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料理を食べつつエールを飲む、 2杯のエールを飲み干したミラの顔色はすっかり赤くなっていた
「トーヤさぁぁん 私と真剣にパーティ組みましょうよぉ」
「俺はいろんな事やってるからな、冒険者の活動だけじゃなく 農業やら鍛冶やら料理までやってるから 毎日狩りとかできないぞ」
「そもそもぉ どこに住んでるんですかぁ? 私も連れてってくださいよぉ」
タメ口だったのに…酔うと言葉使いが丁寧になるのかこの娘は 間延びしてるから聞きにくいけど
「まずは訓練して安定して戦えるようになる事が先だ サボるなよ?」
「私だって頑張ってますよぅ 頑張ってるんですぅ」
ばたりとテーブルに突っ伏した…まま動かなくなった
「おいまさか寝たんじゃないだろうな?」
返事はない
「マジかー しゃーない宿まで連れてくか」
ミラを担いで宿に向かう
「いらっしゃーい 泊まりかい?」
「いや、悪いんだけどコイツの部屋に案内してもらえるか?」
「あらっ ミラちゃんじゃない どうしたの」
「狩りに行ってそこそこ稼げたから打ち上げしたんだけどな…たかがエール2杯で潰れやがったのさ」
「あらまぁ じゃあついてきて」
2階へ上がりミラが借りてる部屋に入りベッドに転がす
「悪いけどコイツが起きたら伝言頼めるかい?」
「なんて伝えるんだい?」
「4日後にまた来るって言えばわかると思う」
「4日後ね わかったよ」
「じゃあ後はよろしくね」
まったく…16~7の娘が男の前で潰れるような飲み方すんなよな 危なっかしい
自宅へ戻り、刀の製作を始める。 なんとなく記憶を頼りに反らせてみてキープ 鞘の製作に移る
「確か鞘は朴の木が素材で貼り合わせて紐なんかで縛ってるはずだったな、朴の木かぁ知識では知っててもそれがどんな木なのかは知らないなぁ うーん…」
亜空間倉庫にしまってある伐採してある木を調べると柏っぽい木を見つけた
「そういえば朴の木って朴柏とかって異名もあったな、よし、これを使って鞘を作ってみよう」
刀身がすでに出来ているのでそれに合わせて型を取り削っていく。 最後に貼り合わせて紐で組んで固定 紐で組むのは鞘の内部の清掃をするとき分解しやすいように昔の人はこうしてたらしい。
清掃しないと刀身が錆びたりするからお手入れは大事って事だね
組みあがった鞘に刀を差し 記憶にある構えから剣を抜いてみる
「いやーやっぱり刀はいいねぇ。RPGとかに出てくる伝説の聖剣とかみたいに装飾がゴテゴテしてるのもかっこいいと思うけど、このシンプル具合が個人的に好みだなー」
とりあえず完成とは言い難いけど形にはなったので、アイシスに聞いた通りオリハルコン7割、ミスリル3割の合金で刀を成型していく、先ほど練習で作った鉄の刀と寸分違わない形で完成した
「うはぁ 吸い込まれるような黒い刀身に散りばめられる銀色の粒。 まさに暗天に輝く星空のよう…渋いなコレ」
いっちょ前なレポートをする自分に気付き、1人で照れながらも出来上がった刀をすっかり気に入ってしまってる事にも気づいた
「ヤバいな かっこいい… こうなると鞘と拵えも少し装飾しないと合わないかな」
アレコレと考えてみたものの、塗装や貼物が見つかってない以上ドレスアップは難しいと考え 装飾は保留とした
「よし、この藍色のミスリルの劣化版みたいな隕石素材でミラの短刀を作ってやろう ミスリル製より劣るだろうけど鉄剣より相当ましになるはずだ。 ただこれを扱える技量があるかといえば微妙な所だけどな」
そして完成した藍色の短刀。
「これも良く見たら綺麗な色合いだなぁ、やっぱり俺が持つかな…いやいや」
少しだけ葛藤しながらも亜空間倉庫に短刀をしまい込む、やはり最初に思った通りミラに持たせよう。 まぁもう少し上手に武器を使いこなせるようになったら与えればいいや
今日の作業に満足感を覚えながら畑を見回り自宅の中へ入った
ミラを宿に放り投げてから4日後 ルインズの町に来ていた。 家にいる間に作った刀を腰に据えるため専用ベルトを魔虎の皮を使って作り込み、早速腰に差して来ている。 いつものように組合に入りロスター君の所へ行く
「おはよう 今日もよろしくね」
「おはようございます。査定しますね」
買い取りが済んだらジールの所へ
「おはよう 何か面白い話でも仕入れたかな?」
「んーちょっと前に話したやつの続きなんだけどー。 学園のパーティの最中に婚約破棄した第二王子、なんか平民の女の子と婚約したんだってー なんでも治癒魔法が使える聖女様らしいよー? 知らんけど」
「あーなんか物語によくありそうな設定なんだね、 物語だとその平民聖女は魅了魔法で洗脳しつつ国を乗っ取るって感じだと思ったけど」
「もしそうなら黒幕はどこなのかなー?」
「帝国から送られてきた刺客だったりしてね」
「やっぱりそうなるよねー」
「ん?なんか疑わしい事でもあったの?」
「いやー その洗脳魔法?ありえる状況みたいなのさー」
「うっはー 関わりたくない案件だな」
いつもの通り クッキーを渡して受付を離れ、テーブル席についてミラを待つことにしよう