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「お待ちしておりましたわ 父は先ほど王都から帰ってきたばかりなので私がお相手致しますわ」
「王都での噂話くらいは耳に入ってるよ。それよりアイツラは面白い情報を持ってたのか?」
「いいえ、残念ながらただの下っ端だったようで リーナを使って王都を混乱させる…くらいしか知らされていませんでしたわ」
「まぁそんなもんだろうな。 こっちも帝都に向かっている伝令がまだ国境を越えていなくてな、時間がかかりそうだ」
「そうなんですの…その伝令を追いながらも我が領に顔を出せるトーヤ殿がとても恐ろしいですわ」
「ま、敵対しなければ何も起こらないし 貴族として真っ当な領地運営してるなら問題は起こらないさ。 真っ当の意味が俺とは違わなければ…な」
「もちろん敵対する意思などございませんわ、なんでしたら我が身をトーヤ殿に捧げる事も厭いませんわ」
「あいにくと、義務だの責任だのと仕事感覚で言い寄る女を傍に置く趣味はないな。捧げられても受け取らないからな」
「義務だなんてとんでもございませんわ!トーヤ殿を見ていると、第二王子や上位貴族の令息が いかに常識を知らない横柄な者達だったと思い知らされましたわ」
「いやいや、あんな苦労を知らないお坊ちゃんと一緒にしないでくれ」
「全くその通りですわね…失礼しましたわ。 そんな事よりも、私は自らの意思で 望んでトーヤ殿の妻になりたいと願っておりますわ。 創造神アイシス様よりも上位な貴方様には私の身分は低すぎるのも理解しているのですが」
アリーナは手を組んでモジモジしている、 しかし貴族ってのは美男美女がホント多いよな アリーナも日本人的な感覚で見れば超がつくほどの美人だし、早熟なのか15~6歳のはずなのに十分な色気も感じる… 確かに種族や立場、魔力に関しては人間種とは遥かに大きな差はあるけど、45年もの時間を人間として生きてきた俺には超美人な女性に言い寄られるなんて考えられない事だったから返事に困るな… ああ、それにヴァイスやイクシード、フィーもなんか嫁にーとか言ってたし エメリアは打算が見え見えだったから考えなくてもいいだろうけど、一応嫁っぽいのはいるからなぁ
「ああ すまんな、 一応これでも嫁はいるんだよ。確定してるのが2人ほど」
「2人いるのですか…いいえ!3番目の側妃でもいいのですわ!」
「あーなんていうか、3番目もな…まだ詳しい話し合いはしてないから確定じゃないんだけど」
「ぐぬぬ…ち、ちなみにその方達のお立場はどのような感じなのですか?」
「え?それ聞くの? えーと1人は魔王で もう1人は天使族の王なんだけど… ついでに確定じゃない3番目は不死族の王だな」
「ま…おう……」
「うん、魔王は見た目だけならアリーナより若く見えるけど、1000年だか1500年だか生きてる年上だな」
「1000…年… 人族では太刀打ちできないではありませんか」
アリーナはがっくりと項垂れる
「あーなんかすまんな、前にも言ったが俺も人間種じゃないからこの先何百年生きるかわからんぞ?」
「で、では! その長い寿命の中で、人族である私の寿命など ほんの僅かな時間なのではありませんか? その時間を私に与えてくださいまし!」
「なんかグイグイ来るな…まぁ落ち着けよ。 アリーナもまだ若いんだし、それに伯爵家の事もあるだろう 貴族は地位や立場と結婚するもんなんだろ? まずは家族で会議しないといけないんじゃないか?」
「ううー」
「それについては我が家からは反対意見は出ないと確信するぞ?」
「お父様! いつからそこに!」
振り返るとラジウスとセリーナが立っていた、まぁ俺は居るのに気づいてたけどな
「ん? お前がトーヤ殿にプロポーズしてた辺りからいたが?」
「……」
アリーナは顔を真っ赤に染めて俯いてしまった
「トーヤ殿、来るのが遅くなって申し訳ない」
「ああ、気にしなくていいぞ。大体の話はアリーナに聞けたからな」
「儂も王から呼び出されてな、王都に出向いていたのだが…トーヤ殿のおかげで儂らは素早い情報の収集と行動が出来たが、王家の方では何も理解していないようだな。 帝国のての字も出なかったから 少しばかり情報を吐き出してきた。 これでどう動くか見ものではあるな」
「王家ねぇ よほどのボンクラじゃなければ国家運営には支障出ないだろ。 問題は悪徳貴族だな、自身の利益の為なら我が子どころか孫まで売り飛ばすからな…ホント生物として終わってるよ」
「生物として終わってる…か」
「だってそうだろう? 本来の親、もしくは当主は子や孫の為なら命を賭けて守るもんだ。野生の動物でさえ我が子のために体を張るくらいするぞ。 それを政略結婚だの、物のように扱って売り飛ばすなんてありえないだろ。 まぁこれは俺個人の考えだけどな」
「確かに そこは言い返すことはできんな…」
「まぁ周りがそうだから変えたくても変えられないって貴族もいるんだろうけどな」
「確かに、王都には悪どい貴族は大勢いる。 しかもそういう貴族に限って上位だから始末に負えないというのが現状だ。 それでも儂はアリーナが望むのなら血筋は気にするつもりはなかった… まさかトーヤ殿にプロポーズしてたのには予想外だったがな… ガッハッハ」
「笑い事じゃないだろう 全く。 悪いがそれは受けられないぞ、 仮に受けたとしても待ってるのは魔の森の中心部で農作業だ 貴族令嬢にそんな知識も経験もないだろうし、農作業も出来ないだろうしな」
真っ赤な顔で俯いてるアリーナとは対照的にニコニコしているセリーナ…なにか企んでそうだな。怖い怖い