第四十六話「宴会」
プラートが連れて行かれると、場の雰囲気が軽くなった。今までは楽しく談笑してはいたが、プラートがいつ暴れるか気が気でなかったのだろうか。
「おーいみんな集まってくれー。これからギルドに報告しに行くぞ」
「「へーい」」
マルスが討伐隊に集合をかけると、すぐに集まった。討伐隊のメンバーは怪我のせいか動きが鈍いものの全員残っていたようだ。
「俺も行った方が良いのか?」
一応聞いておこう。勝手に判断して後で怒られるのは避けたいしな。
「もちろんだ。今日の殊勲者はお前だぞ。なんてったってこの事件の首謀者を捕らえたんだからな」
「いやアレはたまたま運が良かっただけでだな……」
「ま、良いんじゃないですか。運も実力の内ですよ」
と、ティルシア。
そうなのかなぁ、どちらかと言えば運は実力には入らないとおもうんだが。
「とりあえず報告しに行こうぜ。酒も早く飲みたいし」
「お前は本当に酒が好きだな! ビールの海に溺れて死ね!」
やっぱりあの脳筋ハゲは酒の事しか考えてなかった。これだからアル中は……。
俺達がギルドに着き地下室にある本部に入ろうとした時、先に着いていた男に後ろから呼び掛けられた。
話を聞くとどうやらトリックスターズのボスが捕まったせいでこの事件は一応終わりを迎えたという事になり、そのおかげで本部を使う理由も無くなったらしい。
「あの結構キツい階段を登ったり下ったりしなくて良くなったのはありがたいな」
「そうだな。んじゃマルス達の報告が終わるまでその辺で休んでたらどうだ? かなり疲れてるだろ」
「そうさせてもらおう」
誰も居ないテーブルがあったのでそこの椅子に座る。何か座ったら眠くなってきたな……よし、寝よう。何かあったら起こしてくれるだろう──
眠ること数時間。周囲のうるささに目を覚ました俺が辺りを見回すと、ギルドで宴会が始まっていた。
「おお、ラック起きたのか。さ、こっち来て飲めよ」
そう言ってマルスが差し出して来たのはまだ蓋の開けられていないビール瓶だった。それも大きめの。
「ん、どうした飲まないのか? ……ああ! 蓋が空いてなかったな。すまんすまん」
マルスは瓶の蓋をプシュッという音と共に手早く開けると再度俺に差し出してきた。俺はそれを受け取るが、一つ足りないものがある。
「…………コップは?」
「え? 何でコップが要るんだ」
おい何か嫌な予感がしてきたぞ。一気とかさせられそうな予感だ。
「だって一気するんだろ? おーい! お前らーラックが瓶一本を一気するぞー!」
「やっぱりかあああああああ!」
マルスの言葉を聞いて遠くで呑んでいた奴らもゾロゾロと集まってくる。
そこのお前ら! 一気コールとかすんじゃねえ!
「ちょ、無理だって! 瓶一本は無理! 死ぬから!」
「「いっーき! いっーき!」」
「ほらみんな期待してるぞ。やっちまえよ」
そんな事言うならお前がやれよマルス! と言いたいがこの空気ではそれも出来ない。
「あーもう焦れってえ! おら飲め!」
「ぐもっ!?」
マルスが瓶の底を持ち上げビールを無理矢理飲ませてくる。喉に直接流れ込んでくるので吐き出そうにも吐き出せない。
「ぐほっ! ごほっ!」
「おおー。ラックも良くやるな」
全てを飲み終えた時、周囲からは感嘆の声が聞こえた。肺にも入ったようで気持ち悪い……。
「みんなラックの勇気ある行動に拍手しろー」
見ていた奴らが拍手を送ってくるがそんな事よりバケツを送るか、トイレに送るかして欲しい。
そんなこんなでどんちゃん騒ぎの宴会は真夜中まで続いた。