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「はあはあ 倒せたぁ」
両手にナイフを持ち息を切らせて地面に座り込んだ、目の前には血濡れで動かなくなった角うさぎが横たわっていた
「でもこれ、皮がボロボロになっちゃった…これじゃ皮は売れないな」
ミラは 中級の薬草で治療してもらったその日は休んだが、その翌日からこうして南の森に入り薬草や木の実を拾っていたけど 角うさぎに遭遇し、気合いを入れて戦っていたのである。
「ちょっと擦り傷がついちゃったけど、大した怪我もないし完勝だね!」
角うさぎの首を落とし木に吊り下げて血抜きをする
「角とお肉代があれば食事代はなんとかなるね。問題はトーヤさんといつ会えるのかって事だけど…」
「トーヤさん…かぁ 私と大して歳は変わらないように見えたけど態度はおじさん臭かったよね。 顔も普通だったし、まぁ悪い人じゃなさそうだし 角うさぎも簡単に倒してたみたいだし 組合の評判も悪くなかったし…一緒にパーティ組んでくれないかなぁ」
ミラは農村から出てきたばかりの駆け出しで、共に組んで回れる仲間は見つかっていないのだ
自分が若い女であることをよく理解し、できるなら同性でパーティを組みたいと思っていたけど、ルインズの町に来て 女性冒険者の数が少ないのと、いたとしてもすでに他の誰かと組んでいて空いてないというのが現実だった
「次に会ったらパーティ組もうって言ってみよう。疲れたし今日は町に戻ろう」
血抜きの終わった角うさぎを皮袋に入れ町に向かって歩き出した
「こんにちわー これお願いします!」
「買い取りですね 査定しますので少しお待ちください」
「あ、あのー トーヤさんの事について聞きたいんですけど」
「他の冒険者の個人情報をお話しする事はないですよ?」
「いやいや、そういう事じゃなくって お礼したいと思ってて、いつ頃来るのかなーと」
「そういう事ですか。 トーヤさんは大体4~5日に1回来るか来ないかって感じですかね いつもそれなりに素材抱えて来ますから」
「4~5日に1回ですか…って事は、昨日来てたから3日後くらいに待ってればいいかな」
「大体ですからね? 毎回そうって訳じゃないですよ」
「わっかりました!明日明後日とちょっと頑張って、3日後から待ってみます。 もしそれ以外の日に来たらトーヤさんに声かけておいてください」
「それくらいならいいですよ」
「ありがとーございます! さすがロスターさん かっこいいですね!」
「煽てても何も出ませんよ?」
組合を出て露店で夕食を買い物し、安い値段で長期借りてる宿に向かう
「角うさぎのおかげで食事代はなんとか確保できた、後はタイミング良く会えるか次第かぁ 明日も角うさぎが狩れると金銭的に楽になっていいんだけどなぁ」
駆け出しのソロ冒険者はなかなか大変なのであった
今日のトーヤは、魔の森から西へ向かい アマンダ連合国も越えて海に来ていた
今日の獲物は魚にしようと決めていた 何度か潜ってみて、自分の潜水能力を確かめてみた
息を止め潜水してみると、10分を過ぎても全然苦しくならず 翼を使い海中でも素早く動けることを確認していた
「個人的にはマグロが大好物だけど…うまく見つかるかねぇ 刺身食べたいな!醤油ないけど!」
マグロの姿形はなんとなく覚えてるけど、同じ魚がいるとは限らないので大型の回遊魚を探してみることにした。
今の体ならフグを食べても死なないだろうから、とりあえずそれっぽいの見つけたら捕まえて食べてみよう。 一応最初は焼いてみてからね
海水の温度がスっと冷たくなったと感じたくらいで2mほどのマグロっぽい魚影の魚を見つけたので、追いかけてチョップ。 1匹捕まえて海中から飛び出した
あ、一応海に潜るのは事前に決めていたことなので 魔虎の毛皮を使って海パンは作ったよ。 さすがに全裸でっていうのはねぇ 自分の持つ常識の中ではありえなかったから
自宅へ戻りマグロっぽいやつ…もうマグロでいいや 焼いてからと思ってたけど、亜空間倉庫に入れた時点で多少反応のあった寄生虫がきれいさっぱり全滅したみたいだったから 生で食べてみることにした
「ん! この感じ…やっぱりこれはマグロだ! ヤバいなこれ、ワサビと醤油が欲しい」
マグロを使った料理について記憶を探る…
「そういえば、手作りツナのレシピを見た覚えがあるな…塩とオリーブオイルとローリエだったっけ。塩と普通の油しかないけどそれで作ってみるか」
調理法について考えながらマグロを捌いていくのであった
手作りツナを完成させ、海産物のおいしさを堪能したのち 今度は貝を! という事で、前回と同じ海水温度のちょっと低くなってる辺りで探す。
シジミ、アサリ、ホタテなんかが好きだねぇ 浅瀬の海岸線で潜り、海の底をさらう…
しかし、見たこともない見た目もなんかヤバい感じの貝しか見つけられず断念。 ホタテは青森の野辺地が有名だというのは覚えてたので、ちょっと冷たい海にいるんじゃないかと予想してたけど違ったらしい
シジミアサリはありふれすぎて覚えてなかった
一度海辺の町なんかを見に行って、漁師に話を聞いた方が早そうだな。 気が向いたら行動してみよう