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蓮華色の記憶  作者: 智×悠
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夢蓮華

この夢を見たのは、一体何回目だろうか。


今朝も、オレはとても変わった夢を見た。


蓮華の花が咲き乱れる謎の空間で、少し長い髪を揺らした美少女がオレに語りかけてくる夢だ。


物心ついたのは6歳の頃だが、その頃から何日かに一回同じ夢を見ている。


「はぁ〜まだ学校か・・・ダルいな」

そう呟きながら、暑い通学路を学校へと向かう。



オレが住んでる愛知県あいちけん粕城郡かすぎぐん蓮巻町はすまきちょうは、県内でも有数の熱都として知られている。


西からの熱風がちょうど山に堰き止められる所にあるからだ。


跳ね返ってきた熱風により夏は毎年高温多湿の灼熱地獄となる。


そのため夏が来ると熱中症で搬送される人が毎日1人は最低でもいる。


そういうオレも通学路の半分も進んでいない現時点で汗まみれになっている。


水筒は一応持ってきているのだが、飲み盛りのオレたちには足りるはずもなく、途中で水道水を足すことになるだろう。


水道水に塩素が多すぎると口の周りがかぶれるので、それだけは勘弁願いたい。



愚痴を呟いているうちに時間はあっという間に過ぎ、もう学校だ。


「よっ蓮華れんげ!」


「よう成龍せいりゅう!」


最近は声を掛けてくれる人も増えたが、これも中学になって新しい人間関係が築けるようになったからだろう。小学校の頃はありえなかった。


「蓮華〜、聞いたか?今日さ、転校生が来るんだって〜〜!!」


「本当か?お前の上手な冗談じゃねぇのか?」


「本当だわ。それに、席はお前の隣だって〜〜!!」


「ああ、あそこに来るんか。少なくとも今までよりは楽しくなるだろうな!」



成龍の予告通り、朝の会では担任教師から転校生が紹介された。


転校生は女の子で、温泉地として有名な岐阜県ぎふけん鞍馬郡くらまぐん鷲湯村わしゆむらから来たという。


その顔を見た途端、何かを思い出しそうになったが、なぜか思い出せなかった。


案の定、隣の空席にその少女が座った。この空気に慣れていないのか、すごく硬い表情をしていたが、打ち砕かなければならないと思い、オレは声をかけてみた。


「はじめまして。」


「わぁっ・・・!こちらこそ。」


「オレは智輪蓮華ともわれんげ・・・っていうんだけど、友達はほとんど蓮華って呼ぶんだ!!」


「智輪蓮華・・・素敵な名前ね。私は・・・悠蓮架ゆうれんかっていうんやけど、なんでか蓮架れんかってよく呼ばれとるんやさな。」


「じゃあ、よろしくな、蓮架。」


「ごめん、よくわからんけど・・・あなただけには悠蓮架って呼んでほしいな。」


「なるほど・・・悠蓮架か。ならオレのことも智輪蓮華って呼んでくれ!!」


「うん!やけど、両方とも蓮の字が入ってるなんて、すごく珍しいよな。あっ、でも・・人前だと恥ずかしいもんで・・・蓮架でいいよ。」


「オレも人前だと蓮華でいいよ!!」


こうして、オレたちの長い夏が訪れた。

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