第七十二話「修行終了」
様々なやり方で修行を続けること数時間(体感時間で)、修行を始める前よりはずっと炎をコントロール出来るようになった。具体的に言うとほぼ確実に思った通りの大きさと形で出現させる事が今の俺なら出来る。
「ほう、もうそこまでたどり着いたか。この分では前の持ち主の技術を超えるのも時間の問題じゃな」
「そうか? やっぱりプラートの野郎よりは上手く扱えるようになりたいから、目標に近づいてるって分かると更にやる気が出るな」
「ではもっと高度な修行をしてみてはどうじゃ? 例えば──と、もう時間のようじゃ。また今度教えるわい」
言われるまで気が付かなかったが、確かにだんだんと体から力が抜けている。前回と同じく視界が狭まるのと同時に意識も薄れていき、身体の感覚が全て消えた。
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俺は外部からの干渉を受ける前に自分で目覚めた。人に起こされるとなんか嫌だけど自分で起きると何故か起きようと思っちゃうんだよな。
「ふぁ……ついさっきまで完全に起きてたはずなのに眠気はあるんだな」
「あ、おはようございます。最近起きるの早いですね。手がかからなくなって嬉しい反面少し寂しいです」
横に居たティルシアが言う。
昨日の事もそうだがこいつ絶対人を子供だと思ってるだろ。自分は体が子供のくせに!
「何か今ものすごく失礼な事を言われた気がするんですけど……」
「気のせいじゃね?」
あっさめしー、と自作の朝飯ソングを歌いながら寝室を出て行く。今日は何にしようかな。
朝飯を食べた俺達は一度ギルドに寄った。直でスウン森に向かえばいいと思うのだがギルドの規定でギルドから出発しなければならないらしい。まったく、こんなしち面倒臭いシステムを考えたのは何処のどいつだ。
「お、来たね。それじゃ早速調査に行ってきとくれ」
俺達より早く来ていたシルヴィさんが言う。今は俺達以外誰も居ないくらい早い時間に来たっていうのに、一体この人はいつから居るんだ……?
「え? それだけ? もっとこう……長ったらしい手続きとかは?」
「そんなもん要らないよ。こんなものはただの形骸化した規定だからね。なくたってギルドの運営には何ら影響は無いんだけど、規定はそうそう変えられないしね」
あまりの簡潔さについタメ口でシルヴィさんに話してしまう。
これも伝統あるギルドだからこその悩みか。それなら今のシステムを理解出来る。納得はしていないが。
「へえ、そういうものなんですか。じやあもう行きますね」
「ああ、ちょいとお待ち。ほらそこの嬢ちゃんもこっち来て」
そう言ってシルヴィさんが俺たち二人に手渡したのは銀色の丸い石。
「え、と。これに何の意味が?」
「まあまあ、いいからそれ持って行きな。特に何もなかったらそのまま持ち帰っていいからさ」
ネックレスに出来るよう鎖が付いていたので首に掛ける。特に何も感じないが……とりあえず貰っておこう。