第八十話「選択」
「さて、どうする?」
神様は社会的に死ぬか、物理的に死ぬかもしれないが英雄となるチャンスを掴むかの二つから一つを選べと言外に言う。
「そんな事言われたらやるしかねえだろ」
「それは良かった。これでもやってくれなかったらどうしようかと思っていたところじゃ」
俺が吐き捨てるように言うと、神様は対極的にニコニコして言った。
「最初から他の選択肢奪っといて何言ってやがる。それにあんたの事だ、どんな手を使ってでもネタを作ってくるだろ」
「そんなあくどい事はせんよ。まあ、たまたま君が恥ずかしい事をした時にたまたまワシが居合わせる事はあるかも知れんがのう」
「やっぱ作る気満々じゃねえか!」
なんて野郎だ。こいつが神様じゃなかったらとっくにぶっ飛ばしてる所だ。
「ホッホッホ、 話もまとまった事だし嬢ちゃんにも話した方が良いんじゃ無いかの?」
「まとまったって言うか強制的にまとめたんだけどな。……ま、いいや。おーい、ティルシアー」
「何ですか?」
聞かれたく無い事に関して二人でコソコソと話していたので、ティルシアは一人っきりになってしまっていた。余程寂しかったのかすぐに駆け寄ってきた。
「もう話は終わったんですか?」
「ああ。実はだな──」
神様と話した事を俺なりに分かりやすく要約してティルシアに伝える。もちろん色々と撮られていた事は伏せて。
ティルシアは理解力が高く、俺の説明でも分かってくれたようだ。
「なるほど。正直話が突飛すぎて着いていけませんが、それが世界を救う最善の方法というなら喜んでやりましょう」
「しかし、良いのか? 危険だし痛い思いもする事になるぞ?」
あまりにもティルシアの物分りが良すぎるので心配して言うと、何を今更といった口調でティルシアは言う。
「構いませんよ。何もしなかったらどうせ死ぬんですし、力の限り抗います。それに昔からみんなを笑顔にする魔女にもなりたかったですし」
もし私が危ない目にあってもラックさんが助けてくれるんですよね? と、ティルシアは最後に付け足した。畜生、そんな屈託の無い笑顔で信じられて助けないバカが何処に居るってんだ。
「てな訳で神様、ティルシアも了解してくれたぜ」
「うむ。それでは具体的なプランを話そう──かと思ったのじゃがそれは家に帰ってからにせんか? ここに居るのも疲れたわい。お主らも腹が減っておるじゃろう」
言われて俺とティルシアは確かに、と顔を見合わせる。
じゃあ家で美味い飯でも食いながら聞くとするか。