浴衣の君が眩しくて。
夕方の暑い道を歩いているとき、ふと上に気配を感じた。
「何!?」
上を見ると、黒い大きな影が西の方へ飛んで行くのが見えた。
カラスか?と思ったが、明らかにカラスとは違うようにも見えた。
一体あれは何だったんだ!?
テスト後は暑さでぼんやりしたまま終業式が終わった。
次の週末には少し西の光陽郡墨田町で、七夕祭りが行われるらしい。クラス内にも何人か行く人がいるみたいだ。
オレも行ってみたいと思っていたのだが、なかなか行ける人がおらず行けなかった。
「ねーねー蓮華、一緒に七夕祭り行きたいなぁ〜」
「ゲッ!!蓮架、本気か!?」
「私はいつでも本気やぉ〜?」
「しょうがねぇなぁ。」
こうして、墨田の七夕祭りに行くことになった。
路線バスを乗り継ぎ、墨田の七夕祭り会場にたどり着いた。
今年は人気歌手、女王BACHIの3ヶ月ぶりの復活ライブってだけあって大盛況だ。
でもオレが今冷静さを保てないのは、隣にいる悠蓮架のせいだろう。
オレンジ色の浴衣を着て隣を歩く悠蓮架は、学校で見るよりもずっと小さく見える。
「あれれ〜?智輪蓮華〜、なんでこっち見てくれないの?」
「い、いや、見るよ・・・」
眩しい。とても眩しい。
「も、もうすぐライブ会場だよ・・・」
あと少しで会場だが、その1つ前の道まで人で埋め尽くされていた。
「これじゃ女王BACHIがほとんど見えないね・・・。」
「ああ。」
いよいよ、ライブが始まるようだ。
今まで聞いたことのないような歓声とともに女王BACHIが登場した。
しかし、何かがおかしい。
「なぁ、悠蓮架。おかしくないか?女王BACHIってあんな変なオーラ纏っとったっけ?」
「やおな。あんな毒々しいオーラは前までなかったよな!!」
確かに、前と違って曇った血のようなオーラが覆っていた。
心配をよそにライブは始まった。
1曲、2曲と続き、3曲目が1番人気の曲で、女王BACHIが飛び上がるパフォーマンスがあるのだが、飛び上がった途端、会場が異様な気配に包まれた。
前の方にいた人たちの大半が倒れ込んでいるようだ。
叫び声のような救急隊の声によると、原因不明の湿疹のような症状が多数発生しているという。
一旦ライブは中断したが、オレたちはステージの方へ歩いて行った。