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あれから数日が経ち お米の情報のための賄賂をもって組合に来た
「やあジール ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はいおはよー 何が聞きたいのかなー?」
「なんていうか、麦のような作物で 小さいつぶつぶが実る作物を知らないかな?」
「あーコムの事かなー? 一応食べれるんだけど余り使い道が無くて、わざわざ栽培してる農家は多分いないよー」
「あらまっ んじゃ自生している所とかわかるかい?」
「ずっと東に行ってアマンダ連合国との国境付近に自生しているって資料にあったかなー」
品種改良されてとってもおいしかった日本の米とは比べ物にならないだろうけど、米は色々と使い道があるからぜひとも取りに行きたいね
「そうかそうか いい情報とありがとう。これは感謝の印だ」
クッキーを渡す ゴルドアプルを使ってない通常版の方だ
「わはー! もういつでもなんでも聞いてよねー」
「じゃあちょっとそっちに行くからしばらく顔出せないかも」
「……また戻ってくるんですよねー?」
「ああ戻ってくるよ」
「わかりましたー 気を付けていってらっしゃーい」
他の受付嬢の『こっちにもヨコセ』視線を見ないふりして組合を出る
さて、米が自生している風景が全然予測できないんだけど…水田栽培だったはずだから湿地帯とかに自生してるのかな、まぁ行ってみなければわからないよね とりあえず視察だな
東側の国境付近に来てみた。 距離的には馬車なら3~4日ってところかな、俺が飛んで行けば30分もかからないんだけど
とりあえず上空から視察…大きな川と沼が群生している地点を見つけ、人に見られないように着陸 翼を隠蔽
「おーこれは確かに米っぽいな」
自生しているだけあって、育ちが一定じゃなかった 穂をたゆらせているのもあれば、まだまだ青々としてる物もあってバラバラだ。
「しかしコレ…収穫とかすっごい面倒だな」
目に付いた収穫できそうなものを厳選して刈り取り、異空間倉庫に放り込む
自宅で水田作るの大変そうだけど、今後の食生活のためになんとか考えなきゃだな。 この土もその内持ち帰ろう よし、今日は戻って精米して炊いてみよう
「あうー おいしくない」
早速やってみた…がっ! 高品質のお米の味を覚えてる舌は、天然米の味を酷評した
「んー芯が残ってて更にパサついて 昔食べたことのあるタイ米をさらに悪くした感じだな」
芯が残るのは炊き方が悪いんだと思うけどね 確かタイ米はチャーハンにするといけるんだっけ
人参玉ねぎ魔牛肉にゴルドアプルで作ったソース、塩を使いチャーハンにチャレンジ
「おっ これなら普通においしいな。 早速試食係に意見を聞いてみるか」
「失礼するよ。 ちょっとこれの味見をしてくれるかい?」
アイシス宅の地下室に入ると、うんざりした顔で魔法を操っているアイシスがいた
「うわっ どしたの?すごい顔して」
「ああ、すいません そんなにひどい顔をしてましたか」
「やってらんねーって顔してるわ」
「ははは…まったくその通りなんですよ。もう神託を出して帝国を潰してしまおうかと真剣に悩んでました」
「ええっ帝国は何やったのさ」
「魔導具で地脈の力を吸い上げて、なにやら大きな魔法の準備をしているようなんです。 ここからだと何の魔法を使おうとしているかはわからないんですけど」
「マジか…歴史を聞いた限りじゃ、戦争に負けて辺境に追いやられたって話だったから 大陸内での権力の復権でもしようとしてるのかねぇ」
「そうなのかもしれませんが、それを成すのなら自分たちの力で成さねばなりません。そんな事に地脈の…というか私の魔力を使うなんて正直許される事ではありません」
「そっか 地脈の魔力はこの世界の創造神であるアイシスの物だったんだ」
「そうです、この大地そのものも生きておりますので 育成の助けとなるよう魔力を流しているのです」
「手が必要になったら言ってくれれば手伝うよ」
「ありがとうございます。その時になったらお願いするかもしれません 一応帝国の人間種全てに罰を与えるのはどうかと思い、それを行っている者をこれから調べてみます」
「わかった まずこれを食べて落ち着いてくれ」
「ありがとうございます」
チャーハンは好評だった
それにしても帝国かぁ ろくなもんじゃないな
そもそも人間至上主義で獣人やエルフなどの亜人に人権を与えてないって時点で俺は気に入らないがね
ま、先導してるのはそれなりに立場のある奴で、手を貸してる魔法使いがどんなもんか…自分の欲のためにやってるなら問題だけど、命令されて仕方なくっていうのなら情状酌量の余地は見るべきかもな
アイシスの神罰がどんなもんか…俺は必要ないかもしれないかもな
一方 魔の森経由で帝国を出国した獣人達は4日かけてアルカイト王国の王都へ到着していた
冒険者組合で他の獣人と情報交換を行い、補給をして王都の北にあるクリモの町へ向かった クリモの町は魔の森に隣接しているため、魔の森の魔物の素材が数多く流通し 大勢の冒険者で賑わう大きな街だった
少しでも同胞を助けるため、身体能力の向上のために修行をはじめたのであった