ殿には明日伺うと伝えてありますので」
「わかった、下がってくれ」
「はっ」
「そうですか、あのトーヤという者はいないのですね 私としては あの男が本命だと思ってたんですが」
「そうは言っても仕方あるまい、 最初からいつ来るかは不明だと言っていたからな。 とりあえず4日後に会う事にしたからグラスもそのつもりでいてくれ」
「わかりましたお兄様。 以前言っていた帝国の事について、なんとか聞き出してみましょう」
「それにしても軍部の連中、准将は宿から全く出ないで酒ばかり飲んでいるとか ここまで役に立たない男に准将などという役職を与えるとは、帝都の腐敗はひどい事になっているようだな」
「征服欲しかないような愚王ですから、宰相あたりに いいように操られているんじゃないですか」
「全く愚かな事だ、 亡命も本気で考えねばいけなくなるとはな…」
ドルス家の兄妹も なんだか疲れ切っているようだった
自宅に戻ってきた。 水晶の原石をアイシスに見せると、 その中から4個を選定し 加工してくれるとの事。 なので、 アイシスの任せて俺は休む事にした。 さすがに3日も海水に浸かりっぱなしだったからな、 暖かい風呂に入って暖を取ろう
「っはー 湯船に浸かって飲む冷えた牛乳、 うまい!」
今更だが 果物を絞ってフルーツ牛乳を作るのもいいな、というか 作っておけば良かったな。 自作の浴槽の中で足を伸ばし、すっかりだらけきった姿勢でいると このまま寝てしまおうかという誘惑に駆られる
水晶の魔導具は、そのまんま『伝達水晶』と言うらしく 4個頼んだのはガッシュの所とミラの所に置こうと思っているからだ。 2個で1対なので、2か所に置こうとすれば4個必要になるのだ
残りの水晶…どうしようかな
湯船に浸かりながらまったりと考えていた
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