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「なにこれーなにこれーなにこれー おいしー」

じゃがバターを食べた直後のジールだった

「うまいだろ?これがバターだよ 売らないけど」

「売らないのー?これ、個人的にすごく売ってほしいんだけどー? いくらなら売る?」

「だから売らないって言ってるでしょう、魔の森に行って魔牛から搾乳してバターに加工してなんて自分の事じゃないと面倒だしね」

「確かにそう考えると結構な値段になりそうだねー」

「そりゃーやれば稼げると思うけどね、客商売すると自分のペースで暮らせなくなるからね 早く作れってせかされるのも嫌だし」

「時々でいいから少し分けて欲しいなー もちろんお金払うよ」

「在庫に余裕ある時は声かけるよ」

「「ありがとー」」

隣の席の受付嬢もにっこりと自分にも分けろアピールしてきた ジールに分ける分を半分にすればいいかな


さて、町で野菜を買い込んで適当に作ってもおいしい野菜炒めを作ってアイシスとヴァイスに食べさせてみよう しかしバター程度でここまで喜ばれるとは…やっぱ地球の食文化は特殊なのかねぇ、普通にいつでも食べれる食材だったはずなんだけど やっぱ文明レベルの違いは大きいね


『ヴァイス聞こえるかい?』

『聞こえてますよ 何かありましたか?』

『俺の故郷の食材が1個再現できたから調理しようと思ってね』

『ほほぅなんでしょう? いや、聞かないでおきます。少し立て込んでるので急いで片付けて行きますね』

『普通の料理だからあまり過度な期待はやめてね』

『ふふふ 我が夫の手料理とあらば食べない選択肢はないですね』

『いやほんと 普通の料理だからね?』


町ではキャベツっぽい物、人参っぽい物、白菜っぽいの…実際には違う名称で呼ばれてる野菜達だけど、もう面倒なので俺の中ではキャベツ、人参、白菜って事でいいや

これらと魔牛肉をスライスしたもので肉野菜のバター炒めを作った


「これはおいしいですね バターは食したことはありますが、パンに塗りこんで食べたことしかありません」

こう評価するのはアイシス、今いる世界の女神として管理してる都合上 ここ以外の世界の事には疎いみたいだ

「パンにバターは鉄板だよね そういえばこの世界に来てからパン食べてないな、今度見てくるか」

ヴァイスは無言で、かつ優雅に肉野菜炒めを食べている しかしよくよく考えると、この世界の神と魔王に野菜炒めをふるまう俺のセンスがやばいな もっとうまい物考えないと

「ヴァイスもなんか悪いね、呼び出しておいて庶民的なメニューで」

「いいえ、私もいろんな世界を見てきましたが 貴方のいた世界の食糧事情や文化はとても素晴らしい物だと思ってます。貴方の世界では庶民的なメニューでも、この世界ならば人間の王にふるまっても問題ないと思いますよ」

「そっか ま、喜んでもらえたなら良かったよ。 俺も食べたいから色々再現できるように考えてみるよ」

「その時はぜひ呼んでくださいね」

ヴァイスはにこやかに言うと食事を再開した 俺も食うか

しかしパンかー ゴルドアプルで作れないかな…確かりんごで酵母作る時は砂糖いるんだっけ、あんまり知識ないけどやってみる価値はあるかもな ゴルドアプルはこの世界じゃ偉大なりんごみたいだし


一方その頃 ゴルドアプルを求めて森に入ってきたカインズ帝国ドルス公爵公女の依頼を受けた冒険者15人と獣人奴隷10人は順調に進んでいた

精鋭として選ばれた15人の冒険者達の練度も高く、日頃からパーティを組んでいるという慣れた連携も見せていた。 そして何より 奴隷からの解放という報酬に希望を見出した獣人達の動きは目を見張るものだった。 魔の森の中心部までおよそ250㎞ 森の中を警戒して、時には戦闘しての行軍は非常に時間がかかるため 約2か月分の食糧を10人の獣人奴隷が分けて持ち その大量の荷物を担ぎながら15人の精鋭に遅れることなくついていってる

元々獣人は考える事は苦手な者も多いが、身体能力は人間種を大きく上回るため 帝国では奴隷にして肉体労働に使われる事が多い。肉体的に強い獣人達…普通に考えれば簡単に奴隷になんてできないだろうと考えるが、なまじ鼻が良いため 人間には感じる事の出来ないレベルの睡眠剤や麻痺毒が簡単に効いてしまうという欠点があったのだ。捕らえた後は隷属の魔導具で反抗できないように縛り付ける

大抵の獣人は隷属の魔導具に逆らえず、諦め絶望したまま働かされるので、解放されるなんて事はまさに夢のような話であった

ただ獣人だというだけで捕らえられ、拉致され隷属させられ、大抵が心を折り絶望してしまうが、いつか復讐を!と、恨み言を持つ者も少数だが存在する

今、解放への希望を見出した10人の獣人はまさにそう思っていた。 この任務を達成し解放され王国に出国して 力を蓄え他の獣人を救い出すための行動を取るつもりだった。


余談だが、隷属の魔導具は異世界から召喚された者たちによってもたらされた物だった

召喚者も全てが善者というわけでもなく 中にはひどく嗜虐的な者もいたそうだ そんな者たちが召喚により強化された魂の力を使って作り出されたのが隷属の魔導具だった。

その召喚者が亡き後 同様の物は作ることが出来なかったが命令を聞かせ行動させる程度の劣化版は現地の魔法使いたちが再現することに成功していた

現在帝国全土でおよそ2万の魔導具が存在する 王国や連合国では使用は禁じられているが、犯罪者などに使用し、強制労働させている

召喚者が制作した心まで操る事のできる隷属の魔導具は10個はあったが、アイシスによって全て破棄され 現在は存在していない   

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