第六十六話「神様再び」
朝飯を食った俺達は、仕事をしにギルドへ行く事にした。最近休みっぱなしだったから貯金が少しずつ減っているのだ。
「じゃあ先に行きますから後で来てくださいね」
「ん、分かった」
一瞬プラートの時に誘拐されたのが頭をよぎったが、何度もされるなんてことがある訳ないと打ち消した。……本当はかなり心配だけど。
俺が遅れて行くのには理由がある。それは神器の存在だ。
神器というのは超貴重な物で、生きてるうちに見られる人間の方が少ないとまで言われている。だからそんなのを俺が持ってるとギルドの偉い人に知られたら何が起こるかわかったもんじゃない。
下手したらティルシアを人質にして神器と交換、なんて事も普通にあり得る。今のところ俺が持っている事を知っているのは俺に渡した張本人のプラート、俺、ティルシアの三人だけだ。
プラートは今獄中に居るし俺は喋る気が無いのでティルシアさえ言わなければ何も起こらない。ティルシアだってことの重大さは分かっているだろうからそうそう誰かに喋ったりはしない筈だ。
「だけどどうやって管理するのかが問題なんだよなあ……」
現在、神器は球の形をしているので一般人には唯のボールにしか見えないがこれを神器だと知っている奴に見つかるのは非常にマズい。
もし何らかの手を使って神器の所有権を移す方法があったとしたらそいつがこの神器で悪さをする可能性もあるのだ。
だからと言ってギルドに持っていって偶然ポロリと鞄から出たりしたらそれはそれで大問題となってしまう。
「どうしたもんか……」
ボール状の神器を手にとって考えていると声が聞こえた。
「おーい若者ー。こっちじゃー」
何処かで聞いたことのあるような声だ。そう、確か真っ黒な空間で──
「──ってあの時の神様か! どこだ? どこに居るんだよ」
辺りをキョロキョロと見回すが、あの空間で見た老人の姿はどこにも無い。確かに声は聞こえるんだが……?
「こっちじゃと言っておろうが! お主の手元じゃ!」
「手元?」
ふと手元に視線を落とすと先程から弄んでいるボール状の神器があった。まさかこれ……!?
「そう、これじゃ! これがワシの身体じゃよ!」
なんとびっくり仰天、あのケチな神様の正体はこの神器だった!
言われてみればプラートからこれを受け取った日の夜にあの変な空間に連れてかれたんだ。ちょっと考えれば分かりそうなもんなのに全く気付かなかったぞ。
「それでまた、なんでわざわざ出て来たんだ?」
「なーにお主がワシの扱いで悩んどるようじゃし、少し助言をな」
そういえば心を読めるんだったな。




