第九話「復活」
結局ギルドに来てしまった俺達、ギルドに入るとそこには昨日とは打って変わって喧騒を取り戻していた。その中には俺達が良く見知ったワイルドな男の顔もある。
するとそいつはこっちに気が付いたようで、話し掛けて来た。
「ようラック、一日ぶりだな!」
「ようマルス、昨日は死んでたのか?」
「ああ、地獄を味わってたぜ」
実はこの世界では、死んでも死因が寿命以外の物であれば怪我や病気から全快した状態で自分が最後に寝た場所で生き返れるのだ。しかし何事も無かったように生き返れる訳では無く、その怪我や病気で受けるはずだった痛みを一日に分けて受け続けるのだ。しかもその痛みでは死ぬことが無い為更に辛い。何処の誰がそう設定したのかは知らんが全く面倒な事をしてくれた。
そんな訳で殆どの場合一日は動けず、地獄の苦しみを味わうことになるという訳だ。
「そいつは御愁傷様。で、また何で死んでたんだ?」
「おう、聞いてくれよ。トスイ平原にクエストに納品する為のを取りに行ってたらよ、なんと真後ろに真っ赤な化け物が立ってたんだよ。そんで気付いた時には時既に遅し、ぶん殴られてお陀仏って訳だ。あっ! そういやお前がそいつを倒してくれたらしいじゃねえか、どうやったんだ?」
ああ、昨日の化け物か。もう二度とあんな事はしたくないな。それともう一つ気になることがある。
「別に教えても良いが……その前に聞かせろ、何でそんな事を知ってるんだ?」
俺の覚えている限りでは周りに人は居なかったような気がするぞ。てか見てたなら助けてくれよな。
「あれ、お前知らないのか? 事件の当事者が知らないってのも変な話だけどな。まあいいや、教えてやるよ」
マルス曰く、俺達があの化け物に追い掛け回されてた頃、ギルドにその情報が入ったそうだ。その情報を受けたギルド側は有志者を募って即討伐に向かったらしい。そしてトスイ平原に着いた時、俺達がその化け物を消滅させた光景が見え帰って来たとの事。
「そんでまあ、その夜はちょっとした宴会になったて事だ。俺も参加したかったぜ」
お前は酒が飲みたいだけだろ、とツッコんだら「あ、バレた?」と笑いながら返された。図星だったのかよ。
「まあそんな事は置いておくとして、どうやってあんなデカブツを倒したんだ? まさか普通に殴り合って勝ったとか言わねえよな?」
その言葉に俺は苦笑しつつ、昨日の事を掻い摘んで話した。
「ほう、そりゃまた凄えな。しかも間違えて買っちまったのが役に立ったんだろ? メチャメチャ運が良いじゃねえか」
「まあそれだけが取り柄だからな」
俺達が盛り上がっていると、脇から声が聞こえてきた。
「あのーお二人さん。私の事、完全に忘れてますよね?」
その声にギクッとしながら後ろを振り返ると、そこには鬼神と化したティルシアが仁王立ちしていた。
「おっと嬢ちゃん、こりゃ失礼」
あっ! マルスが裏切りやがった。先に謝ることで自分をターゲットから外すとは……恐ろしい子!
そして逃げ遅れた俺と言えば、ティルシアの無言の圧力に小さくなっていた。
「……何か言う事は?」
「……ゴメンナサイ」
普通に謝っても許して貰えそうにないので俺の特技その一である『DO☆GE☆ZA』を繰り出し、誠意を見せた。
「うん、そこまでするのなら許してあげないことも無いです。その代わり今日と明日は言うことを聞いてください」
許してもらえるのならある程度の条件は呑むしかない。俺はそれを承諾した。
横を見るとマルスが気の毒そうな顔をしていた。同情するくらいなら変わってくれ!
「んで、俺は何をすりゃ良いんだ?」
あまり変な事をコイツが言い出す前に先手を打っておく。
「そうですねえ……じゃあーー」