おっさん『萌え』を知る。
読んでいただいてありがとうございます。
おっさんジャンルって凄いですね、はぁ〜びっくりした。
「あ、ありがとうございます」
そうペコリと頭を下げてお礼を言ってきた少女。
「気にしなくて良いですよお嬢さん、お怪我はないですか?」
見た目はこんなおっさんでも紳士なのだ、おっさんだけど。
「は、はい」
この歳にして中々礼儀を知っているお嬢さんではないか、やはり人助けはいいものだ。
おっさんを助けた少女は、いたって普通の少女見えた、だが彼女が立ち上がったときにちらりと見えてしまった。
「ん? 尻尾?」
「え……は!?」
慌てて尻を抑える少女、尻尾が生えているのは魔族の証拠。
「君はもしかして……魔族?」
「い、いえ違います!」
そういって後ろを見せてくれない、代わりに頭が良く見える。
「あっ……角だ」
「ひゃあぁあ!!」
突然奇声を発する少女、なんだろうおじさんには思い当たるものがあった。
「うーん、あぁ! こういうのを『萌え』っていうんだ!」
「へ?……え?……萌え?」
おじさんは手でポンっと掌を打った。
「おじさん最近の若い人たちとのジェネレーションギャップというものに悩んでいてね……」
「は、はぁ」
「おじさん、数時間前にパーティーから解雇されちゃったんだ……」
「はぁ、まぁそれは……お気の毒に」
「でね、なんでか原因を自分なりに考えたのね」
「はぁ(何この流れ)」
「話がつまらないんじゃないかって、分かったのね」
「うん(違うと思う)」
「だから、最近の若者の流行りを知ろうと思って! そうすればまた彼らとパーティーを組めるんじゃないかと思ってね!」
「……そうですか(無理だと思う)」
一人拳を握りしめてやる気を見せるおっさん、おっさんとは哀れなのだ。
「そうだ君、魔族の若い人たちは何が流行ってるんだ?」
「え?(魔族と人間って仲悪いんじゃ……)」
「どうした? そんな驚いた顔をして?」
「い、いえ! (まさか気にしてない?)」
おっさんは根本的に何もかもを勘違いしていた、人間と魔族は長い間、戦争状態にあった。
互いにいがみ合い、血で血を洗う残酷極まりない戦い。
おっさんは勇者になる前、農民だった。
自然豊かな場所で平和に暮らす一市民だった。
魔族の特徴も、因縁深い戦いもおっさんは疎かった。
だからだろう、魔族は単なる外国人程度の認識でしかない。
勇者継承の儀式の日。
「そなた達の活躍期待しておるぞ!」
そう国王様から勅命を下された時。
アルフレッド(この国を救うんだ!)
アリス(平和な世のために!)
マリア(人間の安寧のために)
サーヤ(……腹減った)
おっさん(魔王ってなんだろう?)
論外である。
「ふむ、取り敢えず芋食うか?」
「……はい?」
差し出された芋を受け取る、なんでだろうなんかちょっと温い。
「おじさんの育てた芋さ! 美味しいぞ!」
「……ありがとうございます」
なんだろうこれ……いやマジでなんなのこれ?
魔族の少女は戸惑いながらもおっさんの芋を齧る。
「あ……美味しい」
「だろう! ハハハ美味しいだろう?!」
愉快に笑うおっさんを見て、少女はなんだかすごく温かい気持ちになった。
「そうだ、お嬢さん? お名前はなんて言うんだい?」
「……アイラ」
「アイラか……ふむ、良い名なのか? 分からん、あれだ……萌えだな!」
まだその話続いてたんだ。
「おじさんの名前教えてよ」
「おっと、悪かったねおじさんの名前はね……」
——ファウリンベル・エドワンス・フォン・グレートシュタイナーと言うんだ!——
なっが!
更新は明日にできればしたいと思います。
もしよろしければ続きも読んで下さると嬉しいです。