毒針の歌い魔
ステージに近づくにつれて、何が起きたのか、よりはっきりとわかるようになっていった。
どうやら、ステージを中心に半円形に被害範囲が広がっているようだ。
運良くオレたちがいた所は被害範囲の外だったが、ステージ近くの人はことごとく被害に遭っていた。
それにも関わらず、ステージに立つ女王BACHIは、薄ら笑いを浮かべていた。しかし観衆は誰もその不気味な表情に気がついていない。
オレたちは走ってステージに近づいていった。
「女王BACHIさん、この状況を見て何とも思わないんですか?」
「興味ない。あんたらは何者だ!」
「私たち、実はあなたの正体が何なのか見えるんです。」
「はぁ!?」
「実は誰がこんなことをしたのかオレたちはもう知ってるんですよ。女王BACHIさん自身じゃないんですか。」
「うっ・・・ククク、クハハハハァ・・・!!!面白い、私こそ・・Vah-sai, mah-cang-o-zon-douk, Karodarise-ah!!」
「やっぱりな。」
女王BACHIの体が、徐々に怪物に変化していく。
やはり、女王BACHIは既に活動休止期間中に死んでいたようだ。
物事、割り切りが必要だとはまさにこのことではないだろうか。
みんなのアイドル、女王BACHIは、今はもう倒さなければならない存在なのだ。
祭りに来ている人々を、そして何よりも囚われている本物の女王BACHIを救うために。
「Rai-ra ngau-zdau-zda ngang-zai ah-ba!! 」
叫びながら、毒針を飛ばしてきた。
必死で避けたが、やっと見えた全容は、あの歌手とはほど遠い姿だった。
二足歩行をしているが、脚が虫の脚を太くしたような形になっており、背中に生えたマント状の翅からはおそらくは毒針入りの鱗粉が放出され、身体をオゾン層のように覆っていた。これじゃまともに近づけない。
「智輪蓮華、どうする?」
「んー、こいつに効きそうな武器をとりあえず探すか。」
腕につけていた数珠に念を込めると、ホログラムが登場した。
今回の武器は剣、弓、溶液で、組み合わせられる属性には水、風、泡の属性があった。
悠蓮架の方では、武器は同じだが属性が異なっており、火、花、光の属性が表れていた。
まもなく、戦いは始まるだろう。