第五十二話「姉」
「返事しないから開けますよー」
「うわっ、ちょ待っ……!」
俺の願いもむなしくティルシアによって洗面所のドアが開けられ、半裸の男&破れた服の幼女という最悪の図式が晒された。
「話を聞いてくれ! 俺が顔を拭いてたらこの小っちゃい子が急に現れただけで俺は悪くないんだ!」
「そんな嘘くさい話を信じるバカがこの世のどこに──ってあれ? お姉ちゃんではないですか」
「おはよう妹ちゃん」
なんと驚いた事にこの幼女はティルシアの姉らしい。どこかで見た事ある顔だと思っていたらティルシアだったか。通りで喋り方も似てるはずだ。
「へえ、ティルシアのお姉さんですか。今後ともひとつよろしくお願いします。……っておかしいだろ!? ティルシア、この子は本当にお前のお姉さんなのか? 妹の間違いではなく?」
「もちろん正真正銘私のお姉さんですよ。なんなら私の母も連れてきましょうか?」
「いや、それは遠慮しておこう。なんとなくだが取り返しのつかないぐらいカオスになりそうだ」
ただでさえティルシアの姉だけでも驚きでおかしくなりそうなのに、そこにティルシアの母まで参戦したら予想もつかない。
「あ、そうそう名乗るのを忘れていました。私の名前はファルシアです。よろしく。あとさっき君は私の事を小っちゃい子とか言っていましたね? 私はまだ第二次性徴期が来ていないだけで決して発育が悪いわけじゃないんですよ!」
必死で無い胸を張っているが、どうしても身長が小学生並みだから年相応にしか見えない。つかティルシアがもう第二次性徴期を終えてる年齢なんだからそれより年上のファルシアさんが終わってない訳が無いんだが……。
「分かりましたからそんなに凄まないで下さい。それにしてもティルシアとファルシアさんは声が似ているんですね。目を閉じて同じ事を言われたら分からなくなりそうだ」
「んむ? そんなに似てますか?」
と、ティルシアが言う。ティルシア一族の伝統なんだろうか。
「おう、クローンか何かってくらい似てるな」
「そうですか。里にいた頃はあんまり意識してませんでしたけど、言われてみればそんな気もします」
やっぱり誰も指摘しない環境だと自分の事なのに気が付きにくいんだな。ティルシア達が特別なのかもしれないが。
「それはそれとして、ファルシアさんは何をしに来たんですか?」
「ああ、ただの暇つぶしですよ。可愛い妹の恋人がどんな人間なのかを確認に来ました」
「ちょっ、お姉ちゃん!? なんでそれを知ってるの!? 誰にもバレてないはずなのに!」
「わははー。お姉ちゃんに隠し事など出来はしないのだ!」
マジで何で知ってるんだろうこの人。ずっと監視してたとか言わないよな……?
と思ったら何か黒いヒモみたいなのが天井からぶら下がっていた。あれはコードか。……コード!?
「……ティルシア。あの天井の黒い物体が見えるか?」
「ええ、もちろん」
俺達はコードの繋がる先を目で追う。コードの先にあったのは──
「「監視カメラぁ!?」」
絶賛稼働中の監視カメラだった。




