第八十一話「再・ティルシアの料理」
家のキッチンで夕飯を作っているティルシアが俺達に声をかけた。
「もうすぐ出来ますから、あとちょっとだけ待っててくださいねー」
「はいよー。……今思ったんだが神様、アンタ飯は食べれるのか?」
そもそも神器って何の素材なんだ。消化器官とかその辺はどうなってるんだろう?
「食べれるかどうかという点で言えば食べる事は可能じゃぞ。もっとも食べなくても全く影響は無いのじゃがな。ま、この身体での数少ない娯楽じゃし楽しませて貰っとるよ」
「へー、そうなのか。でもアンタなら自分の好きな物を好きなだけ出して食えるんじゃないか?」
「それでは面白くないのじゃ。絶対に自分好みの物が出来ると分かっているから刺激が無い。ワシは刺激を求めているのじゃよ」
神様が正論かつ贅沢な事を言う。俺は刺激なんか全然欲しく無いけどな。だって何もない日常が一番良いし。
「そういえば今更なんじゃが、神様であるワシをアンタ呼ばわりするとは君、なかなか度胸があるのう」
「ものすごく今更だな。で、直した方が良いか? 気に障るなら直すけど」
「いやいや、単純に褒めておるだけじゃよ。怒ってなどおらんし気に障ってもおらん。じゃからそのままで良いぞ」
度胸があるって褒められて悪い気はしないし、別に直さなくていいならそれで良いか。
神様と雑談を交わしていると、ティルシアが料理の完成を告げた。
「料理出来ましたよー。持ってってくださいな」
「ほいほいっと。あ、神様はそこに座っててくれ。何せこの家のキッチンは狭いから下手に動くとぶつかっちまうんだよ」
「了解じゃ」
自嘲しながらも料理をせっせとテーブルに運んでいく。今日の夕飯も美味そうだ。
「──よし、これで最後だな」
「ですね。じゃあ食べましょうか」
「「「いただきます」」」
各々が自分の好きなものを取っていく。俺は焼き魚、ティルシアと神様は肉が入った野菜炒めだ。
「あ、そうだ。神様そろそろプランとやらを話してくれよ」
「そう慌てるでない。こんな美味しそうな料理があるのじゃから他の事をするのは失礼じゃろう」
そう言いながら神様は自分の皿に取った野菜炒めを口に入れた。
「ほらこんなにも美味しっ……!? こ、これは……」
「どうした? 喉にでも詰まったか?」
「い、いや何でもない。それよりどうじゃ、野菜炒めを食べてみるのじゃ」
何だか神様の全身が震えているが本人が大丈夫だと言っているのだから大丈夫なんだろう。
神様は放っておく事にして、神様に勧められた通り野菜炒めを食べる。
「こ、これは……!」
「どうですか? これ結構な自信作なんですよ」
「美味い! いつの間にこんな上達したんだ?」
「なあっ!?」
俺がティルシアを褒めると、神様が何故か驚いていた。
「な、なんとも無いのか?」
「何ともなくはないぞ。野菜炒めを食う手が止まらない」
「やだ、ラックさんったら!」
「そうか……それなら良いんじゃが。そうだ、残りは全部君達が食べてくれ。こんな美味いものは夫婦で食うべきじゃ」
それを聞いたティルシアが神様も食べて良いですよ、と勧めると少食だから色んなものを少しずつ食べたいと言って断った。ははーん、さては最近食ってなかったから胃が小さくなってるんだな。




