第五十七話「感謝状」
「なんだって? 感謝状を受け取って欲しい?」
「そうだ。昨日のプラートを捕まえられたのはお前の功績が大きいのが理由だそうだ」
ファルシアさんが訪ねてきた日の夜、ティルシアが寝た後に脳筋ハゲのマルスが家に来た。何の用事かと聞いてみると、驚いた事にギルドから感謝状を贈られるので是非貰ってくれとの事だ。
「別に俺は構わんがいつ式は行うんだ?」
「それなんだがな、明日の昼やるんだと」
「明日ぁ!?」
前日の深夜に伝えられて準備なんざ出来るか。一カ月とは言わないがせめて三日は欲しかった。
「急にそんな事言われてもな……第一服とか髪だって直ぐに準備出来るもんじゃ無いぞ」
「それなら大丈夫だ。服は現場で専門の人がやってくれる。後は髪型だが、それは自分でなんとかしてくれ」
「ハァ……お前は良いよな髪型に迷わなくて」
「喧嘩売ってんのかテメェ」
お、新発見。マルスはハゲをバカにされるとキレる様だ。結構長い間一緒に居たが知らなかったな。
「落ち着けよ、どうどう。それで明日の日程はどんな感じなんだ?」
「俺は馬か!? まあいいや、こんな事でキレてたら話が進まねえ。よく聞けよ。まず最初に、朝からギルドの使者が──」
俺は分からない所をときどき聞きながら日程を聞いた。それほどハードな訳じゃないし何とかなるだろう。
「──ってな感じだ。途中で大きなイレギュラーが起こらない限りは変わらない。分かったか?」
「ああ、バッチリだ。お前もこんな深夜までご苦労さんだったな。気を付けて帰れよ」
珍しくこの俺が心配をしてやる。するとマルスはそれを無下にしてきた。
「男の心配はいらん。お前んトコのティルシアちゃんみたいに可愛い子だったら大歓迎だがな」
「おいそりゃどういう事だ。あいつを狙ってるとかじゃねえよな? 返答次第じゃここで斬るぞ」
「わーっ! 軽い冗談だよ! 冗談だからその構えた剣を下ろせー!」
「ちっ……命拾いしたな」
俺はマルスに向けていた剣を下ろす。まあ元から本気で斬る気は無かったんだが。
「そんじゃ俺も疲れたし帰るわ。お前も早く寝て体を休めろよ。明日は忙しいから辛いぞ」
「男の心配はいらん」
先程の意趣返しに同じ言葉をそっくりそのまま言ってみる。マルスはどんな反応をするだろうか。
「ははは、こりゃ一本取られたな」
「へ?」
意外な反応だ。いつの間にか大人の対応をする様になったんだな。
「どうした? 何かあったのか?」
「いや特には無いんだが……」
「変な奴だな。じゃ、今度こそ本当に帰るぜ」
「おう、また明日な」
後ろを向きながら手を振るマルスは夜の街へと消えていった。俺も早く寝るとするか……。




