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森の切れ目で獣人達を下す

なかなかスリリングだったらしく全員の尻尾が膨らんだままだ 気持ちはわかるがしょうがない

「じゃあ言った通り、最悪の場合はその宝石を使ってくれ」

「ありがとうございます この恩は忘れません」

「いやいや、まだ終わってないだろ。気合い入れて行けよ!」

「おう!」

獣人達は小走りで去っていった ここから領都まで急げば明日には着くそうだ

渡した発信機が家まで届くか不安なので明日の夜明け前にもう一度ここへ来よう そして家に向かって飛び出した。


翌朝、トーヤの家で十分な食事と休息をした獣人達は休憩を挟みながらも夜通しで駆け抜け 開門前に領都に到着していた

朝一の鐘が鳴り 開門と同時に中に入り公爵邸を目指す。


「魔の森調査隊帰還した グラスお嬢様に連絡してほしい」

公爵邸の門衛に言付けを頼み待機する獣人8人 今回の仕事では冒険者15人同胞2人が死んだ、偉そうにしていた冒険者に思う所はないが 共に解放を目指した仲間達の分まで生きて、いつかは報復を果たしたい

魔虎に遭遇した時は全滅を覚悟したが…

「魔人か とてつもなく恐ろしい力を感じたな」

獣人のリーダーがぽつりと言う

「今回限りだと思うけど助力を得られたのは良かったな 俺達だけだと生きて帰ってこられなかった」

「まったくだ 宝石…魔導具なのか、これを使う事になるかはお嬢様次第だけどな」

衛兵が戻ってきた

「お嬢様がお会いになる こっちへ来い」

衛兵に連れられ中庭に着く

「ここで待機していろ」

8人は膝をついてグラスの到着を待った


「まさかこんなに早く戻ってくるなんて 2か月は覚悟していたのに…早く着付けてちょうだい」

侍女たちに着替えをさせていた公女グラスは急がせた


「よくぞ戻ってきた それで…ゴルドアプルは?」

「こちらでございます」

獣人リーダーがゴルドアプル2個入った皮袋を差し出すと そばにいた護衛兵がそれを受け取りグラスへ渡す

「2個も…よくやりました。 これを急いでお兄様に」

後ろに控えていた侍女に渡し、仕事を命じる 受け取った侍女が部屋を出ていくとグラスは獣人達の方へと向き直った

「ずいぶんと人数が減っているけど 詳しい話をしなさい」

隷属の魔導具の効果で嘘をつくことができずありのまま話す、だが聞かれた事は答えないといけないが、聞かれないことは言わなくても制約はかからない 嘘はついていないが全部は話していなかった 

「なんとも信じがたいな」

「そのような戯言気にする必要はありませぬ」

脇にいた領都軍をまとめる騎士団長がやれやれと首を横に振る

「よし、お前達には約束通り奴隷から解放し 出国を認める。ゴルドアプル1個につき白金貨150枚というのは冒険者との約束事だったが全滅したのでそれは無しだ。お前達には1人金貨10枚を報酬として出す 用意するから後で受け取れ」

ほっと息をついて獣人達は頭を下げる どうやら相手が獣人奴隷でも筋は通せる人柄のようだ

 

グラスは侍女に解放と金貨を任せると兄が臥せっている部屋へ急いで向かって出ていった

「それでは、隷属の魔導具の付いていない獣人を町の中を歩かせることはできないので、馬車で国境 魔の森の入り口まで行き、そこで解放します そこから魔の森を通り王国へ行きなさい」


今日は準備のため出発は明日 獣人は離れにある小屋に連れられ待機することとなった


全身傷だらけで危篤状態に近い公爵家嫡男のクロード とても物を食べられる状態ではないのですりおろしたゴルドアプルを口から流し込み取り入れる事で、じわじわと回復してきた

荒かった呼吸が穏やかになり、悪かった顔色も少し戻った気がする

「さすがはゴルドアプル まだ予断は許しませんがこれなら…」

15人もの精鋭冒険者を失ったのは大きな損失だが、グラスにとってはこの15人より兄1人の方が重要だったので それほど気にしてるわけではなかった

「今後も少しずつゴルドアプルを与え看病なさい、何か変化があったらすぐに連絡を」

クロードの病室に詰めていた医師、侍女たちに声をかけ 自室へと戻った

「今日はゆっくりと眠れそうですね…」

大きく息を吐き 椅子に深く座り込み テーブルの上に置いてあったベルを鳴らし侍女を呼んだ

「ゴルドアプルは本物だったわ 獣人達に礼をいう訳にはいかないけど、約束はきちんと守るように。解放しないで森に放り出すとか報酬の金貨を横領するとか、我が公爵家の名に泥を塗るようなことの無いよう徹底させなさい」

「承知いたしました」

侍女が下がっていく 

魔の森までは辺境の町ボッシュを経由して馬車でおよそ2日半 魔導具の解除を行える魔法使いと護衛も付けるので、道中の食事や水などそこそこの量を積み込む必要があるのだ

「ふふっ今日はとても機嫌がいいわ」


公爵邸というか城だけど、中庭から隅っこにある小屋に入っていく獣人達をトーヤは上空から見ていた

「あの様子なら今日は動かないかな 戻って明日の朝にまたく来るか」

獣人奴隷達の境遇に同情し、手を貸すと言った手前、解放され国境を超えるまで見届けないと終わった気がしないので明日もまた来ようと思い 自宅へ飛び去った


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