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「あれ?なんか様子がおかしい…新しい侍女が命令を聞いてくれない。どういうこと?」

リーナは困惑していた。平民なので本来は侍女なんて付かないのだが、第二王子の権限で侍女を付けていた。

昨日、気に食わないことがあったのでクビにし、今日新しい侍女が来たのだけどどうにも反応がおかしい 本来なら王宮勤務の侍女なので、身分も貴族令嬢がほとんどだ。 その貴族令嬢が平民に対して心身ともに仕える訳がなく、形だけは従っているけど見下した目をしているのだった


「おかしい…私の魔法が効いてない?ちょっと他の人で試してみるか」

リーナの魅了魔法は、単純な命令 例えば『言う事聞いて』など この程度でしか効果がなく、効果範囲も大体4~5人が限度だった

第二王子のシグルドと取り巻きの2人、そして付いてた侍女に『私を一番大事にして』という命令というか洗脳していたのだった

それなのに先ほど来たばかりの侍女は、魅了魔法を発動しているのにもかかわらず、見下した目でリーナを見ていた 本人からすれば明らかにおかしい現象だった


寮から出て校門のに向かって歩き出す 門には必ず2人の門衛がついている。 

門衛の一人に近づき、目を合わせて魅了を発動する。 『門を開けて』と

しかし門衛は何もしないで目を逸らしその場で立ち、門を守るという業務を遂行する 


リーナは驚きつつも素通りして寮に戻る

「なんでなんで?魔法が効かなくなってる?どういう事?これじゃあシグルドの洗脳も解けちゃうじゃない」

部屋に入りベッドに倒れ込み考えだす

「まずいまずい ここまできて魔法が使えなくなるなんて 私の計画がダメになっちゃう! どうしよう…失敗すれば殺されちゃうわ」

動揺してるのか、声に出して独り言を呟いている

そしてその部屋には隠蔽を施したトーヤが、その独り言を聞いていた



「ただいま戻りました。急ですがお話ししたい事とお願いしたいことがありますの」

アリーナが淑女の礼を取り、正面にいる両親に目を向けた。

ここはアリーナの実家 バートリー伯爵家の王都邸。 件の婚約破棄騒動のために領地から出てきて昨晩着いたばかりの両親に合わせてここを訪れていた。

「うむ、それは構わないが…どうやら落ち着いたようだなアリーナよ」

「そうね カルバンからの手紙には、ずいぶんと落ち込んでいると書かれていたので不安でした」

父であるラジウス、母のセリーナがアリーナに向けて語る。 カルバンとは王都邸の専属執事の事だ

「とある情報が手に入りまして…今後王都では一騒動起こりそうな気配ですわ。 それらについての情報の共有と、私に恥をかかせた平民に与える罰について考えたいと思っていますわ」

アリーナはそう言うと、両親、カルバンとともに父の執務室へ入って行く


「それで?共有したい情報とはなんなのだ?」

「はい、どうやら平民の女、リーナは魅了の魔法使いだという事です」

「なんだと? そんな者が第二王子に張り付いているというのか」

「はい、これは とある者からもたらされた情報なのですが、リーナが魅了持ちで間違いないそうです。そして昨日話した時点では、その前日には魅了を封じたとの事」

「魅了魔法を封じただと?そやつは何者だ?」

「それは…情報の提供する条件として約束したので詳しく話すことはできません。 その者が言うには、魅了が通じなくなったら 恐らく背後にいる何かと連絡を取る可能性があり、それの調査を行うので邪魔になる動きはするな…との事です」

「ふーむ しかし我が伯爵家にあれほどの恥をかかせたのだ 報復しないなんて事はないぞ?」

「それについて、準備するのは良いと言われてます。 ただ自重するように…と釘を刺されましたけど」

「ふむ その者は信用できるのか?」

「恐らく大丈夫かと…むしろ敵に回した方が恐ろしいと思いますわ」

「しかし準備か…情報がこれしかないのだったらあまり動きようがないな」

「魅了魔法を封じたことにより、数日後には第二王子とその取り巻き達にかかっている魔法が解けるそうです、恐らく解けた後に王家は我が家に接触してくると思われます」

「はん! 王家の方から是非にと打診してきた婚約を、あんな形で破棄してくれたのだから相応の謝罪と賠償は受け取るがな… だが、再び婚約などという話なら聞けんな」

ラジウス伯爵はそう言いながら顔を赤くしていく…思い出して憤慨しているのだ


「私は、学園は退学して自領に戻る事は賛成です。 ただ、あの者から連絡取れなくなるのは問題だと思うので、一度寮に戻りますわ そして次からの連絡先にこの王都邸を使わせてもらおうと思っています。 お父様 どうか許可を」

「うむ、許可しよう。 魅了が解けるのに何日かかるかわからぬが、王家からの打診は応じない方向で行くが構わないな?」

「はい、 例え魅了で操られていたとしてもあのような侮辱を受けてまで王家に輿入れする気はございません」

「まったくだ! 王家だからこそ魅了になんぞ屈してはならないはずなのに…愚かな」

「それにしても…」

今まで黙って話を聞いていた伯爵夫人セリーナがぽつりと言う

「リーナでしたか?平民の。 その背後関係は気になりますね… ありえるとすればカインズ帝国かしら?」

「あるとすればそうだな…いくら魔法に適性があったとしても、王都の学園に入れるだけのコネがあるはずだ。 アリーナよ、 その協力者から連絡が来たら我が家に招待してくれ。 直接話を聞きたい」

「それは承知しましたが、先ほど言ったように敵対するような言動は控えてくださいませ」

「うむ」

王家に不信を抱いた伯爵家が静かに動き出そうとしていた

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