20
とりあえず人に聞かれると面倒だから人気のない所に案内してもらわないとな この町の事はあいつらの方が詳しいだろうし
あの時いた8人全員が入ってきて買取を済ませているのが見える
全員じゃなくてリーダーっぽいやつ1人に話すってのでも良かったのか まぁいいか
8人そろって俺のところに来て整列しようとしていたので止める
「あまり仰々しいのは止めてくれよ 目立つから」
「わかりました」
「あまり他人に聞かせたくない話なんだ、どこか人気が無くて静かな所を知ってるか?」
「町の中ではちょっと難しいですね。 騒がしくてもいいなら行きつけの飯屋の個室がいいですね、周りが騒がしいから個室の声は外には聞こえにくいんです」
「なるほど、そこに案内してもらえるか?」
「はい、といってもすぐ近くなんで」
案内されて飯屋に入る。 飯屋というより酒場だな、た確かに騒がしい
個室に入り食べ物と酒を注文し、それが来てから話そうという事で、一先ず沈黙した時間が流れる。
料理と酒が届き、店員が下がっていった
「さて、これから話すことはあんたらにとってはかなり重要でメリットのある情報だ」
獣人達は緊張した顔で続きを待っている
「今から大体2年後くらい、細かい日時は不明だけど 帝国にとって大変な事件が起こる。 恐らく帝国全土にかけて大混乱になると思う」
「大混乱…ですか」
獣人達のリーダー ガッシュが反芻する
「ここだけの話だけど、今帝国はとんでもない悪事を働こうと計画している。予想だとそれが行われるのはおよそ2年後」
「はあ…」
「まぁあんたらは俺の正体を知ってるから話すけど、その帝国がやろうとしている事は この世界の創造神アイシスの怒りを買うほどの事で、間違いなく帝国の中枢に属する者達に神罰が下る」
獣人達は目を見開き唾を飲み込む
「神罰を下す直前に神託を出すって言ってたから、間違いなく帝国内は大混乱に陥る。 そこがチャンスだと思わないか? 仲間の救出に」
はっと顔を見渡す獣人達、しかし緊張した表情のガッシュがぽつりと言った
「神託を出すって言ってたって…まさかアイシス様と知り合い…とかですか?」
「アイシスか?まぁちょっと前に俺の部下になったんだよな…」
「創造神様が部下って…」
ガッシュは開いた口が塞がらないようだ
いつまでも放心している獣人達に声をかける
「いいから落ち着いて飯を食え」
「は、はい!」
獣人達はバタバタと食べだした
「いいか、2年後に起こるだろう大混乱の前に 信頼できる仲間を増やして、今以上に鍛えておけ。俺も帝国の考え方とやり方は気に入らないから また少しだけ手を貸してやる。 とりあえず隷属の魔導具を解除する方法を考えておくよ」
「わ、わかりました!」
「とりあえず言いたかった事はこんなところだな、何の準備も無しにいきなり言われても困るだろ?」
「確かにそうですね。 少しでも多くの同胞を救えるようにしっかり準備しておきます」
「後な…その妙にかしこまった態度、やめてもいいぞ?」
「え?いや、恩人に対してそんな訳には…」
「そんな細かい事でグダグダ言ったりしないって。心配すんな」
「はぁ…いやでも、無理です」
「ま、いきなりそうなれとは言わないけど、覚えておいてくれよ」
「わかりました」
俺は温いエールをぐいっと飲み干した
「それじゃ俺はもう行くな 胡椒の木を少し持って帰りたいんでな」
「お気をつけて…」
「ああ、それじゃーな」
町の外はすっかり暗くなっていて、門はすでに閉じられていた
ちょっと物陰に入れば暗くて見えないだろうな ささっと建物の陰に入り闇の中へ飛び立ち、森へ向かう
魔人の特性だろうか、暗闇の中でも暗視カメラの映像のように白黒だけど割と良く見える
胡椒胡椒っと 乱獲はまずいだろうからほどほどにしないとね
20本ほど丁寧に引き抜いて亜空間倉庫に放り込むと、自宅に向かい飛び立った
植え替えは日が昇ってからにしよう、さっさとベッドに潜り込む。たとえ魔人になったからって、長年してきた習慣はなかなか変わらないよね
一方 トーヤが帰った後も、残った料理と酒を胃の中に片付けていた獣人達も だいぶ困惑から抜け出したようだ
「2年後か…ちょっと早い気はするけどせっかくの機会 逃がせられないな」
ガッシュが沈黙を破った
「それにしてもトーヤ様って一体何者なんだろうな」
「ああ、創造神アイシス様を部下って言ってたしな…初めて会った時は魔人だって言ってたけど…そもそも魔人ってなんだ?」
「なんにせよ帝国人みたいな悪意は全然感じないし、手を貸してくれるってんなら喜んでそれに乗っかろうぜ」
「そうだな!」
ガッシュが締めると他の獣人達も同意する
「それにしても…神罰って何が起こるんだろうな」
「さぁ?」
今日もいい天気 畑仕事日和だな!芋畑の近くに胡椒の木を植えてみた
すでに生ってる実を収穫し、乾燥させるために自宅の近くに並べて放置。 他の畑も見回って飼育している魔牛の様子を見て、搾乳もしておく やっぱりこう、のんびりと作業して暮らすのっていいな
どかっと手作りのベンチに座り空を見上げた