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カインズ帝国ドルス公爵領北部、 永久凍土に覆われた氷の大地を視認できるほどの土地に帝国最北端の町がある。 冬はとてつもなく寒いがそれ以外の季節は特に厳しい訳ではなく、夏場は避暑地としてドルス公爵家の別荘がその町にはあった。 西側には海があり、港町として機能しているヨウガの町。 今この町の別荘には公爵家の嫡男と長女が訪れていた。


「俺が怪我で臥せっている間に強硬派は行動を起こしてたようだ。 魅了魔法の使い手を王国の王都に送り込んで王家の者を誘惑し、混乱を招かせる作戦らしい」

「仮にも王家の者が簡単に魅了できるのですか? お兄様」

「当代の王はたいして脅威じゃないというのが潜伏してる者からの報告にあったから、その息子も凡庸なのだろう」

「はぁ…それで混乱させてどうするつもりなのでしょう?」

「詳細は不明だが、陛下と強硬派の貴族達が多くの魔法使いを導入させて 大掛かりな儀式魔法の準備をしているみたいだな。 我が家の密偵ではこれ以上の情報を取るのは厳しいみたいだ」

「大掛かりな儀式魔法ですか… 混乱させたタイミングでそれを使おうとしているのですね? それでどんな魔法なのかはわからない…と」

「うむ それで身近で邪魔になりそうな俺を足止め、あわよくば殺そうと動いた…という所までは密偵が調べ上げてきたのだ。 どうあっても戦争がしたいらしい」

「帝国内でも意見がまとまっていないのに戦争を起こそうなんて呆れてしまいますね。 獣人奴隷まかせのごり押ししか思いつかないような者が指揮を執っても勝てないのではありませんか?」

「まあな、我らに話もしないで作戦を実行するというのだ 参加しなくてもいいのだろう」

「それでは、お兄様が回復されたことは恐らく知れ渡ってる事でしょうから、強硬派の密偵が入り込む可能性は高いと思うので ヨウガを拠点にして今後は動く…という事でよろしいですか?」

「それだと確かに安全だが、情報が入ってくるのに時間がかかってしまう難点がな…」

「それならば、いっそ視察って名目で王国に行ってみればいいのかもしれませんね」

「ふむ、それも面白いかもしれんな」


コンコン

2人がいる部屋のドアをノックする音が響いた

「報告があります」

「入れ」

ドアが開かれ、軽装の男が息を切らせて立っていた

「王国内に潜伏していた部隊からの伝令が国境の砦に到着し、陛下宛の手紙を持っていました。 手紙は砦の兵に渡され、早馬にて帝都に向かいました」

息を切らせていた軽装の男が一気に話を済ませた

「手紙の内容はわかるか?」

「はっ どうやら第二王子の魅了に成功し、婚約者を追いやって懐に入ったが 突然魔法が使えなくなってしまったので、指示を仰ぎたい…との事でした。 これは王都から走ってきた伝令に酒を飲ませて聞きだしたことです」

「そうか わかった。下がって休むがよい」

「了解しました 失礼します」


男が下がるのを見て、首を左右に振りながら公爵家長女グラスが口を開く

「はぁ…失敗したという事ですね 呆れてしまいますね」

「全くだ。 このままだと更なる強硬手段を取るかもしれんな、 身を隠した方がいいかもしれんな」

公爵家嫡男クロードが疲れたように目を瞑る

「一度領都に戻って 父上の判断を仰いでから決めましょう、お兄様」

「そうだな、一度戻ろう」


2人が別荘から領都に向けて旅立った頃、国境の砦から手紙を引き継ぎ、馬を飛ばして走ってきた伝令が帝都に到着し、軍部の窓口に提出した。 皇帝陛下の元に行くまでに魔法や病などが含まれてないか、数回の検査を経て、ようやく辿り着いた。


その様子をいつものように隠蔽魔法で存在を隠しつつ 手紙の行方を追っていき、 こちらもようやく皇帝の執務室まで辿り着いたのだった


「ふぅ~ やっとここまで来たか。 さてさて どう出るのか お話を伺ってみるとするかね」


執務室には超偉そうなおっさん…きっとこいつが皇帝だな… それと、いかにも文官というかインテリというか、そんな雰囲気のおっさんの2人がいた


「なんだと? 魅了魔法が効かなくなっただと? そんな事があるのか… あやつが裏切ったわけではないのだな?」

「はっ あの小娘、リーナには見えない場所に隷属の紋章を書き込んでいますので 裏切りではないと思われます。 詳しくは手元に呼んで調べてみない事には」

「ふーむ、 それなら帝都に戻るよう手配しろ。 そして戻ってきたら調べるがよかろう 使えそうならまた送り込むだけだ」

「委細承知いたしました。 では失礼いたします」


インテリおっさんが部屋を出ていったな… しっかしリーナ嬢も隷属させられてたのかよ。 まぁそれにしたって性格は悪そうだけどな、実際見た感じでは。 まぁどっちにしてもあの子はとっくに殺されてるからどうしようもないけどな


「ふーむ、魅了魔法が使えなくなった…か」


おおう、びっくりしたー いきなり独り言はやめてくれよ。 

なにやら窓の外を見ながら黄昏ている…くっそ似合うじゃんかこのおっさん 

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