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「それじゃあちょっと2人を2~3日借りてくな、 今日の飯代はこれで払ってくれ」
残った獣人メンバー達に声をかけて金貨1枚渡しておく。 この食堂の値段なら 全員分払っても十分足りる
そこへ2人がやってきた
「お待たせしました」
「よし、それじゃ1回町の外へ出よう」
3人で町から出て もう日が暮れているので隠蔽は必要ないな。 2人を小脇に抱えて飛び立った
「よし、じゃあちょっと小さいけどこの小屋で今晩は休んでくれ。 明日は夜明けとともに出るからな」
自宅の敷地に降り立ち、余りにも真っ暗だったので光の玉を数個打ち出し 街灯代わりにする。 まぁ来客とかまるで考えていなかったから、俺の小屋とアイシスの小屋しかないんだけど… 今日は俺の小屋で休んでもらう。 自分の寝床を整えるための練習に使った魔物の革で作った布団があるのでそれで寝てもらおう
「ああ、あっちの小屋はアイシスが仕事をしているから入らないようにな」
「え? アイシスって…創造神様ですか?」
「ああそうだ、帝国が大地の力を使って悪さをしているから 大地の調整と帝国の監視をしてるはずだ」
「な、なるほど…近寄らないようにします」
小屋の中に案内して魔物の革を2組渡す、 男女で同じ部屋だけど まぁ何も起こらないで寝てくれるだろ
空がうっすらと明るくなってきた頃 朝食を用意してやった。 朝からハンバーグだけど獣人なら大丈夫だろう… うん、心配する必要はなかったな 2人ともガツガツ食べたから
食べ終わり、隠蔽かけてサクっとルインズまで移動し いつものテーブル席でミラが来るのを待った。ルインズは獣人があまりいないのでチラチラとこちらを見る奴が何人かいたが、特に絡んでくる様子はなかった
「ルインズは始めて来たけど、割と活気があるんですね。 駆け出し冒険者の町って印象がありましたが」
「南の森ではなんだかんだ狩れるからな、この町は肉の供給が多いから 安く食べられるんだよ」
「なるほど、確かに肉はいいですな」
おっとミラが入ってきた。 やはり組合に入ると最初にこの席を確認してるみたいで、 あっさりと目が合った
「トーヤさんおはよう! えっと…こちらの方達は?」
「ミラを鍛えるために連れてきたんだ、今日はこいつらと稽古してもらう」
「ええ? あの、ミラです よろしくお願いします」
「俺はガッシュだ、よろしくな」
「ミューよ、よろしくね」
「よし、それじゃあ森に行くか」
森に入る少し手前で足を止めた
「よーし じゃあ今日はガッシュとミューに オラオラで攻めてもらうから、ミラはビビらないように対処しろ。 ビビって動けないのが一番ダメだからな」
「オラオラって…?」
ミラがすでにビビりだしている
「そりゃーもう 威圧的にだよ、大丈夫だ ミラが本気で攻めてもガッシュの方が強いから安心してやれ」
「うえええ」
「んじゃガッシュ 威圧的によろしくな。 ミラもそれなりには動けるから油断はしないように」
「わかりました」
「ミューは技術的な方向で見てやってくれ、 動きに変な所があったら教えてやってな」
「はい」
「ミラ、さっさと諦めて構えろ。 はっきりいってこれは自衛のために必要な事だからな」
「わかったよぅ」
うん、諦めたようだ
休憩を挟みつつ、日が暮れるまで対人稽古。さすがにミラもへとへとのようだ。 まぁでも 初日で結構慣れたようだ。 ガッシュが多少吠えたくらいじゃビクつかなくなってきた
そしてミラとミューが随分と仲良くなったようだ 体捌きがどうの重心がどうのって今も歩きながら喋っている。 うん 良い事だ
「ガッシュお疲れ、 町に戻ったら飲もうか」
ガッシュは見た目は確かに迫力のある奴だが、女の子相手にオラオラと訓練していたことにぐったりしたようだ。 普段はリーダーだけあって面倒見の良い奴だからな、女の子相手に威圧するなんて今まで経験なかったんだろう、少々落ち込み気味だった
町に戻り、蓄えてあった狼の素材を買い取りに出し 4人で食堂に向かった
「ミラはエール1杯だけな、2杯目で潰れるからな」
「大丈夫、さすがにあんな恥ずかしい真似はもうしないよ」
「ホントかねぇ」
適度に飲み食いし、今日はミラと同じ宿屋に泊まる事にした
翌日の午前中も同じように訓練して、午後からは森に入っていった。 中層まで行って猪や狼を狩り、俺では教えてやれなかった魔物の解体を ガッシュに細かく指導してもらった。 やはりこういう事は経験の差が大きく出るところだろう、 俺は解体がへたくそだからな!
日が暮れる前にルインズの町まで帰ってきて、いつもの食堂で夕食にする
「さて、 まぁ2日しかやってないけど ガッシュ相手にビビらなくなったから、アリーナの護衛は十分務まると思うけどどうする?」
「うん、ミラは小柄な体躯を生かした動きがちゃんとできてるし そこらの冒険者と1対1なら十分負けないと思う」
ガッシュもミラの戦闘能力を褒めている
「うーん… でも貴族様の護衛ってやっぱり委縮しちゃうかな」
「ま、それはミラが決める事だ」
「トーヤさんはアリーナ様の師匠でもあるんだよね? アリーナ様の護衛になったからって会えなくなるわけじゃないんだよね?」
「まぁアリーナには違う事を教えているんだけどな、もっとこう…美容に良い健康的な鍛え方をね」
「うーん、 もう少し考えてみるよ」
今日も宿に泊まる事にした