第六十八話「調査」
ギルドに入ると早速ティルシアに呼び止められた。
「あら遅かったですね。途中で何かあったんですか?」
「いや特に何も無かったぞ」
神器の事は伏せておこう。誰が何処から聞き耳を立てているかわからない。
「それならいいんですけど。あ、そうだ。さっきギルドの偉い人達が来てですね、この街の南にあるスウン森の調査をしてくれって頼まれちゃいました。なので今日はそれをする事にしましょう」
スウン森だと? 確かあそこは何者かがやった大量殺人事件が起こって今誰も寄り付かなくなったせいで荒れ放題だったような……? なんで今更あんな所を調査するんだ。
『そんなに気になるなら行ってみたらええじゃろ。なるようにしかならんのじゃからな』
急に話し掛けてくるなよ。びっくりするだろうが。
「あの、ラックさん。聞いてます?」
「あ、ああ。すまん考え事してたらつい集中しちゃってさ」
ティルシアが俯いていた俺の顔を覗き込み尋ねる。取り繕ってはみたがティルシアは多分俺が考え事なんかしてないと思ってるだろう。
「もう、良いですか? 今日はギルドの偉い人から直々に頼まれたスウン森の調査をします。分かりましたか?」
「おう分かった。偉い人が直に来たんじゃ断れねえな」
テレパシーで会話をすると自分で思っている以上に自分の内側に意識が向くようだ。これを使って良いのは会話をしてない時限定だな。
「で、準備はもう出来てるのか?」
「当たり前じゃないですか。ずっとラックさんを待ってたんですから」
「ははは、そりゃ悪かったな。じゃ行こうか」
「そういえば何か悩み事があったら遠慮なく言ってくださいね。さっきもこっちの声が聞こえなくなるくらい集中して考えてたみたいですし」
「ん、ありがとう。その時は頼らせてもらうぜ」
ティルシアが皮肉めいた口調で話す。というかそれにはお前も関わってるんだが……まあいいか。
「お、そろそろ見えてきましたよ。ほらあっちに」
ティルシアが元気いっぱいにスウン森の方向を指差して走り回る。そんなに走らなくたって山は逃げねーよ。
「おぉー! やっぱり大きいですね」
「そうだな。こうして近くで見ると良く大きさが分かる。ほれ、そこの木なんか俺らの十倍は軽くあるぞ」
「わわっ、本当ですね。この大きさに育つまでどのくらいかかるんでしょうか?」
「さあ? 知らね。知りたいなら学者さんにでも聞いたらどうだ」
俺がぶっきらぼうに返事をするとティルシアはしょぼくれてしまった。
「ごめんごめん冷た過ぎたな。さ、行こうぜ」
「嫌です。そんなに行きたいならラックさん一人で行けば良いじゃないですか」
ティルシアは口を膨らませプイと明後日の方向を向いてしまった。女心は難しいな。




